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MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
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その違和感

「まばたき、、、じゃと?」

いぶかしげに室田が眉をひそめた。


「見間違いって事は無いの?」


「まっタク・キズかなカッタ・が、、、」


楓とニコライも半信半疑な様子である。


「間違いねぇよ。間違いねぇが、それが奴等全ての、、、爺さんの言うミミック全てに該当する特徴なのかは確信が持てない。だが、思い当たる事はある、、、」


「、、、フム、言われてみれば、ワシにも思い当たるフシがあるわぃ、、、」


「、、、そう言えば私も、、、」


「、、、オレも・ダ、、、」


全員が顔を見合わせ、暫しの沈黙が流れる。

それを破ったのは、やはり有働の見解だった。


「俺がまだ内調(内閣調査室)に居た頃、突然ミミック細胞の調査中止命令が下ったのは話したよな?

その少し前から俺は周囲に異変を感じていた。ただそれが何なのか、当時は判らなかった。

漠然とした違和感、、、そうとしか言えない。しかしだ、あのサミット中継、あれを観た時に当時と同じ違和感を覚えた。

それで俺は確信したんだ、当時の内調メンバーの多くが、既に奴等の一員となっていた事を」


「そうなんじゃよ。

ワシの言った心当りもあのサミット中継じゃ。Dとの会話では奴が暗い部屋に居る事と、奴の目が瞼の奥深くに窪んでいる為か、全く気付けなんだがの、、、しかしサミットに現れた首脳陣には、何やら得たいの知れぬ違和感を覚えた。上手く言葉に出来んのじゃが、何かこう、、、、、」


言葉に詰まった室田に楓が助け船を出す。

「作り物のような感じよね?」


「ソウだ・まルで・CGか・ナニか・ノ・ようナ、、、」

ニコライも楓の意見に同意し、室田も我が意を得たりとばかりに楓を指差した。


「そうっ!そうなんじゃ!

あの時の奴等は、確かに生きてそこに居る実在の者のはずなのに、生気を感じさせぬ何かのせいで、まるで作り物のように思えた。

楓の表現は言い得て妙じゃわい」


「私も流石っちの指摘でハッとしたわ。

何かこう、、、腑に落ちたと言うか」


そう言う楓の隣ではニコライも頷いている。

しかし有働はどこか表情が冴えない。

そしてその表情のまま室田へと問い掛ける。

まるで触れる事を躊躇うかの様に、、、


「1つ訊くけどよ、、、アンタの所に居た例のお猿さん、奴はどうだった?まばたき、、、してたか?」


問われた室田が瞬時に身を固くした。

そして無念を絞り出すように答える。


「、、、しとったわぃ、、、」


落胆の空気が4人に重くのしかかった。


「これで辻褄が合わなくなっちゃったわね、、、」


「ダナ、、、」


1つ溜め息を吐き出した有働だったが、空気を変えようと努めて明るく話し出した。


「そう凹みなさんなって!これもあくまで推測に過ぎない訳だし、何よりこういう事で主観的に物事を見るのは危険だかんな。ここはプロらしく客観的に行くべきだろうな、、、

それに全員が違和感を覚えたって事ぁ紛れもない事実だ。それが手がかりである事には変わり無い。

そして、まばたきの件が思い違いで無いならば、人間社会に溶け込んでいる奴等を見つけ出す有効な手段となるはずだ。

前向きに行こうぜ、前向きによ♪」


「確かにね。1つ1つピースを見つけ出し、地道に埋めて行く事でしか、このパズルは完成しない、、、私達は幾つかのピースを手にしてはいるけど、それをどこに埋めるかが未だ判っていない、、、そんな所かしらね」


「おっ!?楓ちゃん、アンタ詩人だねぇ♪」

有働が口笛を鳴らすと、楓も満更(まんざら)でも無さそうにウインクで応えた。


「フンッ!詩人が聞いて呆れるわぃ。せいぜい闇の吟遊詩人て所が関の山じゃて」

冷やかしで水を差す室田に楓が中指を立てる。


「ま、又お前はっ!いつもいつも雇い主に対してっ!!大体じゃな、お前のその、、、」

反撃に出ようとする室田の言葉を遮り、ニコライが口を開いた。


「で・コレから・どウ・うごク?」


言いたい事を最後まで言えなかった室田が、未練がましく楓を睨んだままでそれに答える。


「どうもこうも無いわぃ、、、とにもかくにも明日じゃ。奴の中継を観ん事には手の打ちようがあるまいよ。

奴の言う所のゲーム、、、それがどんな策略か、それを見てから今後の事を考えるしかあるまいて。後手後手になるのは癪じゃがな。

しかし幸いにも、ここからなら神戸空港が目と鼻の先じゃ、どうにでも動けよう。

不吉で嫌な言い方になるが、今日が気の休まる最後の日になるやも知れん、、、

とにかく今日は命の洗濯に勤しむとしようや」


「爺さんの言う通りだな、今夜は楽しむか♪」


「賛成っ!」


「オレに・とっテ・びール・は・ミズ・と・かワラん・うぉッカ・が・ほしイが・やむヲえンな、、、」


こうして4人は、顔を見合わせ笑顔で頷くと、手にした缶ビールを眼前の高さで派手にぶつけ合った。


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