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MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
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デ~デン♪

「むぅ、演奏が始まってしもたか、、、なら急がにゃあならんな。グループ分けしとる場合じゃあ無いでな、ここは各個で探すとしよう。とりあえずワシと楓とニコライは1階、有働とヤコブは2階を頼むぞいっ!」


室田の指示を受け、有働がホール内に視線を這わして答える。

「了解だ。だが、、、今は動いてねぇこの観客達が何を意味すんのか、、、とにかく皆、油断すんなよ」


楓とニコライが頷いたのを見届けると、有働はヤコブを引き連れて2階へと向かった。



・・・2階ホール入り口前・・・

「大将、CIA出身のアンタだ、、、探索の基本は知ってるな?」


「ああ、碁の目探索だな?鑑識部門では無かったが、それくらいは知っている」


「上等!なら先ずアンタはここ、2階通路を調べてみてくれ。俺は先に中に入って2階客席を調べてるから、ここが済んだら合流を頼む。時間もねぇし早速かかろう」


「わかった、気をつけてな」


「大将、アンタもな」



・・・1階客席・・・

「楓、お主は先ずロビーを調べてくれ。客席はワシとニコライで探すでな、、、」


「わかった!ニコライ、ムロティーの護衛もあるから大変だろうけど、、、お願いね」


「ウム・まかセロ・おまエ・モ・きをツケテ・な」



こうして厄介な宝探しは始まった、、、

ニコライはホール後方、入り口方向から中央部にあるステージへ向けて、不審物はないかとスコープを動かしている。

室田は逆にステージ周辺の探索から手を着けた。

そして眼前でピアノを奏でるショパンへと、探索の手は止めぬままで聞こえよがしにボヤいて見せる。


「アンタはワシが一番好きな音楽家じゃ、、、それなのに何の因果かゆっくり演奏を聞く事も出来んとはのぅ、、、勿体無い話じゃて」


演奏中のショパンである、、、言いながらも室田自身、返事は期待していない。

ところが、、、


「それは光栄だよ。僕はねミスター室田、、、音楽で人の心を掴む事が至上の悦びだった」

目を閉じ、首を波の様に動かしながらショパンはそう答えた。


「だった?」


「そう、、、過去形だよ。この時代まで生きてみて判ったからね、僕の音楽は十分に人の心を掴んでいた事が、、、でもね、そうなると欲が出てくる」

器用に演奏しながら歌う様に会話もこなすショパン。


「欲じゃと?」


「うん、欲。人の心を掴む事が出来ると今度は、音楽で人を意のままに操り従えたい、、、そんな欲が出てきたのさ。」


「ほぅ、、、それは強欲な事じゃ。

しかしそんな夢物語が本気で叶うと思うほど子供でもあるまいて」


「夢物語?そうでも無いよ。長生きはしてみるもんでさ、僕の時代には無かった物が今はある」

初めて目を開き、しっかりと室田を見ながら笑みを浮かべる、、、それは不敵というよりも不気味な笑みだった。

そしてその表情のままで更に続けるショパン。


「このピアノに繋いだCPUさ、、、このオモチャを手にしたお陰で、僕の音楽は更なる高みに届いた、、、僕の時代には無かった機械音や、僕の時代には知られていなかった音階を使える様になったのだから」

そう言いながらショパンは、ピアノに繋がれた複数のCPUとモニターを愛おしそうに見やった。


「お主、、、何を企んでおる?」

尋ねながら異様に汗が吹き出てくる。

室田は嫌な予感しかしていなかった、、、


不安げに己を見つめる室田に視線を戻すと、ショパンは無邪気にもクイズを出す。

「ではここで問題です。デ~デン♪

人間の可聴域は一般に20Hzから20000Hzと言われていますが、、、それ以外の音域を使用した場合、人間はどうなるでしょうか!?」


「ぬうっ、、、」

どうなるか想像はついていた。

しかし室田は唸る事しか出来ない。

唸る室田の前ではショパンが、舌をチッチと鳴らして時を刻んでいる。そして、、、


「ブッブ~!タイムアップだよ。

ダメじゃん、何か答えてくれないと、、、

あ~ぁガッカリだ、、、じゃあ答えは観客の皆さんに教えてもらいなよ♪」


ショパンがそう言い終えると同時に、1曲目である第1番変ロ短調も終わりを告げた。


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