その決断
「どういう意味じゃ?」
有働の言葉に室田が問い返した。
「時間も無ぇ事だし手短かに言うぜ。
S・Aにランク付けされた人間にも家族が居る、、、その家族までがS・Aにランクされてるとは限らねえ、、、そういう事だ」
考えてみれば至極当然の事である。
しかしそんな当然の事にすら、皆が息を飲んだ。
「むぅ、、、言われてみれば、、、」
良薬を飲み込んだ様な苦い顔の室田が唸る。
「強かな奴の事だ。家族揃ってS・Aランク、そんな万々歳の単純な事はしねぇだろうよ。家族を救う為に、テメエの命を捨ててでも爺さんを止めようとする、、、そんな連中はごまんと居るだろうさ。仮に俺がその立場だったとしても同じ事をするだろうよ」
「ト・イウ・ことハ、、、」
「単純なランク付けの分布通りじゃなく、敵の方が圧倒的に多い、、、って事ね」
今更気付かされたその事実に、皆が重い空気に潰されそうになったが、今はそれどころでは無い。
「と、とにかく今はどうやって地に降りるか、、、それを先に考えよう」
ヤコブの言葉でハッと我に返る一同。
「だな」
気持ちを入れ替える様に有働が賛同する。
そしてパイロットへと振り返り声を掛けた。
「なあ、この機体にパラシュートは?」
「積んでます!積んでますが、、、その、、」
「歯切れ悪ぃな、時間が無ぇんだハッキリ言いなっ!!」
ここで何やら狼狽えながら室田が口を挟む。
「ま、待て待てっ!まさかお主、パラシュート降下をする気かぇ!?」
「この状況だ、他に何があるよ?」
「、、、ワ、ワシは、、、その、なんだ、、、高所恐怖症、、でのぅ、、、」
「、、、今の状況でよくそんな事が言えたな、大したもんだよ爺さん、、、知るかっ!!四の五の言ってっと延髄に手刀叩き込んででも黙らせっぞっ!!」
怒鳴りつけられ、子供の様に身を小さくした室田。
有働は室田が口をつぐんだのを見届けると、改めてパイロットへと視線を投げた。
「で?」
「あ、そのぅ、、、積んでるのは物資投下用でして、、、人間の降下に使用した事は、、、」
途切れ途切れ申し訳無さそうにパイロットが言う。
「この際だ、それでも全然構わねぇよ。最大重量は?」
「はい、250kgまでに耐えれる小型の物が4つ」
「4つ!? 1つ足りないじゃないっ!ちょっと流石っち、どうするつもり!?」
少々ヒステリックに声を張る楓。
それを落ち着かせる様に有働は、あえて静かな口調でそれに答えた。
「どちらにせよ、降下経験の無い爺さんは俺がタンデムで飛ばなきゃならねえんだし、4つで何も問題は無ぇよ楓ちゃん」
するとそれまで殆ど口を開かなかったニコライが、何か言いたそうに巨大な鉄の手を、小さくそろりと上に挙げた。
「んだよ、今度はお前か、、、どしたよ兄弟っ!?」
「、、、オレ・350kg・アルの・だガ、、、」




