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MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
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血のサミット

一連の人体損壊事件は当然の如く世の知る事となり、その動揺は波紋の様に世界を揺らした。

しかし各国当局は相変わらず何の手掛かりも掴めず、世間の注目に応える事が出来ぬまま苛立ちだけを募らせていた。


そんな折、前々から予定されていたG8サミットが開かれる。

例の事件が各国政府の要人を標的としていただけに、延期すべきとの声も多数挙がったのだが、首脳陣の強い希望により半ば強行的に開催される運びとなったのだった。


場所は日本。

兵庫県、淡路島である。

この様な状況下での開催だけに、その警備は厳重この上無く、その様相は戦争状況下さながらであった。

そんな中、ホスト国である日本の高井戸首相が各国首脳陣を出迎える為、会場近くの兵庫県立淡路島公園に立つ。


多くのマスコミが集まる中、続々と首脳陣が姿を現した。到着順に高井戸首相と握手を交わし、次々と横に並んでゆく。

こうしてついに日・米・英・仏・独・伊・加・露のトップが一堂に会した。

皆が笑顔を携え、記者団へと手を振っている。


しかし、何かがおかしかった。

何がどうおかしいかと問われれば、答えは解らない、、、ただただ何かが不自然だった。

しかしこの熱気の中でそれを気にする者は無く、暫し一斉にシャッターを切る音が辺り一面に鳴り響いていた。

そしてホストである高井戸首相がマイクの前に立ち、サミット開催を告げる弁を振るい始めた。


「世界的に暗いニュースが拡がる中、サミットは延期すべきと懸念する声もありました。

しかしどうしても今のタイミングで行いたい、いや行うべき理由があったのです。

理由は2つ、、、1つは3年前に訪れた危機。

あと一歩で三度(みたび)世界が2つに割れ、戦争という愚行を踏む所でしたが、どうにか事なきを得る事が出来ました。

そこで再度、主要国の連帯、連携を強める為であります。

そしてもう1つ、これこそが真の理由となるのですが、、、」


ここで1度言葉を切り、少し俯いた高井戸首相。

そして上げられたその顔には、ぞっとする様なそら寒い笑顔が張り付いていた。

しかし再度口を開くその時には一転し、何の感情もそして温度すらも感じられない、完全なる無表情と化していた。

抑揚無きその声が2つ目の理由を明かす。


「偉大なる、、、そして絶対なる指導者の出現を告げる為である。

その者の出現により、我々の存在は不要となった。それ故、一斉に役目を終える為に集ったのだ」


その内容にざわつく報道陣。

気付けば高井戸首相を中心にして、各国首脳が並んでいた。

そしてその表情は皆、氷の様な冷たさを感じさせる。

戸惑いながらもシャッターを切り、中継を続ける報道陣の前で更に信じられない光景が広がる。


横一列に並んだ首脳陣が、一斉に上着の内側へと手を差し込んだ。

そして抜き出されたその手には拳銃が握られていたのだ。

あちこちで悲鳴が上がるが、何故か警備にあたっている警官隊も、直ぐ側に立っているSPすらも拳銃を握った首脳陣を傍観している。

逆に半ばパニック状態の者達、その逃げ道を塞ぐ様に囲いを縮め始めた。


先まで取り乱し慌てふためいていた者達は、あまりの恐怖に今度は静まりかえり、動く事すら出来ずにいる。

そして怯える無数の目が首脳陣に向けられた。

しかし皆が恐れた予想とは反し、その手に握られた鈍く黒光りするその物体は、怯える群衆に向けられる事は無かった。

そんな者達に向け、高井戸首相の声が静かに響く。


「面白い物をお見せしよう、、、」


その言葉を合図に首脳陣が動く。

(おもむろ)に銃口を自らのこめかみに押し当てると、全員が一斉に引き金を引いた。

乾いた破裂音が鳴り響き、8人の身体が次々と崩れ落ちる。

唖然とする報道陣は確かに見た、、、

引き金を引く瞬間、8人全員が嗤っていたのを。


時の止まった様な一瞬の空白を置き、再び時が動き出すと、思い出した様に悲鳴を上げる者や夢中でシャッターを切る者の混在するカオスな光景が作り出されていた。

しかしこの状況となって尚、警備の者達は動こうとしない。

横たわる首脳陣に目を向ける事すらせず、報道陣を囲む輪を崩さずにいる。


そしてまたもや時が止まる、、、それをもたらしたのは、理解出来ぬ物への恐怖だった。

悲鳴を上げていた者、泣き崩れていた者、ジャーナリストとしての職務に徹していた者、、、

その全てが動きを止め、愕然と一点を見つめている。


全ての者達の視線を集めたその先にある物、、、それは血に濡れた笑顔を浮かべて立ち上がる8人のVIPであった。

そして朱に染まった顔のまま、高井戸首相が言い放つ

「我が名はD、、うぬら全てを統べる者なり」

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