表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
2/177

山村(さんそん)にて

風光明媚(ふうこうめいび)

そんな言葉がぴったりの、美しい光景を誇るとある山村(さんそん)

都会の喧騒などとは縁遠く、高い建物も無い為360度ほぼ全てを見渡せる。

建造物といえば、茶色い石を積み上げ建てられた頑強ながらも質素な家が、草原の中に点在しているのみで、住民より遥かに多い羊や馬がそこかしこで草を()んでいる。

その光景を楽しむかの様に佇む老人が1人。

藁山に凭れ、この時代には珍しくキセルをくゆらせていた。


「長老~っ!長老~っ!」


呼ぶ声に振り返った老人は、満面の笑みを浮かべ、その細い腕を軽く持ち上げた。


「おおっ、ウーゴかっ!」


ウーゴと呼ばれた少年、年の頃は10代前半であろうか。走って来たらしく、未だ幼さの残るその顔を紅く染め、息を弾ませながら老人の前に立ち止まった。


「そんなに急いで来んでも、ワシはどこにも逃げたりせんて」


手にしたキセルをひょいと振り、笑いながらウーゴを諭す。


「ハア、、、ハア、、、それは解ってるんだけどね、、ハア、ハア、、」


膝に手を当てそう言うと、肩から提げた水筒に口をつけ息を整えた。


「で、ワシに何用かな?」


「あ~っ!やっぱり忘れてるっ!こないだ約束したでしょ、昔のお話の続き聴かせてくれるって!!」


むきになって頬を膨らませるその姿はやはり未だ子供である。


「おおっおおっ、そうじゃったのぅ。しかし変わった子じゃて、他の子は年寄りの話になど耳も貸さんというのにのぅ」


「知らない事を聴かせて貰うの楽しいもんっ♪サッカーなんかよりもずっと面白いっ!」


そう言うと今度は得意げに顎を突き上げて見せる。表情が山の天気の様にコロコロ変わり、それはとても微笑ましく映る。


「フム、ウーゴは本も好きじゃし知識を得る事が嬉しいようじゃな。なかなかどうして(さか)しい子じゃて。ええと、、はて、、こないだは何処まで話したかのぅ、、、」


頭上に視線をやりながら長い顎髭(あごひげ)を手で撫でる。


「世界のあちこちで、偉い人達の身体の一部が見つかる事件があったって所!」


「おおっ、そうじゃったそうじゃった、そこまで話した所でお前さんのママが迎えに来たんじゃったな」


老人はポンと手を打ち鳴らすと、キセルに新たな葉を詰め始めた。ウーゴは隣に腰を下ろし、待ちきれないとばかりに急かす目でその様子を眺めている。

老人はようやく火を着けると、大きく息を吸い込んだ。

そして紫の煙を空に向け吐き出すと、遠い目でそろりと言葉までも吐き出した。


「その直後じゃよ、、、あの男が現れたのは」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ