RPG
Dの予告通り、午前9時丁度にその中継は始まった。
あのサミットにおけるG8諸国には、各国の字幕入りで全て同時中継されている。
日本においても全てのチャンネルの画面で、Dとその腹心らしき男の姿が映し出されていた。
Dの中継は、いつも室田に連絡をしてくる時のあの部屋から行われている。
それが電波ジャックによるものなのか、配下に中継機材を用意させてのものかは判らない。
薄暗い部屋に座しているDは、あの日と同じく高井戸首相の姿をしていた。
机に肘をつき、組んだ掌の上に顎を預けると、怖いほど穏やかに、そしてゆっくりと話し始めた。
「ごきげんよう。突然の中継、驚かせた事を一先ず詫びておこう。今日の用件は他でもない。1つ面白いゲームを思い付いたものでね、、
諸君と共にそれを楽しみたくて、それを伝えるべくこうして姿を晒した、そういう訳だよ。
ルールはそれほど難しい物では無い、心配は無用だ。
先ず、このゲームを行うには大掛かりな調査と準備が必要でね、、、開始は1週間後を予定している。
それは決まり次第、またこうして中継によりお知らせする事としよう。
さてお待ちかねのゲーム内容だが、先ずG8諸国の人間全てをランク分けさせて貰う。
AAA・A・B・そしてCの4段階だ。
なに、珍しい事ではあるまい、、、
人間も食肉や魚介類を、品質によってランク分けしていよう?それと同じに思ってくれればいい。
その中でBとCにランク付けされた者には、更に個別ナンバーを与える。
例えば日本のBランクの100番ならば、国の頭文字Jにランクを示すB、そして個別ナンバーの100を並べてJB100となる訳だ。
後々説明するが、AAAとAには番号は不要ゆえ与えない。
さて、ここからが本題だが、、、
今、我の居場所を探して旅立とうとしている男が居てね。
老体だが、なかなかに元気で愉快な御仁だよ。
訳あって我とは縁深き者でね、、、
私としても1度会ってみたい人物なのだよ。
しかしだからと言って、この者に容易く居場所を教える訳にはいかない、、、
何故ならこの御仁こそがこのゲームの主人公であり、諸君の命運を握る者となるのでね。
さて、そこでだ先程説明した個別ナンバーを与えられた者達、、、それを更に2つのグループに分ける。
仮にXとYに分けるとしよう。
これが諸君の生死をも分ける事となる。
と、言うのも先に紹介した御老体、彼とその仲間に人類の代表として、我の事を探させる。
そして彼等が定められた期間内に我の元へと辿り着く事が出来たならXグループの者共を、出来なかったならばYグループの者共を、、、
申し訳無いが排除させて貰う。
いやなに、今や100億を超えた人類だ、少し多過ぎるのでね、無能な者は間引きしようと、、、まぁそういう訳だよ。
これとて珍しくはあるまい?人間も増えすぎた他の生物を駆逐してきたのだから、、、
ああ、AAAとAにランク付けされた者は安心してくれたまえ、有能で我々に利のある者として、このゲームからは除外するのでね。
どうだね?面白そうだろう?
1人の勇者が人類の命運を背負い、パーティーを組んで魔王の元へと向かう、、、
まるでRPGのようでは無いかね?
まぁそれは置いといてだ、そういう事情でランク付けとナンバーの振り分けに時間が必要でね、、、少々日数を頂く事になる。
ランク、個別ナンバー、そしてどちらのグループへの振り分けになったかの通知は、後日郵便にて届ける事となる。
そしてゲーム開始の前日には、又この場より中継を入れる事としよう。
あぁ、、1つ大事な事を忘れていたよ。
その諸君の代表となる男についてだが、、、
日本人の室田 大二郎、多様性細胞研究の権威だ。
我は彼に会える事を切望してはいるが、諸君が彼の行動を援助しようが、妨害しようが咎める事は無い、、、
一切関せぬ故、好きにするが良い。
それともう1つ、今現在Mr.室田以外にも我を目指している者がおるやも知れぬが、我との謁見はMr.室田以外は一切認めぬ。
故に直ぐに引き返し、自宅にて個別ナンバーの到着でも待つが良い。
もしこの忠告を無視して我の元へ現れたならば、その時は一切の容赦をせん事も付け加えておこう。
長くなったが、我の話はこれだけだ、、、
では諸君、ゲームスタートの時を楽しみにしておいてくれたまえ」
中継が切れると同時に、テレビでは緊急特番に切り替わり、アナウンサーが事の重大さを唾を飛ばしながら訴えている。
その画面に未だDが映ってるかの様に睨み続ける室田、、、
そしてその額には苦汁と共に無数の汗が浮かんでいた。




