非なりて似たりし者
淡路サービスエリアの一件以降は、これといったトラブルも無く高知県へと入った一行。
「連絡は入れてあるんじゃろうな?」
「モンだい・ナイ」
室田とニコライのやり取りを横目に、有働1人だけテンションが上がっている。
「いよいよメガ・フロートと御対面かぁ、、、実物見んの初めてなんだよな俺!超~楽しみっ♪」
「言うても基地に滞在するのは、せいぜい2時間程じゃ。それに単なる軍事基地だでな、遠足気分じゃとガッカリするぞぃ」
「そうよ。先ずは食事を摂って、装備品の補充。それが終わると直ぐに機体に乗り込んで一路ロシア、、、遊びじゃないのよ」
「へいへい、悪ぅ御座いました、、、それはそうと爺さん、、、」
下唇を突き出しおどけていた有働だが、表情を改めて室田に問い掛ける。
「スケアクロウって言やぁ、世界でも有数の民間軍事会社だ。一介の科学者でしか無いアンタが、よく経営者になれたもんだな?」
「単に全財産を注ぎ込んで筆頭株主となったに過ぎん。ただ経営権を握ったというだけで、ワシが創設者な訳では無いでな」
車窓から視線を投げ出し答えた室田。
「それでも一般人には手が出ない代物だよな、、、科学者ってのはそんな儲かるのか?」
「過去に取得した特許の権利も売ったし、退職金も前借りして全て注ぎ込んだ、、、それとラッキーな事にスポンサーの援助もあってようやくじゃ、、、楽に手にした訳じゃ無いわぃ」
「スポンサー?どこの金持ちよ?」
「お前が知る必要は無い、、、」
室田は外を眺めたまま、1度も有働と視線を合わせない。
「フ~ン、、、」
有働も生返事を返すと、それ以上この件については触れなかった。
高知市へと向かう国道32号線を走っていた一行だが、途中でニコライがハンドルを左へと切る。
「オイオイ兄弟っ!高知港へと向かうんじゃねぇのか?」
無言のニコライに代わり、楓が口を開いた。
「念の為よ。さっきの一件で私達が四国に居るのをヤクザ業界は知っている事が判った、、、当然、連中は私達が基地を目指してると考える。もし報復を企むなら、高知港で待ち構えるはずよ。だから少し遠回りだけど、手結港から基地へ向かうの。まっ、厄介事を避ける保険みたいな物ね」
「でもよ、基地への連絡橋は高知港にしか無ぇんだよな?どうすんだ?」
「ナカま・が・フネ・で・むかエ・ニ・くる」
ようやく口を開いたニコライに、有働は尚も疑問をぶつける。
「車はどうすんだよ?乗り捨てるって訳にはいかねぇべ?」
又も口を閉ざしたニコライに代わり、今度は室田がそれに答える、、、明らかな苛立ちを見せながら。
「さっきから、やいのやいのと五月蝿い奴じゃっ!車は近隣に停め、後から仲間が回収する手筈になっとるっ!、、、ったく!アレはどうするの?コレは何?なんで?どうして?と子供じゃあるまいしっ!!ちったぁ黙っとれぃっ、この文無しがっ!!」
「あ!ひでぇ!ガキみたいってのは認めっけどよ、文無しは酷くねぇかっ!?、、、まぁその通りなんだけど、、、よ、、、」
ムキになって反論を試みた有働だが、途中で真実に気付き心が折れたらしい、、、その口調は尻萎みとなっている。
それを見た室田は、勝ち誇った顔で追い討ちを掛けた。
「ハンッ!ざまぁ見ぃっ!懲りたなら少し黙っとれぃガキんちょ!!」
「キィ~~ッ!テメェを黙らせたろかいっ!このクソジジイッ!!」
揉み合う2人を困り顔のヤコブが宥めるが、暫くは収まりそうに無い。
頬杖をつき、深い溜め息を吐きながら、賑やかしい後部座席を眺める楓。
呆れながら、、、そして見下す様にこう呟いた。
「どっちもガキよね、、、目クソ鼻クソってやつだわ、、、」
ヤコブも宥めるのを諦め、苦笑いながらそれに頷く。
「まったくだ、、、」
そんな騒動には全く加わらなかったニコライだが、ここでようやく静かに口を開いた。
「ツイた・みなト・だ」




