表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
57/177

旧友

手結港(ていこう)に着くと、既に迎えは到着していた。

屈強そうな男が2人。

どちらも迷彩柄のカーゴパンツに、ポケットの沢山ついた濃いカーキ色のベストを着ている。


1人はカミソリの様な目をした、冷徹な印象を与える短髪の男。

もう1人はボサボサの髭面にモヒカン、更に巨体という山賊の様な風貌。しかしその表情はにこやかで、陽気な人柄が窺い知れる。


「ようっ!久し振りだなニコライッ!!まだ生きてたかよお前っ!ガハハハッ!!」

モヒカンの男が、その風貌通りの豪快な笑い声を響かせてニコライを抱き寄せた。


「ロシもふっ!おマエ・こそ・ゲンき・そうデ・ナニより・ダっ!」

普段、岩の様なニコライの表情が、珍しく喜びで緩んでいる。

どうやらこの2人、かなり昔からの馴染みらしい。


ロシモフがもう1人の男を手招きし、近くへと呼び寄せた。

「コイツぁ最近入った新人でな、名前はディック。コードネームはアイスマンだ。まだ若いが、腕は勿論こっちの方も中々に切れる」


頭を指差しながらそう言うと

「まぁ期待のルーキーって奴だ。ほらっ!皆さんに挨拶しなっ!」

と、ディックに促した。

腕を後ろに組み、肩幅に足を広げたディック。

「紹介に与りましたディックと申します。まだまだ若輩ですが、以後お見知り置きの程を」

ハキハキとした口調でそう述べると、切れのある動きで腰を折り、バネでも仕込まれているかの様なスピードで元へと戻した。


その間、何故かロシモフはずっと楓を見つめていた。その視線はとても優しく、そして何処か悲しげにも感じさせる、、、

しかし言葉を掛ける事はせず、ディックの挨拶が終わると直ぐに皆へと向き直り

「とりあえず話は後だ、早速基地へと向かおう。2台のボートに分乗して貰うんだが、組み合わせをどうするかな、、、よしっ!ニコライとそこの変な頭の日本人、俺のボートに乗りなっ!残りはディックのボートだ」


「へ、変な頭っ!?、、、モヒカンのアンタに言われたくねぇよっ!!」

ロシモフは有働がムキになるのを見ると、又も騒音に等しい笑い声を轟かせ、足早にボートへと乗り込んだ。



基地へと向かうボート上。

有働が腕を組み、仏頂面でそっぽをむいていた。

「どした若いの?えらく楽しそうじゃねぇかっ!?」

ロシモフが操艇しながら、皮肉混じりにそれを

からかう。


「ケッ!そりゃ楽しくもなるぜっ!ゴツくてムサいオッサン2人と潮風浴びてんだからよっ!!楽し過ぎて涙が出て来らぁなっ!!だいたい何で分乗する必要があんだよ?このボートなら6人乗れんだろがっ!?」

一句一句、吐き捨てる様に有働が言う。


「ガハハハッ!言うねぇ若いのっ!しかし分乗はしょうがねぇんだわ。なんせニコライ1人で3人分の体重があんだからよ。まっ!基地までは15分程だ、、、諦めて野郎3人で海上ドライブと洒落こもうやっ!ガハハハッ!!」


「さ、3人分て、、、少しダイエットしろよな兄弟、、、」

恨めしそうに有働が睨むが、例のごとくニコライはそれをスルーしている。


「ほうっ!?人間嫌いのお前が兄弟分を持つたぁな、、、珍しいじゃねぇか、え?ニコライ」

意外そうにロシモフが声を掛けると、鼻を鳴らしたニコライがそれに答える。


「フンっ!コイつ・が・カッテ・に・いっテル・だけ・ダっ!」


「ガッハハハッ!そういう事かよっ!」

海上でも豪快に笑い声を響かせたロシモフだったが、突然神妙な面持ちとなると、今までが嘘の様に静かな口調でニコライへと問い掛けた。


「それはそうと、、、さっきの若い娘、、、あれがボスの、、、(みやび)の忘れ形見か?」

問われて、一瞬全身に力を込めたニコライ。

気まずそうにチラリと有働を見やる。

すると案の定、興味を持ったらしい有働もニコライを見つめ、無言で説明を求めていた。


ニコライは逡巡に苦しんだが、諦めの溜め息を吐き出すと、覚悟を決めた様にロシモフの問いに答えた。

「ああ、、、かのジョ・ノ・なハ・かえで、、、おれタチ・の・ボスだっタ・みやビ・の・むすメ、、、だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ