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MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
24/177

D=e、、、?

室田はホテル室内の椅子に凭れながら封蝋印を切ると、直ぐには中身を取り出さず、躊躇うかのように1度手を止めた。


楓とニコライの視線を浴びたまま暫し封筒を見つめ、意を決するとようやく中身を取り出した。

それは1枚だけの手紙。

そしてそこに書かれていたのは室田の読めない言語であった。


「、、、ニコライ、これ、、、読めるかぇ?」


ゴツく、鈍い光を放つ金属の手で手紙を受け取ったニコライ。

モーター音が唸り、スコープアイが文字に沿って動く。数回細かく頷いたニコライ。


「おっ!解るのかニコライっ!?」

言いながら室田の顔が明るくなる。


「オレは・ロしあゴ・エいご・にホンご・しか・わかラン・これハ・よめナイ」

何故か胸を張り、ニコライが手紙を室田へ突き返す。


「なんじゃいっ!気を持たせおって、、、」

室田が手紙を受け取ろうとするのを、横から楓がひったくった。


「あらニコライ、勉強不足じゃない?私こう見えて13ヶ国語OKだからっ!」

顎を突き出しドヤ顔を向けると、手紙に視線を走らせた。


「これ、イタリア語ね、、、でも変だわ、途中からはフランス語で書かれてる。何か意味がありそうね、、、」

首を捻る楓に、焦れた室田の声が飛ぶ。


「んで、何んと書いてあるんじゃ?」


「白き海と2つの顔を持つ場所にて待つ、、、ここまではイタリア語。ここから先はフランス語で、小さき封には我の正体についての鍵を記す、、、って書いてあるわ」


小さく鼻息を鳴らし肩を竦めた楓、室田へ手紙を返すとベッドへとダイブし

「まっ、、、たく意味が解んないっ!」

と、口を尖らせた。


「フム、、、ならば次はこっちじゃな、、、」

小さい方の封筒を手に取った室田。

こちらは封印がなされてない為か、微塵も躊躇いを見せずに中身を取り出した。


名刺ほどの大きさの、半紙らしき透けた紙。

そこには墨字でこう記されていた。

ただ1文字、小文字のアルファベットでeと。


「これまた意味が解らんわぃ、、、Dを名乗っておいて、eがヒントとはな、、、」

今度は室田が首を竦め、口を尖らせた。


「ハンし・に・スミ・で・かカレて・いル、、、そコにも・ナニか・いミが・アリそう・ダな、、、」

ゴツい腕を窮屈そうに組みながらニコライが首を捻った。


沈黙の中、三者三様に思考をフル稼働させるが、一点の光すら見えては来なかった。

埒があかないと溜め息をついた室田、時計に目をやり突然焦りを見せる。


「こりゃいかんっ!もうこんな時間じゃ!2人共急いで準備せぃっ!!」

時計の針は9時半をとうに過ぎていた。

このホテルのチェックアウトは10時である。

その為か慌てて動き出した室田、、、しかしそれを楓が咎めた。


「ちょっと落ち着きなよ。準備も何もさぁ、纏める荷物がある訳でも無いし、着の身着のままだし、、直ぐにでも出れるじゃんっ!!

ったく、、、これだから年寄りは、、、」


「カエで・いかンぞっ・ホンとう・の・トシより・に・としヨリ・と・いっテは、、、それ・とてモ・しつレイ」

2人がカラカラと笑い出す。


その様を恨めしそうに睨んだ室田、手紙の一件で吸い損ねたタバコを取り出すと、そそくさと火を点ける。

「お主等、、、主従関係っちゅう言葉、、、知っとるか?」


ようやくの恨み節だが、怒りというよりは、呆れと諦めの口調で煙と共に吐き出した。


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