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MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
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車中にて

自分がもう1人居る、、、

当事者にとってこの事が、重い事実だという事は想像に(かた)くない。

それどころかマシューより上位のミミックがマシューを取り込み、再び切り離したならば更に自分が殖える可能性も孕んでいるのだ、、、気が気では無かろう。


「ヤコブよ、心中は察する。

前にお主は、母国アメリカが再び単独覇権国家となる為にDを消す、、、そう言っておったが、これでもっと大きな理由が出来てしもうたのぅ。お主の言葉を借りるならば、お主が唯1人の、、、単独ヤコブである為にと言った所かのぅ。そもそも最早、国家云々言うてもしょうがない所まで事態は悪化しとる。

国連や各国の対テロ部署が動かん所を見ると、それらも既に完全に奴の手中じゃろうて、、、もう世界は奴等基準の物に生まれ変わっとると言っても過言では無かろう。

あらゆる治安維持組織はもうアテに出来んわい、、、」


「俺自身の事はどうでもいい、、、

しかしこれと同じ悲劇が世界中で起きている。いや、それどころかアンタが辿り着こうが着くまいが、もっと大きな悲劇、、、いや惨劇が待っているんだ!どうするつもりなんだムロティー?どう転んでも多数の人間が死ぬ、このシナリオを変える手立てはあるのか?」


「フフフ、、、自分の事より世界を案じるか、、、お主らしいわぃ。

フム、手立てと言うたかの?

残念じゃが、、、無い、、、今の所はな。

奴の所へ辿り着けたとしてじゃ、仮に奴を倒す事が出来たとしても、配下のあのヤーマとか言う連中が、世界中で行う殺戮まで止める事は出来まいよ、、、しかしじゃ、辿り着けたなら一縷(いちる)の望みはある。逆に辿り着けなんだら全ては終わりっちゅう事じゃ」

そう言ってタバコをくわえた室田。


「望み?」

火を点ける室田をヤコブが見つめる。


「あぁ、どういう訳かは知らぬが、Dはワシと会いたがっておる。そこには何んらかの理由があるはずじゃ。場合によってはその理由とやらが交渉の材料となろう、、、

まぁ現時点では不確かで薄っぺらい望みじゃがの、、、」

言い終えると室田は、胸いっぱいに溜め込んでいた煙を一息に吐き出した。


「そうか、、、そうだよな、、、辿り着かない事には何も始まらない、、、か。

アンタを信じるよ。それはそうと、、、

ロシアに向かうとの事だが、奴はロシアに居るのか?」


「いんや。奴は別の場所におる」


「な、なら何故っ?」


ここで有働が皮肉に充ちた物言いで口を挟む。

「お偉い世界の覇者ともなるとよ、謁見する迄に幾つもの部屋を通らなきゃいけないんだとよ、、、つまり奴からの指示でロシアに向かわされる事になったって訳さ」


「そこに一体何があるんだ?」


その問いに両手を拡げた有働。

「さぁてね?とにかくシベリアである男に会えとよっ!」


「ある男?」

ヤコブが眉をしかめる


「あぁ、ラスプーチンだとさ、、、」


「!?」


言葉を失ったヤコブへと有働が更に続ける。

「そんな驚く事かぁ?今更、どんな歴史上の人物が現れても不思議はねぇだろうよ。

長い年月を掛けてDの奴がコレクションした偉人達。なかなか実物は拝めねえんだしよ、折角だから堪能させて貰おうぜっ!」

言い終えた有働の表情がみるみる変わった。

自らの言葉の中で何かに気付いたらしい。


(長い年月、、、コレクション、、、って事はつまり、、、)

考えを整理しながら小声で呟く。

するとそれに気付いた室田が、怪訝な目を向け問い掛けた。

「さっきから何をブツブツと言っとる?」


すると慌てた様子で有働がそれに答えた。

「い、いやっ、何でもねぇよっ!

それより思ったより静かだな、、、

もっとこう、、、派手に襲撃受けるとか、映画みたいなカーチェイスなんかを期待してたんだけどよ♪」


フンと鼻を鳴らした室田が不機嫌そうに口を開く。

「呑気な事を、、、

世の連中はワシ等が国外に出ると思っとるでな、今頃は空港で待ち伏せでもしとるじゃろうよ。まさか四国へ向かっとるとは思いもよらんだろうからの」


「なるほどね。しかし平和は平和で退屈なもんだなぁ、、、」

頭の上に手を組んだ能天気な男に、呆れた表情の室田が首を振った。

ここでヤコブが再び口を開く。


「さっきDは別の場所に居る、はっきりそう言っていたが、、、既に把握しているのか?奴の居場所を」


これにニヤリと笑った有働

「応よ、ニコライの兄弟のお手柄でなっ!

こいつを見なっ!!」

そう言って内ポケットから取り出した写真をヤコブへと手渡した。


そこには机を前にし椅子に座したDと、その脇に立つ1人の男が写っていた。

どうやらDが室田に連絡をよこした時の映像を、端末からプリントアウトした物らしい。


「、、、これが何か?」

それに視線を走らせたヤコブ、首を傾げながら有働に尋ねる。


「おいおい大将、もっとよく見てから訊けよな、、、ったく!!ここだよっ!ここを見てみなっ!!」

そう言って有働が写真の一部分を指差した。

そこをヤコブが凝視する。

するとそこには、Dの脇に立つJJの直ぐ横、石の壁に張り付いた1匹の甲虫が写っていた。


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