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MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
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それぞれの探索

長い通路を直進する室田とヤコブ。

途中、有働・ニコライ組や楓が向かった横路以外にも3箇所の分岐があったが、そのどれもが10m程で行き止まりとなり、此れといって目につく物も無かった。

そして今、長い通路のドン突きに辿り着いた所である。


そこには場違いな祭壇らしき物があり、腰の高さ程の石碑と、それを挟む様に天使を象った蝋燭台が2つ置かれている。

そして何より目を惹いたのは、行き止まりの壁部分に描かれている聖母らしき壁画であった。

しかし異様な事に、描かれた女性の両目部分は欠け落ちており、ポッカリと穴があいた様に2箇所が窪んでいる。

室田とヤコブは足元を探してみたが、目の部分は見つからなかった。


「皆、聴こえちょるか?」


「ああ、聴こえてるよ」


「キコえて・いル」


「こっちも聴こえてるわ」


皆の応答を待ってから室田が言う。


「今、ワシ等は通路の最終地点におる。

途中に目ぼしい物も、下への階段も見当たらなんだ。つまり2つの木箱はお主等の方にあるという事じゃ。

しかし、今おるこの場所が少し奇怪でのぅ、、、場に似つかわしく無い祭壇と、これまた似つかわしく無いルネサンス調タッチで描かれた、聖母らしき壁画があるんじゃ、、、」


「壁画?しかもルネサンス調ってか、、、」


「うむ、、、それもその絵っちゅうのが不気味でな、、、描かれた女性、両目部分が欠けておるのじゃ。これが何を意味するのか解らんが、とにかく箱がそちらに在る事は確かじゃ、、、何とか急いで見つけ出してくれぃ。どうぞ、、、いや、オーバー」


「だから!いちいち言い直さんでもいいっつってんだろっ!、、、とりあえず解った、急いで探してみる。アウト」


「しょうチ・シた、、、アウと」


「了解、こっちも急ぐわ。アウト」


通信を切った室田が左の袖を捲る。

すると建物に入ってから既に20分近くが経っていた。JJとの会話の時間を含めると、25分程が過ぎている計算となる。

焦り混じりの表情で、室田が唸るように呟いた。

「頼んだぞぃ、、、」



楓が進んだ場所には左手に牢が2部屋と、右手には看守室らしき部屋があり、既に看守室は隅々まで探し終えていた。

結果、収穫無しである。


「次はこっちね、、、」


鉄格子の前に立つ楓。

その右手には「孫六ブレード」が握られている。

「フヒュッ!」

鋭い呼気と共に振り抜かれた刃道一閃!

鉄格子が3本、楓の目の高さでバターの様に断ち切られていた。

現代のオリハルコンと謳われるレアメタル、カメレオニウムを関の刀匠が鍛えた孫六ブレード。流石に刃こぼれ1つしてはいない。


同じ要領で足元も振り抜いた楓。

その刹那、金属音を響かせながら3本の鉄棒が崩れ落ちた。

丁度自分が通れるだけのスペースを作った楓がそこを潜る。

そして室田と同じく、少々の焦りを見せながら牢内の探索を開始した。



一方、有働とニコライだが、右手の2部屋を有働が。

左手の2部屋をニコライが、それぞれに手分けして探索していた。

やがてニコライが首を振りながら有働の所へやって来た。


「ダメダ・こちラ・ハ・なにモ・ミアタらん、、、」


「そうか、、、こっちも今んところは何も無ぇ。残るは奥のあの1部屋だけ、、、か」


そして2人は右側奥の牢へと踏み入った。

内部は他の牢と同じ構造であり、非常に質素な物である。

入って左の奥に便所らしき物があり、床には寝床に使用されていたと思われる、ボロボロのゴザの様な物が敷かれている。

他に目につく物と言えば、木の机と椅子。

そんなものである。


「やれやれ、、、ここも同じようなもんだな。とりあえずは、、、」


そう愚痴った有働が机の引き出しを開く。

、、、しかし何も無い。


「ですよねぇ、、、知ってた」


次に便所と呼ぶにはあまりに簡素な、穴があいただけのそこを覗き込む。

長く使われていないとは言え、噎せる様な臭いにえづきそうになる。

すると後ろからニコライの声が掛かった。


「オイ・さすガッチ、、、」


目に涙を溜めた有働が振り返ると、ニコライがひっぺがえしたゴザの下を指差している。

すると1部分だけ土の色が違うのが見えた。

明らかに後から人の手が加えられたのが判る。


「おい兄弟、、、どうせなら俺が臭せぇ思いをする前に声掛けろよな、、、」


ぼやきながらもニコライが差し出したコンバットナイフを受け取ると、2人してその部分の土を掘り始めた。

すると間も無く刃先に何かが当たるのを感じた有働。


「ビンゴ♪」


急いで掘り進めると、縦琴を奏でる人魚のレリーフが姿を現した。

更に掘り進めそれを取り出すと、箱ティッシュ程の大きさの木箱であった。

逸る気を整えて留め金を外す、、、

そして中を見た有働は、溢れ出たかの様に一言吐き出した。


「なんだこりゃ、、、」



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