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人魚に恋したモンキー  作者: shinpanzees
4/21

秘密

 「待たせたな。広報の話が長くて。」

 めんどくさそうな仕草をしたツカサが近づいてくる。


 「いや俺も今来たところ。久しぶりだな、会うのは1年ぶりか。」

 心友との再会に満遍の笑みのシンジ。


 「こちらも色々忙しいんでね。主役が居なくなったお陰で自動繰上げ主役。CMやら撮影やら本業以外にやる事多くて。なんか腑に落ちねえ。」


 「凄いな、スーパースターは。」


 「ほんとはこれお前の仕事な。お前が辞めなけりゃマスコミはお前の方に殺到して、俺はもっと集中して練習に打ち込めてたのに。」

 そう言ってツカサは不機嫌そうな顔をして見せた。


 「いやいや、入団1年目で新人賞からMVP、毎年各賞総ナメ、今年からは海外移籍だろ。来年から始まるオリンピック予選会メンバーも確定らしいし。そりゃ世間は放っておかないさ。ファンクラブ発足時は俺が第1号な。」


 「なんか上から目線で気にいらねえ。」

 今度は本当に不機嫌な顔をしていた。



 2人はホテルの近くにある居酒屋に場所を移し、先程店員が持ってきた3杯目の生ビールに手をかけた。


 「で、そろそろ言う気になったかバレーを辞めた理由。」

 ツカサは決勝戦以来、繰り返しこの質問をしていた。


 「辞めた奴の話に良い話なんてあるかよ。それに国体からもう何年経ってると思う。5年だぞ5年。そんな事より良い酒が呑める話しろよ。」


 「お前はそうやっていつも話を誤魔化すだろ。そろそろ本当の理由教えろよ。永遠に言い続けてやるからな。」


 「・・・。まあそれもそうだな、そろそろ言ってもいい頃かもな。」


 「言えよ、そんなに秘密にすることかよ。全部話せばスッキリするぜ。」


 「俺の足がな・・・。もうジャンプ出来ないんだ。」

シンジが少し言い辛らそうに話そうとした。


 「痛めたのか。そんなに酷かったのか。」


 「そうなんだ。たった垂直2メートル。故障持ちが通用する程、プロの世界は甘くないだろ。」


 「なるほどな2メートルか、そら酷いわ。ん、2メートル。おい、2メートルって世界最高峰の奴らの数値じゃないか。どこが傷めてんだよ、また騙しかよ。そんなに引っ張るネタかよ。」

 そう言って生ビールを一気に流し込んだ。


 「はいはい、冗談冗談。もう俺の話は終了。ところでツカサ、プライベートはどうなんだよ。彼女は出来たのか。それとも恋人はボールちゃんですか。」

 小指を立てながら真っ赤な顔をしたシンジが話し出した。


 「もう酔っ払ってるのかシンジ。早過ぎるだろ、まだ2杯しか呑んでないんだろ。」


 「うるさい。バレーでは負けないけど、アルコールには勝てる気がしないんだよ。それより彼女出来たのかって聞いてんの。」


 「お、おう。一応な。」

 ツカサは笑いながら頬を紅くさせた。

 

「まじかよ。バレーしか興味無いツカサに遂に彼女か。」

 シンジは店内に響き渡る位の大きな声を出した。


 「うるせぇ。お前はいつも茶化すから嫌なんだよ。」


 「名前は。

  どんな子。

  写真見せろ。

  何処で知り合ったんだ。

  年齢は。

  血液型は。

  何座。

  何処に住んでるんだ。

  どうやって知り合った。

  どっちから告った。」


 「どんなけ質問責めだよ。」


 「早く教えろよ・・・。」


 「おいシンジ、欠伸してんじゃねぇよ、グラスが空いてるぞ。同じでいいか。すいません、おかわり2つ。」


 「はやくおしえろよ・・・。まだきいて・・・ない・・・・・・。」


 「おかわりきたぞ。今日はとことん呑むぞ。」


 「おう、のむぞ・・・。で、なんの・・・はなしでしだっけ・・・ヒック。」


 結局、シンジは4杯目を吞み干すことなく2人は居酒屋を出てホテルに向かった。


 「まったくお前と呑むといつもこうだよ。」

 そう言って千鳥足のシンジの肩をさっきよりもしっかり掴んだ。


 「ちゃんと言いたかったんだぜミナミの事。お前なら理解してくれるよな。」

 ツカサの声は酔っぱらったシンジには届いてなかった。

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