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花火大会

 ゆっくりと目を開いた。周りを見渡すといつもの自分の部屋だった。


「ここは夢の中だよな……」



今いる場所は現実なのか夢なのか確認するすべがない。

夜になって夜空に浮かんでいるのが月か地球なのかでやっと確認するしか方法がない。


「多分、今は夢の中だな……」



 時計を見ると朝7時ちょうどを指していた。

今まで夢の始まりはちょうど7時だったので、夢の中だろうと思った。


 今起きていることの真相を確かめるためにはりきってきたのはいいものの、いざ行動にうつそうと思うと何をすればいいのか全くわからない。


「俺ってアホだな」


 

 今から何をすればいいのだろう。

とりあえず僕は光希と美咲に会おうと思った。

二人に会えば何かがわかるかもしれない。


 僕は光希と美咲にメールをする。ただ会うだけでは変なので、今から一緒に映画を見ようと連絡した。ちょうど観たい映画があってたのでよかった。

とりあえず、光希と美咲に接触して情報を得るしか……


 映画が昼に上映予定なので、僕は急いで支度をした。田舎に住んでいると映画館が遠すぎていつも時間に追われる。準備ができると僕はいつもの電車とバスを乗り降りして都会へと向かう。


 何かと人が多い。電車とバスでは席に座れたが、人が多すぎて降りるのがとても大変だ。人見知りの僕にとっては相当きつい。



 バスを降りた瞬間、僕の耳に大きな雑音が聞こえた。人の声、工事中の音、宣伝の音楽。都会にはやっぱりなれない。

少し歩いて映画館の入口に行くと二人が立っていた。



「よっ!守。お前が誘う側なんて珍しいな」


「ごめん……。凄く見たい映画があってさ」


光希は半袖半ズボンで眉間にシワをよせ、暑そうな顔をしている。



「私、この映画凄く見たかったんだ~。守君誘ってくれてありがとね」


「そうなの?それならよかった」



美咲が笑顔で言うので、僕は照れくさくなってしまった。


「守~。顔赤いぜ~」


「そういうのやめろって。全く赤くないし!」


光希に照れているところをバレてしまったのでちょっと恥ずかしくなってしまった。光希は何かと僕らの表情を細かく見ているから、すぐに異変に気づく。


「映画の券もう皆のぶん買ったからね」


「ありがとう、美咲」


美咲が映画の券を買ってくれていたお陰でスムーズに映画を観ることができた。



 やっぱり映画館で映画を観るのはいい。

映画が始まる前の予告から迫力があってどの作品も面白そうで、見たいと思ってしまう。映画館の良いところは画面が大きいのはもちろんだが、やはり一番は音と空間だといつも思う。

音が大きく、映画の真っ暗な空間が映画のストーリーに引き込まれていく。



 映画が終わって横を振り返ると美咲が泣いていた。光希も泣いてはいなかったが、表情を見る限りよかったようだ。

背伸びしながら、光希は言う。


「いや~、よかったよかった~」



美咲もようやく落ち着いて話す。


「あの二人結局会えたのかな……」


「多分、会えたんじゃないのかな」


映画の内容を話ながらエスカレーターを降りていく。



映画館を出ると眩しくてあまり目があけられない。空がもうオレンジ色になっている。映画を見ると時間が早く進んでいるような感覚におちいるこの感覚が結構好きだ。


映画を見終わった後、美咲が皆で夕食を食べたいと言うので近くのレストランで食べることにした。

レストランに向かう途中、僕は何となく周りの高いビルを見上げた。



そのとき、都会に立ち並ぶビルにある大きな広告が目に入った。



『花火大会、明日開催!』



僕は一瞬ただの大きな広告だと思いスルーしたが、少しずつさっき見た広告を思い返すと何かがおかしい。

光希も広告に気がついたのだろうか。


「明日は花火大会だな!いつもの場所で一緒に見ような」


光希が僕らに問いかけたので、とりあえず返事をした。


「あ、そうだな……」


「私、明日楽しみだな~」



 僕はあることに気がついてしまった。僕は現実の世界で三人で一緒に花火を見たはずなのだ。

でも、夢の中では見てないことになっている……


僕は美咲に質問した。


「花火大会ってまたあるの……?」


「何言ってるの!またってなにも、一回しかないでしょ」


「あれ?そうだったか……」


「変なの~」


そういうことか。美咲の言葉で僕は確信した。


 今、夢の中では花火大会の前日という時間設定になっている。

日付というものが存在しないこの夢の世界にとって、重要なことを知ってしまった。



 つまり、僕は夢の中で過去にいるのだ。



 何故だ。花火大会の前日に何か重要なことでもあったのだろうか。

花火大会の前日にしたことを思い返したが、その日は家で本を読んでたことぐらいだ。

考えても全くわからない。

 過去だとわかり、さっきから心の整理ができない……

顔を上げて、周りを見ると光希と美咲が心配そうな顔で僕を見つめていた。


「守、大丈夫か?」


「顔色悪いよ守君」


「大丈夫、大丈夫。う~ん、最近あまり寝てないからかな」


僕は苦笑いして、二人に気づかれないようにする。


「なんだよ、そういうことならしっかり寝ろよ!」


「悪いな……」


二人には何とかおかしなところを見せないように、いつもの雰囲気をつくった。



 夕食も無事に食べ終わり、家の近くまで帰ることができた。

三人とも家が近いので帰る方向が同じというのは、とても嬉しい。

夢の中では花火大会の前日であることをさっき知った僕は、ずっと不思議な感覚におちいっていた。



 いつの間にかもうかなり暗くなっている。夏の時期は暗くなるのが遅いので、もうかなりの時間帯だろうなと思った。虫の鳴き声が響き渡る。


「じゃ、また明日ね!明日はわかってるわね」


「あぁ。いつもの場所で花火見ような」


 美咲は手を振りながら別れた。

そのあと、僕は光希と一緒に自分たちの家に向かおうとしたが、急に光希は自分たちの家とは違う方向に歩きはじめた。


「ちょっとだけ公園に寄ってかね」


 僕は軽くうなずいた。

公園に着くと何かと落ち着くこの感じは一体何なのだろう。

誰一人いない夜の公園に虫の鳴き声が四方八方から聞こえてくる。

毎年この場所で花火を見るのだが、やっぱり眺めがいい。

 フェンス越しに立つとキラキラと光り輝くビルが遠くに並んでいる。



 光希と二人で夜景を眺めている時、横から変なオーラを感じたので、不意に光希の顔を見ると何か決心したような顔つきになって、僕の方を振り向く。


「守、美咲のこと好きだろ?」


「は?何言ってるんだよ」


急に変なことを言い出したので動揺してしまった。



「好きじゃないのか?」


「いや、まぁ気になってはいるけど……」


「明日の花火大会の時に告ったらどうだ?」


「いや、何言って……」


「俺も手伝うからさ」



ぐいぐいと光希が押してくるのでもう反抗しても無駄だと思った。


「わかったよ!やればいいんだろ、やれば!お前こそどうなんだよ。好きな人いるのかよ」


「当たり前だろ、そういうお年頃なんだからよ。おい、そんな顔するなって。美咲じゃないから安心しろ」



 急に公園によるとか言いだして、光希の様子が変だなと思ったらこれかよ……

僕は呆れた顔で光希の肩を軽く押す。


「何で急にこんな話をするんだよ」


「昔からさぁ、守が美咲のこと好きだってこと俺は気づいてたんだぞ。なのにお前のことだから、全く美咲に自分の気持ちを伝えないからイライラしちゃってさ」


光希の人の気持ちを読む能力が改めて怖いと感じた。やっぱり人の気持ちを表情や行動ですぐ読める光希は凄いなと思う。


「そうだったのか……」


僕が一言発した後、かなりの長い沈黙が起きた。




すると、急に光希が夜空を指さした。


「おい、あれ見ろよ」


 光希が指をさした方向をたどっていくと、僕はまた見てしまった。

今まで起きたことが忘れそうになってしまいそうだった。


 夜空をさした方向を見上げると数えきれないほどの星と

      輝くばかりに美しい大きな地球があった……




 まさか、この光景を光希と見るなんて想像もしていなかった……























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