野獣の如く
明石海峡大橋、、、
神戸市と淡路島を結ぶ、全長約4Kmにも及ぶ世界最長の吊り橋である。
淡路島のみならず、本州と四国を結ぶ
「本州四国連絡橋」の役割も果たしており、
「神戸淡路鳴門自動車道」としても併用されている。
「マモなく・アワじしマ・に・ハイる」
ハンドルを握り、前方を向いたままでニコライが告げる。
「淡路島、、、考えてみたら、ついこないだなのよね、、、この島であのサミットが行われたのは」
楓が感慨深げに呟いた。
それと同時に「グ~~」という音が響き、楓の顔がみるみる紅く染まっていく。
「あれぇ?今の楓ちゃん!?」
後部座席から身を乗り出した有働がすかさずチャチャを入れた。このあたり、ヤンチャ坊主のまま大人になった男の面目躍如である。
「だって、、、お腹空いたんだもん、、、」
腹部を撫でながら、俯き加減で唇を尖らせた楓。
「確かにのぅ、、、ワシもかなり腹が減っておるし、、、どれ、淡路サービスエリアで腹拵えとするか」
室田を味方に就けた楓が、目を輝かせながら叫ぶ。
「さんせぇ~~♪」
するとある事に気付き、皆の視線がヤコブに集中した。そして皆の代弁者として有働がソロリと口を開く。
「あ、あのよぅ大将、、、普通の食事、、、なんだけど、、、」
そうである。
皆は食事と浮かれているが、ミミック化しているヤコブにとっての食事とは、基本的に人間を喰らう事、、、皆はそこに気付いて気を回したのだ。
それに対し含み笑ったヤコブ。
軽く手を振りながらこう答えた。
「気遣いは不要だ。ミミックは細胞配列を組み換えて、身体の構造を人間のそれと90%まで同化出来る。だから普通に食事を摂る事も可能だ」
それを聞いて胸を撫で下ろした一同。
それとほぼ同時にニコライがハンドルを切り、淡路サービスエリアへと入った。
トータル400台程を停められる広大な駐車場。
しかし一行の乗るハマー改を停められるのは大型車のスペースとなり、レストランから少し離れている。故にもしもの時、直ぐに車に戻る事が出来ず危険を伴う。
それを危惧した有働が室田に問う。
「どうするよ爺さん?」
「フ~ム、、、レストラン以外となると、ドーナッツショップや露店のジャンクフードか、、、誰かがそれらを買って来て、移動しながら車内で食べるっちゅうのも1つの手じゃが、、、」
「1ヶ所に長く留まるのは危険だしな、、、確かにムロティーの案が1番無難かも知れないな」
ヤコブが同意した所で、突然楓が子供の様にゴネ出した。
「ヤダヤダヤダヤダッ!ヤダッたらヤダッ!ちゃんとした物が食べたいっ!!」
よもやプロの傭兵とは思えぬ言動だが、機嫌を損ねた時の楓は猛獣と何等変わらない、、、誰が彼女を宥めるか、それを皆が視線で擦り合っている、、、不穏な沈黙が車内を染める。
そして最終的に白羽の矢が立ったのはヤコブだった。今のところ楓が1番優しく接している彼ならば、、、そういう思惑からの人選である。
「あ、あのさ、、、楓、、、」
腫れ物に触れるかの様に、、、そんな言葉があるが、この時のヤコブはまさにそれの体現者だった。
しかし腫れ物が触れる側の都合に合わせてくれる訳も無く、、、
「あんっ!?何っ!?」
「、、、いぇ、、、何でも無い、、、です」
その刺す様な野獣の視線に負け、ヤコブがあっさりと引き下がる。
(オイッ!何してんだよ大将っ!)
肘で小突きながら有働がそれを咎めた。
(だってお前、、、俺にはとても無理だ、、、)
力無くそう答えるとヤコブは、青ざめた顔を小さく横に振った。
そんなやり取りを横目に、溜め息混じりで室田が言う。
「まぁ良かろう、、、ワシもちゃんとした物を食べたいでな。レストランに行くとしようや」
「ソウして・やっテクれ・もし・ナニか・アッテも・おれガ・あんタ・ヲ・カナらず・まモル」
室田に加えニコライをも味方に就けた楓、今度は無邪気にはしゃぎ始めた。
「ヤッタァ~♪ご飯♪ご飯♪」
総大将の室田と譜代大名のニコライ&楓。
この3人がそう決めたのなら、外様大名である有働とヤコブは従うしか無い。
こうして一行は車を降りレストランへと向かった。
血なま臭い出来事が待っているとも知らずに、、、




