失踪
夫が永眠し本日家族葬で見送りました。生前は夫と仲良くして頂き本当にありがとうございました。夫の人生に彩りを添えて頂いたことを心より感謝致します。
妻 アオキ ヨウコ
別れて3ヶ月後に送られてきた元彼からのメール。
Bcc一斉送信された妻と名乗るメールに脳味噌が沸騰しだした。
元彼の冗談かと思いメールを打ち返そうとしたが、未読メールを見て気が変わった。彼が亡くなったのは本当のようだ。
未読メールには妻と名乗る女から「あなたのことは許さない」と綴られていた。
警察から連絡が入ったのは朝の9時17分。近くのBARで明け方まで呑んでいたのでまだ眠い。頭を整理してから携帯に問いかける。
「見つかりましたか。それとも何か進展がありましたか。」
「事件性が無いんです。連絡がつかないだけで、大人の家出かもしれない。これ以上時間をかけても...。上司がそう判断したんです。大変申し訳ないのですが。」
淡々と返答が返ってきた。
「ちゃんと捜査してくれたんですか。捜査して1週間で何がわかるんですか。彼女に話は聞いてもらったんですか。彼女なら何か知ってる筈です。」
先程より強い口調になる。
「もう一度捜査してください」そう言う前に向こうが言葉を被せてきた。
「すいません次がありますので、失礼します。」
切れた携帯を持ったままシンジは瞼を閉じた。
連絡が取れなくなって半年が経つ。住んでる場所が離れているとはいえ、年に数回だが食事には行くしメールのやり取りはしていた。
疑って無いと言えば嘘になる。気になる事がいくつかある。もう少し時間をかけてもいい筈だ。
そう決意しながら、寝室の棚から年賀状を取り出して鞄に入れた。