心友
一進一退。
リベロがボールに喰らいつき必死にボールを繋ぐ。助走距離を充分に保ちボールを待つ。セッターからトスが上がると、迷いなくボールめがけて助走を開始する。最高到達点に達すると時間が止まる。優しく撫でるようにボールを捉えた瞬間、相手コートに突き刺さった。
この瞬間、高校国体3連覇、春夏合わせて9連覇が決まった。 歓喜の輪から抜け出し、シンジは相手チームに近づきエースナンバー「1」に得意げに言った。
「通算成績9勝0敗。練習試合入れると・・・。」
「はいはい。完全燃焼、悔いは御座いません。やっぱ強えなお前のチーム。」
「俺が凄いの。」
「はいはいはい、敵いません。」
チームメイトが高校最後の大会に敗れて泣き崩れる中、笑って答えたのがツカサ。
「どのチームに行くか決まってんだったら早く教えろよ。俺もトップリーグから誘いが来てる。お前が行くとこ以外ならどこでもいいって監督には言ってある。ステージを変えて、今度こそぶっ潰してやる。」
「もう決めてるよ。」
「どこだよ。勿体ぶらず早く教えろよ。」
ツカサが少しムッとした表情をすると、
「そう焦んな。ヒーローインタビューでお披露目よ。」
シンジはウインクをしてチームの輪に戻って行った。
「勿体ぶりやがって。」
ツカサは試合に負けた事よりもシンジの態度にイラついた。
テレビ局3年目アナウンサーが、ヒーローインタビュー開始を告げる。
「東京体育館の皆様お待たせしました。今大会の、いや今や日本バレーボール界のニューヒーローに来て頂きました。国体優勝おめでとうございます。今の感想をお聞かせください。」
「ありがとうございます、最高です。」
「国体3連覇、高校1年生から春夏国体と負けなしの9冠。最後のスパイクを決めた瞬間如何でしたか。」
「これが最後のスパイクになるのかなって少し寂しくて、もっとラリーを続けていたい気持ちと絶対決めてやるって気持ちが50:50でしたね。最後決めれて良かったです。」
「相手エースのツカサ選手も100年に1人の逸材と言われ、ライバル同士の対決でしたが、3年間1度も譲る事なく勝ちきりましたね。」
「僕とツカサが大きくマスコミに取り上げられてますが、お互いほんといいチームメイトに巡り会えていると思います。彼らがいなかったらここまでの結果は残せていません。」
「2人は地元も同じ大親友とお聞きしましたが、やはり意識しましたか。」
「意識しまくりです。ツカサに負けたくない気持ちだけで高校生活死ぬ気で頑張りましたから。」
「ファンは2人の対決を今度はトップリーグで見られると今から期待しています。次のステージは決めているとお聞きしましたがどのチームに決めたんですか。サプライズがあるとお聞きしてますので、もしかしたらツカサ選手と同じチームを選んだのでは、もしくは海外に挑戦するのでは。とファンの妄想が膨れ上がっていますが如何ですか。」
「はい、もう決めてます。」
そう言って一呼吸した。
「今日の試合をもちまして引退します。第2の人生応援宜しくお願いします。」