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MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
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後付けのルール

ニコライの気付いた事、、、

それはDの居場所を特定する為の有力な情報となりえる物だった。

そしてそれを元に情報収集に動いていると、見る間に時は過ぎ、気がつけばあれから5日が経っていた。


「Dの予告したゲームスタートまで残り2日、、、か」

集めた情報に目を通しながら有働が言う。


「フム、、、そろそろDからの連絡が入るやも知れん。その時にはワシはどういう態度で接すれば良い?」

司令塔としてすっかり信頼しているらしく、室田が有働に指示を仰いだ。


「そうだな、、、普段通りでいいと思うぜ。

ただ、会話の最後にこれだけは言ってくれ」

そう言って室田に何やら耳打ちした有働。


「なるほどのぅ、了解じゃ」

それを受けた室田も意味深に笑った。


しかし楓は面白く無いらしく、あからさまに不機嫌な顔でこう愚痴る。

「ちょっと!2人だけで盛り上がって無いで、私達にも説明してくんない?」


しかし有働と室田は楓を見やると、不敵に嗤いながら声を揃えた。

「まぁ楽しみにしとれぃ」


有働などは口調までも室田に合わせている。

この2人、仲が良いのか悪いのか、、、

しかし望んだ言葉を聞けなかった楓は、ニコライと顔を見合わせると、諦めと共に肩を竦めた。


そして翌日Dは、室田に連絡するより先にゲームの開幕宣言とも言える中継を行った。

その姿は又も高井戸首相の物である。


「諸君、お待たせして申し訳なかったが、ようやく準備は整ったよ。

明日、、、いよいよ明日からゲームをスタートする。

既に諸君の手元にはランク・コード・グループを記した通知が届いていると思う。

ゲーム期間は明日より1ヶ月だ、1ヶ月以内にミスター室田が我の元に辿り着いたならば、B・CランクのXグループの者を、、、

辿り着けぬ、もしくは途中にて死亡した場合は、B・CランクのYグループの者を、、、

全て排除するっ!

さて、我の関わるのはここまでだ。この地にてミスター室田の冒険と、諸君の奮闘を楽しませて貰うとしよう、、、

前にも告げたがこの1ヶ月、諸君のどんな動きも我は関せぬ。

自らが生き延びる為に最大限の努力をし、精一杯に足掻いて見せたまえ。

人間の醜さ、、、楽しみにしているよ。

では日本時間の明朝10時をゲームスタートの時とする。

それでは諸君これより1ヶ月の間、存分に我を楽しませてくれたまえ、、、」


Dの中継は意外な程に短く、観る者に淡白な印象を残して終わりを迎えた。


「一大イベントの始まりを告げる割には、えらくアッサリ終わったな、、、」

不服そうな様子の有働。


「ほんにのぅ、、、逆に不気味じゃわい」

頷く室田に楓が声を掛ける。


「とにかく、この中継が世界に流れた時点で、実質ゲームがスタートしたと思っていい。たった今からムロティーを狙う者が現れたって、何ら不思議は無いわ。十分に用心しなくちゃね」


「ウム、、、いまカラ・は・ほてル・ノ・ショクじ・も・フクめ・ヒト・の・つくッタ・りょうリ・は・くち・ニ・しナイ・ホウ・が・ブなん・だナ、、、そのタ・も・いろイロ・やっカイ・そう・ダ、、、」

ニコライが言い終えると同時に、端末の着信音が響いた。

一斉に皆が目を向ける中、1度深呼吸をして室田が応答する。


「ごきげんよう、ミスター室田。中継は御覧頂けたかな?」

中継の時と違い、オリジナルの姿をしたDが問うた。


「当然じゃ、、、」


「結構。それはそうとこの数日間、図書館や博物館などを色々と巡っていたようだが、何やら手掛かりでも掴めたのかな?」


「フフン」

Dの問い掛けに、室田が思わず笑いを溢す。


「何か可笑しな事を言ったかな?」


「いやなに、お前さんでもそういった事を気にするのかと思うたら、ついな。意外と人間臭さも残っとるんじゃな、、、」


「1つ誤解して貰っては困るのだが、我もその他の眷族も、基本的な性格は人間だった頃の物と変わってはおらん、、、人間臭いのも当然であろう?」


「ほぅ、、、まぁそれはええわい。

とにかくゲームはスタートな訳じゃが、、、

お前さん、1ヶ月の期間を設けてくれたがのぅ、そんなに必要は無いと思うぞぃ。

折角の御気遣い痛み入るがのぅ、24時間じゃな。日本からならば24時間あれば、お前さんの待つその場へ行けるはずじゃ。

首根っこ洗ろうて待っておるが良いわ」


これは先程、有働に入れ知恵された台詞である。

そしてこの言葉にDの米噛みがピクリと動いた。


「ほぅ、、、やはり手掛かりを得ていたか。どうやら我の居所に見当がついてる様子、、、

しかし、そう上手く事は運ばせないよ。

諸君はRPGを遊んだ事が無いのかね?

ゲームスタートと同時に、いきなり魔王の居城へ赴く勇者などがどこに居よう。

数多の困難と謎を乗り越え、各地の中ボスを倒してから向かうのが定石であろう?

当然、諸君にもそれを(なぞら)えて貰う。

世界中の我の指示した地へ赴き、その地にて待つ我の部下からある物を受け取って貰おう、RPGにおける必須アイテム集めといった所だ。

そして、そのアイテムを全て集めてから我の元へと来ぬ限りは、ゲームクリアとは認めぬ。

勿論、部下達がすんなり渡してくれるはずは無いと思うがね、、、」


心底愉快そうに笑みを浮かべたD。

そこへ楓が噛み付いた。


「そんなの後付けルールじゃんっ!!

期間内にアンタの元に辿り着く、それが最初の約束だったはずよっ!!」


「フフフ、、、美しきお嬢さん。

残念ながら我は、何ら約束など交わしてはいない。詳細はゲーム前日に中継にて告げると、そう言ったはずだが?」


1度歯噛みした楓が、更に何かを言おうとするが、それを有働が遮った。


「まぁまぁ楓ちゃん。今ん所、俺達はこの爺さんの言う事を聞かざるを得ない立場だ、、、諦めようや。

で、俺達ゃあこれから何処へ向かえばいいんだいDちゃん?、、、」


楓からDへと視線を移した有働、笑顔ではあるがその目は笑っていない。


「有働 流石、、、賢明な判断だ。

諸君には先ずロシアはシベリアへと向かって貰おう。その地にて1人目の我が部下が待っておる。

その男の名は、、、

グレゴリー・エフィモヴィッチ・ラスプーチン!諸君が魔術師として知るあの男だよ」


顔前で組んだ掌に顎を載せ、Dは静かにそう答えた。まばたき1つせぬままで、、、

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