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MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
169/177

真実 3

皆が注視する中、JJが得意気に語り始める。


「ダ・ヴィンチ様との密約の後、奇しくも自らの手で研究を完成させてしまったミスター室田、、、つまりはダ・ヴィンチ様との契約は必要無くなった訳だ。

そんな時、タイミングよく私はダ・ヴィンチ様から言付かった所用でミスター室田へと連絡を取る事となった。

その時に猿の話を打ち明けられた私は、ある提案を持ち掛けたのだ、、、我等同族の更なる飛躍と進化の為に、、、な」


「そしてその提案はダ・ヴィンチには秘密だった、、、だな?」


有働に問われたJJが、チラリとダ・ヴィンチへ目を向ける。

マホガニーの机の上で頬杖をつき、笑みさえ浮かべてJJの答えを待つダ・ヴィンチは、余裕がありやはり風格を感じさせる。

そしてそれがJJには気に入らなかった。

しかし平静を装いながら有働に答える。


「フッ、、、その通りだ。

交わした契約はダ・ヴィンチ様には内緒の事だった。だがミスター室田の到着した今、隠す必要も無い、、、ついに時は来たのだっ!!」


開き直りとも取れる言動で自らを奮い起たせたJJを、ダ・ヴィンチがやれやれといった表情で見つめた。そして反抗期の子供を諭す親の様に語り掛ける。

「この数百年、何度お主の裏切りにあってきた事か、、、まぁお陰で(おいた)にも慣れたわ。今更どんな内容でも驚かぬ。此度の企み、包み隠さず全て話してみい、、、小悪魔(サライ)よ」


一瞬ムッとしたJJだったが、直ぐに嘲笑する様な口調で言い返した。

「貴方の書いた筋書きは、もう(とお)に書き変わっていたのですよ、、、ダ・ヴィンチ様」


「ほぅ、、、」

憐れむ目で相づちをくれたダ・ヴィンチにJJの口調が変わる。

嘲笑したつもりが、されている事に気付き激昂したのだ。


「アンタが死を望むのは勝手だっ!

むしろ邪魔者が居なくなり清々するっ!!

アンタの死、、、それは叶わぬ事とは言え、私自身も長年望んでいた事だからなっ!!

だが、、、それを可能とする方法など、残される同族にとっては危険な技術でしかないっ!

断じて見つけさせる訳にはいかぬっ!!

アンタには死んで欲しいが、それを可能とする技術は困る、、、だがそのジレンマを解消する為の鍵を、ついに私は手に入れたのだっ!!」


昂るJJとは真逆のベクトルでダ・ヴィンチが問う。

「その鍵が(くだん)の猿、、、とでも?」


「フフフッ、、、そうさっ!あの猿こそが私の願いを叶える力を授けてくれたっ!!

危険な賭けだったが、私はそれに打ち勝ったのだっ!!」


「それは興味深いな、、、続けてくれ」


ここに来て尚、余裕を見せるダ・ヴィンチを鼻で嗤ったJJ。

「フンッ!そうして居られるのも今の内だ、、、まあいい、お望み通り続けよう。

あの時、猿の存在を打ち明けられた私が持ち掛けた提案、、、それはアンタとの契約を守るフリをしながら旅を続け、辿り着いた暁には最新設備の研究所を与える事。

そこで費用を気にせず、好きな研究を好きなだけして貰えば良い、、、と。

更には私の統べた世で、人間では唯一の閣僚の座を与えよう、、、そう伝えた」


皆の視線が室田に集まる。

室田はそれから逃れる様に、帽子の(ふち)で顔を隠した。

そんな室田から視線を外さぬままJJに問う有働。

「で、アンタがそこのクソジジイに出した交換条件は何なんだぃ?」


「先ず1つは、我々の細胞がマシンナーズ手術を受けられる様に改良する事。

そしてもう1つは、例の猿を自然な形で私に引き渡す事、、、」


「おい、、、ちょっと待てよ、、、マシンナーズ手術って何の為に?

全世界を同族で統べたなら戦争なんざ起きねえだろうよ?それにマシンナーズ・バタリオンが配下に在るなら、それ以上の軍事力強化は必要無ぇだろうに、、、」


これにJJが目を閉じ首を振った。

(こいつ、、、やはり目を、、、)

そこに注目した有働に、呆れ顔のJJが言葉を浴びせる。


「これは賢しき者とは思えん言葉、、、

甘いな!有働流石よっ!!

これまでの歴史を、、、

自分達人間を鑑みよっ!!

人類が同族で世を統べて以降、争いの無い時代などあったかっ!?

我等とて同じよ、決して一枚岩では無い。

現に今でもダ・ヴィンチに心酔する者と反感を持つ者の派閥がある。

私がダ・ヴィンチに取って代わった後、其奴等が反旗を翻す事は十二分に考えられる、、、もちろん貴様等人間もな。

その時の為にも圧倒的な軍事力が必要なのだっ!誰もが平伏す程の、、、反抗心すら起きぬ程の圧倒的な力がなっ!!」


今度は有働が目を閉じ首を振った。

「裏切り者は裏切りを恐れる、、、ってか?アンタは痛々しい程に臆病な男だな」


「フンッ!何とでも言うが良いっ!

今後はそうして築いた軍をヒトラーが率い、私の配下において千年帝国が繁栄するのだ。

どう言われようが、この私が勝者となるのだよっ!!」


「恐怖政治による統治、、、まさにナチスの再来だな。なるほど、それをエサにヒトラーを仲間に引き込んだって訳か」

この時、有働と目が合ったヒトラーの口角が僅かに上がったが、有働は全く興味を示さぬままに続ける。


「さて、そんじゃ次はいよいよ、話の核心らしきその猿について聞かせて貰おうか?

自然な形で、、、って言ってたな?」


「そうだ、、、あくまで自然な形にせねば、そこの老いぼれに悟られかねんのでな」

1度ダ・ヴィンチを見てからJJが続ける。


「新田とか言うあの男に、猿を海で処分する様に命じたミスター室田だが、そう仕向けたのは何を隠そうこの私だ。

フフフ、、、ガードもつけぬ素人の男、ロシア政府の仕業に見せて拉致するのは実に容易かったよ。まぁ実行したのはラスプーチンだがね。その後、あの猿をロシアの研究所で調べさせ、実に有益な成果を得る事が出来た、、、

私が第1ステージをロシアに設定したのは、その成果の確認を早い段階で済ませたかったからなのだよ」

どこか悦に入った様に語ったJJ。

どうやら自分の策士ぶりに酔っているらしい。


「なるほどな、、、真の新田の仇はテメェとそこのクソジジイだったか、、、

ラスプーチンをどういうエサで釣ったかは知らねぇが、とにかくその時点で既に四執事(キャトル・マジョルドム)は反ダ・ヴィンチ派だったって事だな?」


「ラスプーチンは四執事(キャトル・マジョルドム)に相応しく無い小者、、、もとより使い捨てるつもりだったがな。

ショパンも誘ったのだが、全く興味を示さなかった。奴はジョルジュ・サンドと再会し、その中で眠る事しか頭に無かったのでな。

まぁ我等の障害にならぬならと放っておいたが、老いぼれがあの女を逃がしたのは誤算だった、、、奴等も取り込み、我が力とする予定だったのでね」


聞き終えた有働が、腰に手を当て長い溜息をつく。

そして皮肉を1つ。

「だとさダ・ヴィンチ、、、アンタも良い部下を持って幸せ者だな」


「まったくだな賢しき者、幸せ過ぎて涙が出そうだよ。尤もお主の様な男が部下だったなら更に幸せだったろうが、、、な」

自嘲気味に笑い、本気とも冗談とも解らぬ言葉を吐くと、そのままJJへと視線を移したダ・ヴィンチ。


「してJJよ、お主は1つ大事な事を忘れておる。先から我に取って代わる事を前提に話しているが、そもそもどうやって我を滅するつもりだ?」


問われたJJの目が妖しく光る。

そして満面に歪な笑みを貼り付かせると

「こうするのだよ、、、老いぼれっ!!」

そう叫び、自らを捕食形態へと変形させた。

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