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人魚に恋したモンキー  作者: shinpanzees
11/21

協力

シンジは意を決めて赤い車へと歩み寄り、マンションを見上げていた運転手へ声をかけた。


「ツカサの彼女さんですか。」


「どちら様で。」

女性は驚いた様子で、シンジを見返し車の窓を少し開けた。とても美しい瞳が印象的だったが、その瞳にはどこか孤独が宿っていた。


「友人を探してこの街に来ています。失礼を承知でお聞きしますが、もしかしたらツカサの彼女さんではないでしょうか。私はシンジと申します。」


「ふふっ、以外と遅かったわね。」

彼女が発した言葉が予想していた返答と違い、驚いてシンジは言葉を詰まらせてしまった。


「あぁ、ごめんなさい変な事言って。驚かせてしまったかしら。そろそろ尋人が来る頃じゃないのかなって思ってたの。」

彼女の言葉に驚きながらも、シンジは言葉を続けた。


「と、言いますと。」


「ここではなんですし、場所を変えてお話しませんか。」


「是非お願いします。」


「良かったら、こちらの車に乗り換えて貰えませんか。私、足が不自由なもので。」


「問題ありません。では、車をパーキングに停めてきます。」



車をパーキングに停車させ、彼女の車の助手席に乗り込んだ。5分程車を走らせるとショッピングモールが見えてきた。大きな駐車場が完備されており、障害者用スペースも充分空いている。2人は1FのCafeに入る事にした。


「車椅子押しましょうか。」

シンジが声を掛けると女性は「大丈夫です」と手慣れた操作で坂道を上がって行く。車椅子には詳しく無いが最新型のようだ。車のキー操作で運転席が動き出し、一瞬で車椅子に早変わりした。まるで近未来の1人用4輪車のようだった。店内は閑散としており、車椅子でも何も問題ないようだ。店員からメニューを渡されてコーヒーを2つ頼んだ。



「申し遅れました。私はツカサとお付き合いさせてもらってますミナミと申します。」

丁寧に頭を下げて挨拶を済ませると、ミナミはツカサの事について話出した。


「先日、警察の方から連絡がありました。ツカサの行方を探していると。そして色々と聞かれました。最近、お互い多忙で連絡を取れて無かったので、私も動揺してしまい警察の方に協力出来ればと可能な限りお話をさせて貰いました。でも、何度も同じ質問を繰り返したりすものだから、少し可笑しいなと思ったんです。担当の刑事さんから、ツカサの知人から搜索願いが出てると聞いて、もしかしたら私が疑われてるんじゃ無いかと思ったの。でも思い当たる節が無くて。何故私が疑われなきゃならないのか考えたんです。でも答えは出なかった。また誰か私を訪ねてくるだろうと思っていたの。」


「なるほど。それであの発言に繋がった訳ですね。」

シンジはミナミの言葉を思い出した。


「はい。シンジさんの事はよくツカサから聞いてました。写真を見た事がなかったので、初見では分からなくて。でも、よく私がツカサの彼女って解りましたね。」


「唯の直感です。自分の細胞が声をっかけろって。タチの悪い軟派と思われなくてよかった。」


「ちょっと思いましたよ。」

2人の笑い声が静まりかえった店内に響いた。


「失礼、久々に笑ったんで声が大きかった。」


「私もです。最近笑ってなかったからつい。」


「ところでツカサと最後に連絡を取ったのはいつ頃ですか。」


「会ったのは半年位前かしら。ツカサの仕事が忙しくてなかなか会えないので最近は電話やメールでやり取りしてました。まさか行方不明になっているなんて。」


「まだ行方不明かどうかは解りませんが、警察は捜索を打ち切るそうです。再捜索のお願いをしたのですが、あっさり断られてしまいました。居ても立っても居られなくなって自分で動く事に決めたんです。」


「そうだったんですね。」


「ツカサが行きそうな場所に、心当たりとかは無いですか。あいつとは古い付き合いですが、最近の事は全然知らなくて。」


「私も連絡があまりにも無かったので、様子を見に来たんです。でも、マンションには居ないし携帯も置いたままでした。」


「既に携帯を色々確認されたんですね。」

シンジは既読になった事がぬか喜びになった事に気付いた。


「えぇ、何か手掛かりが無いかと確認したんですが、これといったものは。」


「そうですか。なんでもいいんです。手掛かりになりそうなツカサの行先とか無いですか。このまま手掛かり無く帰れません。」

シンジはミナミに縋るような気持だった。


「手掛かりになるかどうかわかりませんが・・・。」


「結構です、仰って下さい。」


「ツカサと1年程前に白馬の吉野にある別荘に行ったんです。凄く気に入ってくれて、また行きたいまた行きたいって何度も言ってくれて。今度、休みが合ったら行こうねって言ってたんです。」


「そこへはまだ行けて無いんですか。」


「はい・・・。」


シンジは時間を見ようとして腕を出したが、時間に縛られるのが嫌いという理由で何年も腕時計を付けていなかったのを思い出し、ジーンズのポケットから携帯を取り出し時間を見た。時刻は14時半を回ったところ。今から白馬に向かえば夕方には着いて夜には帰れるだろう。


「すいません、別荘の場所を教えて貰ってもいいですか。」


「今から行くんですか。」


「えぇ、何もしてないと余計に気になってしまうんで。早く見つけ出して一発ぶん殴ってやろうと思いましてね。失礼、彼女の前で言う台詞じゃありませんね。」


「わかりました。私も一緒に行っていいですか。シンジさんの邪魔はしませんので。それに、前回吉野で色々回ったのを知ってるのは私だけですし。見つかるまで歩き回るんでしょ。だったら、私もお役に立てる筈です。」


「いやいや邪魔だなんて、それは有難い。是が非でもお願いします。そのかわり運転は私にさせて下さい。」


ミナミが頭を横に振った。

cafeを後にし2人はミナミの車に乗り込み白馬へと向かった。




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