D.チャンネル
「そろそろDの言ってたチャンネル見てみない?」
楓に促され、室田が端末を手に取った。
「車で物を見ると酔うたちなんじゃが、、、」
ブツブツと小言を言いながらも、検索エンジンに文字を打ち込む。
「D」と打ち込むと、UPされていた先のサミット中継の映像が、多数ヒットした。
(グロ注意!)だの(衝撃映像!)だの過激な言葉で内容を煽っている。
次に「D チャンネル」と入力してみる、、、
すると確かにヒットした。
既にチャンネル自体は完成している様だが、映像は暗く、どこかの無人の部屋が映っているだけで、そこにDの姿は見当たらない。
しかし書き込み欄は生きているらしく、世界中の言語で色々と書かれている。
その内容は当然ながら非難の声が殆どであったが、中にはDを讃える物や庇護を求める物も見受けられた。
Dの出現は経済面でも一瞬にしてパニックを起こした。
株価、外為、全てに異変が起こり、それは世界中で多くの投資家が自らの命を絶つ原因となっていた。
コメント欄には、この世を去る直前に投資家達が書き込んだらしい「恨み節」も多数見られる。
「まったく、、胸糞が悪いわぃ、、、この期に及んでも人間は自らの欲にまみれ、やれ資産じゃ何んじゃとほざいとる、Dの蔑む顔が思い浮かぶわ、、、」
そう呟いて一先ず端末の電源を落とした室田。
そしてその予想は、日本より遠く離れた地で的中していた。
サミット翌日・北大西洋上・某所
「なぁJJ、人間とはいつからこうも醜い生き物へと成り下がったのだろうか?数百年に渡り、人類を見つめて来たが、今や地球上で最下層の種族と言っても過言では無い、、、それほどの醜さだよ」
「これは私も耳が痛いですな、、、
D様にお仕えして数百年、その間に何度も貴方様を裏切って来ました。にも関わらずD様はその都度私を許して下さり、寵愛して下さった。その事は感謝にたえませんが、私利私欲で裏切り行為を働いた私は、こやつらと同じ醜き者、、、発言権はありませぬな」
JJと呼ばれた男は苦し気にそう言うと、そっとDから視線を外した。
「よい。そなたを責めてる訳では無いのだ。そなたは自分を悪く、狡く、醜い者と自覚しておる。その分、可愛げもあろう、、、しかしこやつらはそうでは無い。こやつらにあるのは被害者意識ただそれだけ。嘆かわしい事だ」
Dは首を振り、手にしていたワインを流し込むと再びJJに告げた。
「これより生中継で全世界へメッセージを発する」
「御意、、、では早速そのように段取りを」
胸に手を当て慇懃に答えたJJが部屋を出る。
そして10分後
「D様、準備が整いましてございます」
戻ったJJが告げ、頷いたDが共に部屋を出ていった。
そして移動した場所はDチャンネルの映像に映っていたあの部屋だった。
照明に照らされる中、豪華な椅子に座したDがカメラへと向かう。
そして開口一番、吐き出した言葉は、、、
「醜き豚共よ、、、私は失望したよ、、、」




