第二話 コックリさんたち
やばい。これはやばいやつ。あたしにはわかる。
「……さっきまで動いてた……よね」
学校の昼休み、なんか暇だなーってことで友達三人で何気なくコックリさんをやり始めたんだけど、ある質問した途端、急に十円玉が動かなくなったんだ。
「え、ええ。なんで? 誰かチカラ入れてるでしょ」
一緒にやってた毘伊奈と恣意美も、突然反応の無くなった十円玉に驚いているみたい。
もう一度質問してみようよと恣意美が言うので、反応が無くなった時と同じ質問をしてみる。
「コックリさんコックリさん。あなたは男ですか? それとも女ですか?」
十円玉に触れた指先に緊張が走った。けれどいっこうに十円玉は動こうとしない。
「……ねえ、思ったんだけどさ」毘伊奈がしばらくして口を開いた。
「もしかしてコックリさんって男でも女でもあるんじゃね?」
神様だから性別が無い、ならわかるけど、え? 男でも女でもある??
きょとんとした顔のあたしと恣意美を見て、毘伊奈が続けた。
「だからぁ、コックリさんって男女ペアっていうかさ……」
毘伊奈が言うには、コックリさんて名前がそもそも”コックINさん”に聞こえるからヤリマンの霊だ。そしてヤリマンだから当然、となりにはオトコがいるのだろう。ということらしい。
どうやったらこんなぶっ飛んだ理論が展開できるのだろう。
嬉々として語る毘伊奈の向かいで、何言ってんだこいつってな顔で話すさまを見守っていると、普段はおとなしい恣意美が、
「まって……もしかしたら”コックRINGさん”かも」とつぶやく。
コックRING着けてるってヤリチンなの? ヤリマンとヤリチンのペアが降霊してるのやばくない? と言ってゲラゲラにやにや笑う二人。やばいのはあんたたちだよ。あたしにはわかる。
「あのさぁ、真面目にやらないとやばいって。ちゃんとコックリさんたちにあやまって……」
二人を注意しようと言っていて気が付いた。……”たち”!?
え、ちょ、やばい。やばいて。コックリさんタチって……。てことは、コックリさんウケもいるのかな。
「ちょっと映子ぉ? 何ニヤニヤしてるの?」
毘伊奈が意地悪そうに言った。
「いや、コックリさんってタチなのかな、ウケなのかな、と思って」
なぜか恣意美と目を合わせ、なにか言いたげな表情をうかべた毘伊奈がため息一つ言った。
「じゃあヤリマンなのかヤリチンなのか、タチなのかウケなのかはっきりさせようじゃないの」
三人は十円玉に載せた指先に意識を集中させる。
「コックリさんコックリさん。ヤリマンですかヤリチンですか、はたまたタチですかウケですか」
するとさっきまでピクリとも動かなくなった十円玉がゆっくりと動き出した。
「え、うそ! すげー! 動いたよ!」
興奮して叫ぶ毘伊奈。あわあわと声にならない声を出している恣意美。
「最初の文字は”せ ”!」
興奮したあたしたちの予想とは裏腹に出来上がった文字。
「セ・ク・ハ・ラ」だった。




