答え合わせ
ふいに有働が口にしたその名、、、
予想外の事に他の面々が驚きを顕にする。
「な、なんとっ!?ダ・ヴィンチとなっ!?」
「え、、、ちょ、ちょっと待って、、突然過ぎて頭がこんがらがって来た、、、」
「なんとなくそんな気はしていたが、、、現実となるとやはり驚くな、、、」
「、、、ダ・ヴぃんチ、、、か」
ざわつく周囲をよそに有働は、室田の手にした端末の画面を見つめたまま。
Dはその視線から逃れる事もせず、口許には笑みすら浮かべている。
「なんだ、、、ちっとも焦らねぇんだな」
つまらなそうに有働が溢す。
「君自身が、前々から我の正体に気付いておる事を匂わせていたでは無いか?
それに本当の事を言うならば、我自身が隠すつもりは無かったのだよ。
ただ、支配者はミステリアスな方が群衆に恐怖心を与える、、、だから隠せとJJの奴がうるさいもんでね。して有働 流石よ、何故に判ったのだ?」
「よく言うぜ。これだけヒントを並べられりゃあバカでも判らぁな」
バカでも判る、、、そう言われて押し黙ったのは、室田以下4人の判らなかった者達。
恨む様な目を有働へと突き刺している。
「あ、、、悪ぃ、、、」
その視線に気付いた有働が、舌を出しながら頭を掻いた。
「フン、、、まぁええわぃ。それよりバカ以下のワシ等にも解る様に説明せぃ」
皮肉めいた言い回しで室田が言う。
すると有働は鼻をすすり、1つ咳を払うと静かに口を開いた。
「爺さんの持ってたあの2通の封筒。
皆、内容について色々と推測してたろ?
あれはほぼ当たってた。
先ずイタリア語で始まり、フランス語で終わっていた文面、、、あれはイタリアに生まれ、フランスで没した事を示唆していた。
しかしそんな偉人は腐る程に居る、それだけじゃあ人物の特定は出来ねぇ。
そこで第2のヒント、小さい方の封筒だ。
和紙に透ける様に書かれた(e)の文字。
あれについては兄弟の推理がビンゴだ。
あれは確かに(e)なんかじゃなく、平仮名の(の)だったのさ。
つまり、わざわざ和紙に筆字で書いた事で日本語である事を示唆し、透けた文字を裏から向きを変える事で(e)にも(の)にも、見ようによっちゃ数字の6や9も見えるよう細工した、、、
そしてその(の)が意味する物、、、それはダ・ヴィンチの(ダ)」
「ダ・ヴィンチのダ、、、じゃと?」
室田が眉間に深い皺を刻む。
すると何やら思い付いたらしく、楓が小さく声を上げた。
「あ、、、そっか!」
「フフン、さすがは楓ちゃん♪気付いたみてぇだな。そう(の)=(ダ)なのさ。
Dよ、アンタこんな事を書いてたよな?小さい封の中身に記しているのは正体に関するヒントだが、名であって名では無い、、、と。
アンタのフルネーム、レオナルド・ディ・セル・ピエーロ・ダ・ヴィンチだが、正確に言うとダ・ヴィンチは名の一部だが名では無い。
ダ・ヴィンチ、、、日本語にするとヴィンチ村の、、、となる。
つまり広く知られるレオナルド・ダ・ヴィンチの名だが、直訳すればヴィンチ村のレオナルドって意味だ。
この中でレオナルドはアンタの名。
ヴィンチはアンタの生まれた村の名。
(ダ)だけが格助詞、、、名であって名では無い。そういうカラクリだろ?」
そう問いながら有働がポケットから取り出したコームで髪を撫で上げる。
しかしシベリアの冷気に凍りついた髪は、パリパリと砕ける様な音を発していた。
「フフフ、、、見事だ賢しき者よ。あれだけのヒントでよくぞ答えに辿り着いた物よ、、、」
「あれだけのヒントじゃねぇよ。確信を得たのは今アンタが語った想い出話だ。
あの2つのエピソード、、、あれはアンタ自身が書き残した手記として、現代でも残されている内容だ。
俺がアンタに昔の事を尋ねたのは、必ずこの2つを話すだろうと見込んでの事だったのさ」
有働がそう言って手にしたコームを画面内のDへと向ける。
「これはこれは、、、我とした事が口車に乗せられ、ついついお喋りが過ぎた様だな」
「ま、ついでに言うと、アンタが生まれたとされる1452年、、、それ以前の偉人が1人も現れていない事もヒントになったんだがな」
「なるほど。ならば有働 流石よ、、、
そこまで判っているならばJJの正体も既に、、、」
問うDの言葉を遮る様にして、有働が喰い気味に答える。
「当然判ってるさ。
ジャン・ジャコモ・カプロッティ、、、最後までアンタに付き添ったとされる弟子であり、通称サライ(小悪魔)と呼ばれた男、、、だ」




