高き太陽の下に
豊かな西の森と平原との端境にある一帯は騒然としていた。
突風が木々をゆらし、小山ほどもある魔が無数の触手をふりまわすのに追われて、鳥達は茂みから飛び立ち、木々の間でシカの群れやイノシシが逃げ惑う。
緑深い森のどこかにバーシクの魔導士たちも潜んでいるのだろう。
森の中も危険だが、隠れようのない平原も危険。
「目をつぶっていろ」
ガルナは決断すると、ネフィアを胸の中に抱え込み、森の奥にとびこんだ。
バキバキと枝を折りながら、右へ左へと木々の間をすりぬけ何度も方向をかえながら低空飛行する。
数頭の鹿の群れが茂みを移動する後ろに降り立ち気配をなじませてから、逆方向へと翼をひろげ、下草ぎりぎりの高さを滑るように飛ぶ。
追っ手がないのを確認してから端境帯にある湿原の、藪の中や背の高い草をかきわけるようにして、最後は滑空でハンノキに上空を守られた藪に飛び込んだ。
地表は枯れ草が覆う水の上の場所と土の場所がある。
ガルナは土の部分を選んで周囲の雑草を抜いたり倒したりし、直径数歩分の場所を確保した。
「さがってろ」
とネフィアを遠ざけると、人には発語できない呪文を唱えた。
地面に燐光を放つものが浮かび上がり、波紋様のものが生き物のようにうごめきながら呪法結界をつくる。
魔物の結界術にネフィアが目を丸くしていると、手招きで呼ばれた。
「次は……、その服を脱いでもらおうかな」
翼の魔物が、青い瞳を企みに輝かせながら手を突き出してきた。
「なっ、何をっ!!」
「ほら、早くっ」
「ええっ、そんなっ」
あせるネフィアに向かってガルナが有無を言わせぬ勢いでドレスを脱がせにかかった。
ガルナは胸に抱く姫をかばいながら、森の上空を旋回し戦況を確認した。
西北の街道に魔物が集まりつつあった。ざっと30ほどか。
ダグレカム王国に潜入しているバーシクの魔物軍は、まだまだいるらしい。
もしかすると、バーシクに属する魔物をすべて投入してきたのかもしれない。
街道上には、魔物たちの進路を阻む黒い巨獣の姿がある。
あたかも雛鳥の群れを食い散らかすかのように屠る、ソードパンサー・キザキだ。
バーシクの契約魔たちに、ガルナやキザキレベルの魔は少ない。
力量の差は圧倒的だ。あるものは牙で首をもがれ、あるものは鋭い爪と膂力で身体を両断される。バーシクのものであっても契約中は不死。首だけになっても死にはしない。激痛にのたうちまわり、しばらくすると蛹状の仮死状態の塊となって場合によっては永遠に、再生の時を待つことになる。
敵地でそんな状態になった魔物たちの行く末に、わずかばかり同情する。
ウィカはといえば、かすかに気配がするものの姿は見えない。
結界術で姿を隠し、術をもってキザキの戦いを援護しているのだろう。
いい戦いぶりではあるが、集結しつつあるバーシクの軍にキザキだけでは限界がある。
「さぁて、どうするかな」
次の打ち手を吟味する翼の魔に、空の魔物3体が襲ってきた。
ひきつけて2体を近距離から雷撃、逃れる一体を背後から高速で追い、鉤爪でその翼を掴むと急旋回で振り回して地上に叩きつけた。
街道を進む魔物たちや兵士たちが、姫を抱くガルナに気がついて矛先を変えてくる。森の奥からは木々を倒しながら触手の魔が、のっそりとこちらに向かっているのが見える。
開けた場所で低空飛行しつつ、魔が固まっているあたりで雷撃、半分近くを行動不能にした。
森の中に潜むバーシクの魔導士たちの怒号が飛んだ。
「そいつを追うな!
奴の腕の中に巫姫はいない」
「さがせ! どこかに姫がひそんでいるはずだ」
「もう生存は問わんっ! 見つけ次第殺せっ」
−−ばれたようだな。
それにやつら、巫姫誘拐から暗殺に切り替えたのか)
ガルナは翼で街道の魔物たちを蹴散らしながら、今もまた一匹魔物を引き裂いたキザキの脇に降り立った。
ウィカが結界の中から姿を表した。
「ネフィアは?」
「安全なところに隠した」
腕の中の、草の塊を詰め込んだドレスを見せた。
「いい考えね」
「状況は?」
「カシュカの報告によると、魔物部隊だけでなくけっこうな数のバーシク軍が入り込んでいるわ。
魔物部隊、騎馬部隊、歩兵部隊。確認できただけでおよそ3千。
そのすべてがこちらにむかっている」
「まずいな。
やつら、巫姫誘拐から暗殺に切り替えたみたいなんだ」
「この機に、バーシクが勝負に出たということね。
国家守護契約の秘密を得られないと判断して、契約をさせない方向に転換したのね。
状況が長引けば全面戦争になる。そうなったら何年も国内が荒れることになる。なんとか抑えないと」
「3千か。もっといるだろうな。
それに森の中に分散しているのがやっかいだ」
「近くの地域で備えていた中隊がここに向かっているわ。
到着するまでネフィアを守り抜きましょう」
白髪の魔導師は、飛んできた火矢を術で撃ち落として言った。
−−婚礼装束でよかった。
ネフィアは心の底からそう思っていた。
ドレスの下に身につけていたモスリンのキャミソールとペチコートは婚礼装束だけあって繊細な刺繍が施されて、それなりに可愛い。
けれど。
可愛いけれど下着。
脱ぐのをかなり渋ったのだが、ガルナに、
「ドレスを脱いだら裸なわけ?」
と不思議そうに言われて、押しきれなくなった。
王国の存亡と下着姿を、秤にかけられる場合じゃないことぐらい理解できた。
−−でもぉぉぉぉっっ!!!
−−キャミソールは薄手で肩もほとんどむき出し。そんな姿をガルナに見られるなんてっ。
回想の中の、ドレスを偽装するガルナに、その辺の小枝を折り取って投げつけたり羞恥に身をよじったり、ネフィアは小暴れする。
それが乙女心っていうものなのぉぉぉ。
とひとしきり。
そんな時、何かが聞こえて我に返った。
聞き覚えのある幼獣の鳴き声だ。
あたりを窺えば、ガルナの作戦がうまくいっている様子で戦いの気配は遠く、森の生き物たちもこの騒動に息を潜めているようす。
危険な感じはしない。
−−ちょっとだけ、危なそうだったらすぐに引き返すから。
自分に言い訳をしながら結界を出て、草をできるだけ揺らさないよう鳴き声のするほうに移動した。
十数歩ほど進んだところで水面が見え、覗き込むとアーマドッグの子どもが水草の間でもがいていた。
「マルっ!」
周囲を見回し、水面を覗き込む。
くるぶし程度と思われる浅瀬だった。
水は澄みわたり、小魚の影は見えるものの他になんの気配もない。
マルがネフィアに気がついてジタバタしたが、水草の根にでも後ろ足をとられているのかどうにもならない。
「マル、今いくから落ち着いて」
声をかけながら一歩、二歩と水に足を踏み入れ、
「もう大丈夫」
と、仔魔の体の下に手を差し入れた時、水の中で手首を掴まれた。
悲鳴をあげる間も無くマルごと水面が持ち上がり、リープスネークの青白い上半身が現れた。
掴まれた手首が強く引かれ、白眼のない黄金の瞳がネフィアにせまった。
うごめく薄紅色の髪は、近くで見ると先が枝分かれして、水中であれば花のように開くのかも、とこんな時なのに思う。
「あれだけ毒をうちこんだのに、ガルナは元気。
彼は契約中なのね」
ぬるりと蛇の下半身をくねらせて、ネフィアにまきついた。
薄手の下着越しに、冷ややかな感触が自分を締め上げるのを感じた。
逃げようがなかった。
「あなたがガルナの《心臓を持つ者》でしょう?」
薄い舌を唇からするりと出して、跳毒蛇が微笑んだ。
強大な魔を呼び寄せ、国の守護をかけた契約ができるのは聖ダグレカム国のみ。《エシュリン叙事詩》に描かれている通り、魔王ウレミカムが、国家守護の契約の秘儀をエシュリンに伝えたことによるからだ。
王国はこの秘儀を千年間守り続けて、国家的危機を退けてきた。
秘儀を狙う国は多く、今までに幾度も争いがあった。史上最も大きな戦いが、90年前、守護魔ミ・エスメラルデの時代。バーシク軍との戦いの末、緑の魔は蛹となって深い眠りについた。
あの戦いがまた繰り返されるのか。
−−ミ・エスメラルデ、あなたはこの戦いはどういう結末を迎えると思う?
「近隣で警備にあたっていた魔導士と30人編成の援軍がすでにバーシク軍と交戦中です」
思いをはせるウィカに、瞬きとともにカシュカが援軍を知らせた。
「それと、バーシクの空戦部隊が出てきました」
示される空には天頂の太陽が輝き、魔の力を借りて滑空帆を広げた兵士たち一群が逆光に映し出されていた。
「最悪ね」
報告を聞きながら、ウィカはフラッシュフライの燐光を放つ薄い翅が震えているのに気づいた。
昨夕からずっと、瞬時にあちらこちらへ移動し情報を集め、伝達する激務に疲労が溜まっているのだろう。
「ありがとう、少し安全なところで休んで」
疲労といえば、とウィカが見上げる上空ではガルナが敵兵を叩き落とし、あるいは上下でキザキと挟み撃ちにする、という戦いをしていた。
ガルナが雷撃を使わないのは敵味方入り乱れているのもあるが、体力的な問題も大きいのかもしれない。
キザキの動きに精彩を欠くのは、足場が悪いためだけなのか?
ガルナもキザキも高い能力を持つ魔ではあるが、圧倒的な数で押してくるバーシクに、少しずつ湿原の方へと追い込まれていた。
ガルナは広い湖面上へと進んで、追っ手を滑空兵だけに絞る作戦に出た。
追ってくるのは20機あまり。
空の高みには、薄い皮膜を広げたクラゲにも大きな花にも似た魔。滑空兵たちの動きを風の魔力で操っているのだろう。
低く滑空するすぐ下の水面がうねり、一瞬でうねりは湿原の広い範囲に及んだ。
−−なんだ?
見れば、うねりの中心にリープスネーク・キリカの姿があった。
キリカはガルナの姿を認めると、薄紅の髪を水に沈めた。
触手めいた髪が花のように広がり、周囲からしなる水柱が幾十、幾百も立った。
「ガルナっ!」
声の元をたどれば、対岸の茂みの中で、マルを抱いたネフィアの姿があった。
ここはネフィアを隠した場所から離れているはず。なぜ?
キリカがネフィアの方へゆっくりと振り向いて、手を差し伸べる
「巫姫に手を出すなっ!
お前の目的は俺だろう! 」
水の中にいる魔に雷撃は効果的だが、雷撃を打てば、ネフィアにも余波がいく。
ガルナは速度をあげてネフィアの元に稲妻のように飛ぶ。
その先の水面下にネフィナに急速に接近するバーシクの水魔の影が見えた。
背後には弓銃を構えた滑空帆の兵士たち。
ガルナは歯噛みする。
迷っている時間はない。
意を決した時、
「ガルナっ、西っ!」
少し離れたところで、キザキが吠えた。
見上げれば、西の空に黒い闇の塊が急速に広がっていた。
ダークドラゴンが追いついてきた!?
背後では、滑空兵の弓銃から矢が一斉に放たれた。
矢は風の魔の力で、加速してネフィアにせまる。
それと同時に、バーシクの水魔がネフィアに向かって鋸状の鎌腕を振りかざしながら水中から飛び出してきた。
「ネフィアっ!」
さらにキリカの水の鞭が、ネフィアに向かって伸びる。
バーシクの水魔が水の鞭によって水面下に引きずり込まれるのと、ガルナがネフィアを抱きとるのとほぼ同時だった。
背に矢が次々と突き刺さった。
−−それにしてもキリカはなぜ?
疑問に思いながらも、数本の矢が刺さったはずみでバランスを崩し、それでもできるだけキザキの近くの岸辺を選んで着地する。
「ネフィア、無事か?」
聞きたいことは山ほどあるが、まずは無事を問う。
「ガルナこそ、大丈夫なのっ!? こんなにたくさん、深く矢が!」
「抜いてくれ」
背後に回ったネフィアが涙声になる。
「できない。ひっぱっても抜けない」
鏃には返しがあり、ガルナが試しに後ろ手に引いても抜けなかった。
一本は肩甲骨の間を、胸側まで突き抜けている。
契約で心臓を預けていなければ、致命傷だ。
最初は衝撃だけだったが、徐々に痺れるような激痛が襲ってきた。
状況は芳しくない、空を見上げれば、矢を番え直した滑空兵が低空で侵入したきた。
身構えた一瞬、キリカの水の鞭が滑空兵たちを叩き落とし、ガルナたちの元に向かってくる。
−−キリカもハートホルダーであるネフィア狙いか。
ガルナは背中の時間を追うごとに増す痛みをこらえながら、水面をすべるように近寄ってくるキリカを睨みつけた。
−−水中に一撃いれるか?
全身の羽毛を逆立てて体内に雷のエネルギーを高める。
「待って、キリカは…」
ネフィアが後ろから翼にしがみついてきた。
−−だめだ、雷撃は打てない。
「離れてろっ」
近寄ってきたところを鉤爪でひっかけて、水面から引きずり出すか?
翼を動かしかけると、全身を走る激痛に膝から力が抜けた。
「ガルナっ!」
巫姫の悲鳴が、痛みに遠のきかけたガルナの意識を明瞭にする。
せめてネフィアを逃がさないと。
「ネフィア、俺の心臓を置いてキザキのところに行け!」
「違うの、キリカはっ、キリカはっ…」
「姫はわたしのハートホルダー」
つい、と間合いに入ったキリカが、ネフィアの涙まじりの言葉を引きとる。
「なんだって?」
すぐ向こうの藪陰にキザキがウィカを担いでくるのを確かめながら。キリカの言葉を待つ。
「姫に持ちかけられた。
どうせガルナの契約終了までは手が出せない。
だから契約することにしたの」
跳毒蛇は、ガルナの背後でうなづくネフィアに黄金の目を細めた。
そこにようやく到着したキザキとウィカが到着した。
「どうなっているのかしら?
ガルナはひどいケガね」
白髪の魔導師がキザキの背から下りて、膝をつくガルナの元にかがみこんだ。
跳毒蛇は威嚇するかのように薄紅の触手を伸ばすのを、ネフィアは首をふっておさえ、
「ウィカさん。わたし、さっきキリカと契約したんです」
ガルナの背傷を抑えながらウィカにも説明する。
出血がひどく、おさえた手の下から血が噴き出してくる。
ガルナは痛みと失血に眉根をひそめた。
「そうだったの」
ウィカはネフィアから引き取りガルナの手当てをはじめた。
「返しがあるわね。傷口を術で広げながら矢を抜きましょう。
それでもかなり痛いと思うから、歯を食いしばって」
魔導師の詠唱とともに、キザキがガルナの背から次々と矢を引き抜いていく。
飛び散る血と羽毛。
ガルナの引き締まった唇から、痛みをこらえる唸りが漏れた。
興奮したマルがウロウロするのを、邪魔にならないよう抱き上げ、涙あふれる目を閉じまいと努力しながら、ネフィアは朋魔の治療を見守っていた。
「治癒術をかけたけど、回復力を促進させるものだから、あまり無理しないで。
いくら契約中でも大きなダメージを負えば、最悪、生でも死でもない状態になってしまうわ。
…ミ・エスメラルデのように」
ガルナも、ネフィアも、キザキも、一瞬その意味を知って言葉につまる。
やがて、手当てを終えたウィカはキリカに向き直った。
「挨拶が遅くなってごめんなさい。
わたしは魔導師ウィカ、連れは朋魔のキザキ。よろしくね」
リープスネークは金色の瞳で二人をねめまわし、鼻先をつんとあげ、
「これで仲間が揃った、というわけかしら」
金色の瞳で上空の黒い闇を示した。
黒い翼手を広げたダークドラゴンが、雄叫びととも バーシクの魔を噛み砕き、滑空兵たちを蹴散らしている。
空の敵を叩き落としたダークドラゴンは、ネフィアたちの上空で一度ゆっくりと旋回し、森の中の上空へと移動した。。
体をまとう闇の霧が広がる。
闇は風を巻き込んで渦巻き、下の部分がロート状に森へと降りていった。
木々は倒され、間に潜んでいたバーシクの兵や魔物が次々に渦に吸い上げられて、上空の闇の中へと消えていく。 すさまじい破壊力だった。
「彼も今はバーシクと戦うつもりのようよ」
キリカは言い残して水の中へと沈んでいった。
自分は守りを固めるつもりなのだ。
「……意外だな。キリカは人間嫌いだと思っていた」
リープスネークの姿が見えなくなると、警戒していたガルナが息をつき、痛みに顔をしかめる。
「契約による魔力強化なんてバカにしてたからな」
「ウィカ! 援軍の到着です」
そこにカシュカが王国第二師団到着の知らせを持って飛び込んできた。
「水辺沿いに移動して、第二師団に合流しましょう。
キザキはガルナを背負って」
「はい。
おい、立てるか?」
ソードパンサーが巨体をかがめて手を差し伸べるのを、
「……冗談いうな」
満身創痍の魔が、手を上げて止める。
「奴だけにいい格好をさせるわけにはいかないんだ。
奴より強いことを示して守護魔契約にこぎつけないと、ネフィアが巫姫にならなきゃいけなくなる」
翼の魔は、痛みを確かめるようにゆっくりと立ち上がった。
「ガルナ」
真摯な面持ちのネフィアが、ガルナの前に立つ。
「わたしのためなら無理しないで。
もう平気だから。あのダークドラゴンが相手でも巫姫になるから」
「大丈夫、傷はふさがった。痛みもだいぶおさまってきたし」
ゆっくりと翼を動かして確かめる。
「これくらいならいける」
言う間に、羽毛がパリパリと逆立ち、容姿も猛獣とも猛禽ともつかないものに変化する。
「俺がバーシクの軍を一掃する。
この程度の戦い、本気になったらすぐに片付く
なにしろ俺は…
ガルナはひと呼吸おいてネフィアを覗き込んだ。
契約の窓で覗き込んだ時と同じ、青い瞳がそこにあった。
−−ガルナは契約の窓にたどり着いた魔。
−−そして今はわたしの朋魔。
ポシェットの上からガルナの《心臓》に手を置くと、感じるはずのない力強い鼓動を感じた。
ネフィアはガルナと小さくうなづき合い、
「次世代の覇者だから」
息を合わせて言葉を重ねた。
「だろ。
だからこれくらい、なんでもないっ!!」
自分の声に、顔しかめる魔は、空元気なのは目にもあきらか。
だがそれを凌駕する気迫が全身から放たれている。
誰にも若き翼の魔を引き止めることはできなかった。
「ってことでっ! 」
痛みを忘れたかのように、ライトニングラプターは揚々と翼を広げて飛び出していった。
その後。
ダグレカム西の第二師団総勢一万の兵の見事な隊列配置による追い込み。
ダークドラゴンによる森に潜む兵の掃討。
巫姫ネフィアに近づくものを、蟻レベルの魔たりとも逃さず水に引きずり込むキリカと、片端から引きちぎっては投げるキザキ。
そして。
若きライトニングラプターの、天地をつなぐかのような落雷の嵐によるバーシク軍の全滅は、その後長いこと語り継がれることとなった。
メリークリスマス! クリスマスイブですね。
翌日のクリスマス当日はツリーの下のプレゼントを開けるのが、キリスト教圏では一般的な過ごし方。
それに習って、明朝にわたしからあなたへのクリスマスプレゼント。
「サンタガールのクリスマス」という短編を25日7時に更新します。
よかったらお受け取りください♪




