エピローグ
「我らバラ騎士団の栄誉を称えて乾杯!」
酒場ではアリエッタを初めとしたバラ騎士団がどんちゃん騒ぎをしていた。
一応最後にとどめを刺したということで、ドラゴン退治の一員という扱いになったのだ。おかげで討伐料がちょっと減ってしまった。
「いやー、騎士団とやらもやるじゃないか」
ノエリアさんがアリエッタに絡みに行った。顔が赤い。すでに酔っているようだ。
ノエリアさんは「今日はあたしのおごりだ!!」と叫んでいたので酒場は他の冒険者もどんちゃん騒ぎに参加していた。
こんなところでドラゴンを倒したなんて話を聞くのが珍しいのかつまみ代わりに武勇伝を語っている。アリエッタとノエリアさんの話し方がうまいのか場は盛り上がっていた。
そんな中、俺とネルは端っこの方でちびちびと食事していた。
「みなさん楽しそうですね」
「そりゃドラゴンを倒したんだ。興奮もするだろうよ」
俺もちょっと興奮している。エロい意味じゃなくてね。
けれどネルは通常通りだった。感情に乏しい顔だ。
……こいつも嬉しいって思ってたりしないのかな。ちょっとだけ気になった。
「先輩」
「なんだ?」
「先輩もアリエッタさんたちに混ざってもいいんですよ?」
「ん? いやここにいるよ」
「でも……私といたのでは退屈じゃないですか?」
ネルは少しうつむき加減に言った。
なにを今更と思った。
「全然。むしろ俺はネルが俺といっしょにいるのが退屈なんじゃないかって思ったよ」
「それはありません、絶対に」
「お、おう」
すごく真剣な調子で言われて戸惑ってしまった。
なんとなくネルの顔を見るのに抵抗を感じてしまう。俺は騒いでいる冒険者たちに目を向けた。
「冒険者って楽しいよな」
「はい」
相槌を求めていたわけじゃないけど、ネルは頷いてくれた。
だから今度は後輩プリーストに向けての言葉だった。
「お前といっしょに冒険者になってよかったよ」
「はうっ」
変な声を上げる後輩だった。顔を向ければ真っ赤な顔。あらかわいい。
「やってるかいお二人さん」
「二人には回復してもらっていたわね。騎士団を代表してこの私が礼を言うわ」
ノエリアさんとアリエッタが近づいてきた。
彼女たちは俺とネルを見ると動きを止めた。顔を見合わせてネルへと近寄った。
「ち、違いますっ!」
なにかを言われたらしいネルが否定の言葉を口にする。小声だったので俺には聞こえなかった。ガールズトークかな。
ネルは真っ赤な顔のまま逃げるノエリアさんとアリエッタを追いかけまわした。
酒場は笑いに包まれる。二人を追いかけながらもネルは楽しそうだった。
そんな後輩を眺めていると先輩として嬉しくなるもんだ。いい酒の肴だ。
これからも後輩プリーストを見守っててやるかな。それが俺、先輩プリーストの使命でもあり、俺自身の楽しみでもあるのだから。
これでこのお話は完結となります。
軽い調子でキャラを動かせるようにと始めてみました。一話当たりの文字数は1000文字くらいのつもりで書いてました。これくらいなら書きやすいなぁってのが感想です。おもしろいとは言ってない。
初投稿である「根暗男が異世界転生してTS美少女になったら幸せになれますか?」が想定ではけっこうな長編になる予定だったので軽く終わらせられるものを書きたくなった。それがこの話を書いたきっかけでもあります。
あっちは一話当たり3000文字くらいで進めてますけど、どのくらいがいいんでしょうね? 一話の文字数ってけっこう考えます。
ではまたお会いできる機会がありますように。ありがとうございました。