表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
23/177

有働 流石、神戸に立つ

血のサミット翌日の早朝5時40分。

一人の男が神戸の地に立った。

室田に会う為に東京からやって来た有働(うどう)流石(さすが)である。

金が無い事も理由だが呑気な事にこの男、新幹線ではなく夜行バスでやって来たのだ。

降り立ったのはJRと山陽電車の駅が一体となっている垂水駅前である。


「さて、、、自宅は知ってるけども、さすがにこんな時間に訪ねるのもなぁ、、、」

ポリポリと頭を掻きながら途方に暮れている。

周囲を見渡した有働は、近くに灰皿の設置されたベンチを見つけた。

そこへ腰掛けるとタバコに火を点け、煙を吐きながら思案を巡らせた。


「そもそも家に居るかね?あの偏屈ジジイの事だ、あの映像を観たならじっとはしとらんわな、、、既にDとかいう男の情報集めに動いとるん違うやろか?と、なると、、、」


早朝のベンチで独りブツブツと言っている上に、その容姿は独特である。ゴリゴリのリーゼントにヘビ柄のスーツ、、、一見すると不審者以外の何者でも無い。

まだ時間が早い為に人通りもそれ程多くは無いが、行き交う人々は漏れなく有働に目を奪われている。


灰皿のある場所で喫煙しておきながら、持参した携帯灰皿へと吸い殻を放り込んだ有働。

何やら思い立ったらしく、その腰をよっこらと持ち上げた。

思い詰めた表情で駅前の横断歩道を渡り、右手に顔を向けると、ある建物の扉を潜った。

自動ドアが開き、電子音が流れる。


「先ずは腹ごしらえ、、、だな」

またも独り呟くと、朝定食の食券を購入した。

そうである。有働の入ったのは24時間営業の食堂だったのだ。

席につくと直ぐ様店員が食券を千切りに来る。

そして5分もしない内に朝定食が運ばれて来た。

鮭の塩焼、白飯、味噌汁、納豆に海苔というオーソドックスな物である。


「まっ、、、急ぐ旅でもなし」

そう言いながら割り箸をパキリと割るが、最後まで綺麗には割れず、途中から割れ目は歪に横へと逸れた。

一瞬表情を曇らせた有働だったが、まあいいやとばかりに1つ頷くと、合掌をした掌にそれを挟み、はっきり声に出してこう言った。


「いただきまぁす♪」

根本的にお気楽でマイペースな性分のこの男、たっぷり30分かけて朝食を腹に納めた。

そして先のベンチへ戻り、食後のタバコに火を点ける。

ポケットからスマホを取り出し、時間を確認するとまだ6時半である。

通勤者が増えて来たとは言え、街が動き出したと言うには未だ早過ぎる。


有働はマルボロライトのメンソールを燻らせながら、再び思案を巡らせた。

ただし今度は言葉には発っさず、頭の中でである。両の米噛みに人差し指を重ね目を閉じた。


(考えろ、、、俺が教授ならどう動く?あの中継の後、直ぐに各国のエージェントは動いただろう。ならばそいつらから逃げる為にも自宅に留まる事は無いはず、、、恐らくは雇っていたマシンナーズと行動を共にしているだろう。

そして何らかの情報を手にする為に向かう先は、、、研究所、、、か)


先までが嘘の様に眼光鋭く、緩み無い表情で立ち上がった有働。

またも携帯灰皿に吸い殻を放り込み、目の前のタクシー乗り場へと歩き出した。

そしてその佇まいはプロのそれへと変貌していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ