有働の見解
テーブル上の封筒へと視線を投げやった有働。
「なんこれ?」
大して興味も無さそうにそれを手に取った。
「この端末と共にDから送られた物じゃ、、
大きい方の封筒には奴の所在地、小さい方には奴の正体に関してのヒントが入っておる。
しかしワシらにはチンプンカンプンでの、、
そこでお主の知恵を借りたいという訳じゃ」
室田の言葉を聞いて、明らかに有働の目の色が変わった。
「へぇ、それはインタレスティングやのぅ」
そう言って大きい方の中身を先に取り出す。
暫し目を通すと、指をパチンと鳴らし口笛を響かせた。そして得意気に口を開く。
「居場所については全くわかんねぇが、これイタリア語で始まって、フランス語で終わってるよな?例えば何らかの計画があって、それがイタリアを皮切りに始まり、フランスで完結するとか、もしくはオリジナルのD自身の人生が関わってるかもな、、、
かつてイタリアで暮らしていたが、フランスに移り住んだ経歴があるとか、、、
そういった何かを示唆してるのは確かだと思う。でも現時点では憶測に過ぎないからよ、変な思い込みで決めつけるのは危険だと思うぜ」
「ほぅ、そういう考え方もあったか、、、
流石に頭は切れるようじゃな」
「名前が流石だけにってか?まぁ昔から名は体を表すって言うだろ?」
自慢のリーゼントを撫で上げて、又も指を鳴らす。
しかしその言動は見事にスルーされ、楓がさっさと話題を変えた。
「で、小さい方はどうよ?」
つれないねぇとばかりに両手を拡げた有働、唇を尖らせながら小さい封筒の中身を取り出した。
「e、、、ねぇ。これがDの正体に関するヒントってか?」
両の米噛みに人差し指を当て、思考を巡らせる。
そこへ珍しくニコライの方から声が掛かった。
「ハンし・に・スミじ、、、ココに・いミガ・あるキガ・して・ならナイ・の・だが、、、」
「フム、半紙に墨字ねぇ、、、」
そう言いながら、手にしたそれを角度を変えたり、裏返したりしてみる。そして突然ピタリと動きを止めると、ニコライへと親指を立てて見せた。
「兄弟、ビンゴだっ!アンタ冴えてるぜ♪」
「きょうダイ・いうナッ!!」
「まっ、それは置いといて本題に戻るけどさ、、、これ、本当にeか?」
「ん?どういう事じゃい?」
「アンタ達が開封して中身を取り出した時、この半紙はどういう向きに入ってた?」
有働が睨む様に皆を見渡す。
それに気圧されたらしく、珍しく室田が恐ず恐ずとした口調で答えた。
「いや、、どうって、、、そのままeの文字が目に入る形でじゃが、、、」
長い息を吐き、有働が呆れた様に言う。
「爺さん、アンタ頭は良いかも知れんが、柔軟性は足りねぇみたいだな。こんな物、目にすりゃあそこらの子供でも疑問を持つはずだぜ、、、これは本当にeか?ってな」
多少は慣れたとは言え、その無礼な言いぐさに室田がムッとする。
「フンッ!勿体ぶらんと主の見解を聞かせんか、見解をっ!!」
「透け透けの半紙に書かれている、、、
って事は裏返しても、その文字は見えるって事だ。そして実際に裏返すと、、、こうなる。
見ようによっちゃ数字の9にも見えるし、GやQの小文字にも見える。
だが、、、更にこうすると、、、」
そう言いながらその紙を横向きにする有働。
「どうだい?平仮名の『の』に見えるだろ?
わざわざ半紙に墨で書き、日本人であるアンタに渡した、、、この事からもこれが『の』である可能性は高い。ただ、それが何を意味するかは俺にも解んねぇ、、、」
3人がポカンと口を開け見入る中、有働がさらりと続ける。
「まっ!どちらにせよ、さっきも言った様に現時点ではあくまでも憶測だ。俺の見解はこれくらいにして、さっき俺が言った気付いた事っての、、、そろそろ話していいか?」
「あ、あぁ、、、しかしお主、、、凄いのぅ」
「スコし・みなオシたゾ・さすガッチ!」
「本当本当っ!マジで凄いんですけど、流石っち♪これなら貴方の気付いた事ってのも期待出来そうね、、、で、何に気付いたって訳?」
3人の称賛に気を良くするでも無く、真顔のままの有働が言う。
「さっきの端末でのやり取り、俺は途中からしか参加してないが、少なくとも3~4分は奴を見る事が出来た。しかしその間、奴は1度もアレをしなかったんだよ、、、」
「アレ?一体何をじゃ?」
僅かな間を置いた有働が、そろりと答えを吐き出した。
「まばたき、、、だよ」




