真実 3…その前にジョン・スミス
皆の所へゆっくりと近づくジョン・スミス。
全身が見えたとは言え、俯き気味でフードを被ったままなので、未だその表情はハッキリと見て取れない。
だが、先程ジョン・スミスは確かに言った。
あの時のツケを払って貰いに来た、、、と。
つまりそれは、ニコライを屠る為に来た事を意味している。
「ヨク・ここが・ワカッタ・な、、、?」
「なぁ~に簡単な事さぁね」
そう言うとジョン・スミスは、糸屑でも取るかの様な動きでニコライの右肩辺りに左手を伸ばす。
しかし指先につままれていたのは糸屑では無く、ボタン型電池の様な銀色の物体だった。
「ソレは?」
「超小型発信器だぁよ。磁石式だからマシンナーズの身体にゃあ、よ~くっつく♪」
「あのとき・ニ・ツケテいた・ノカ、、、シカシ・ばしょ・が・わかっタ・とはイエ・あの・げんじゅう・ナ・ケイビ・の・なか・どうヤッテ・ハイった?」
「厳重?ハッ!あんなもんはオイラァからすりゃあザル警備だぁよ。長年独りでやってるもんで敵陣への潜入は得意なもんさ♪
まぁ何人かにゃ眠って貰ったがね。ヒヒヒッ」
「なるホドな、、、それで・ワザワザ・おれ・ヲ・ヤるため・ニ・オッテきた・と?」
これにジョン・スミスがチョチョイと小さく手を振る。
「いやいや、勘違いなさんな。オイラァがここまで来たのは、誰かさんが死に急がんよぅにだぁよ。だって他の者に殺らせちまったんじゃツケの回収が出来なくなるけんねぇ♪」
「てこと・ハ、、、アンタ・まさか、、、」
「応よ!とりあえずこの場は助太刀させて貰うさね。ほんで生きてこの場を切り抜けた後、ゆっくりと殺し合おうじゃないか」
頼もしくも恐い台詞をサラリと吐くと、ジョン・スミスがマントを一気に脱ぎ捨てる。
するとにこやかな表情とは裏腹に、いつでも戦闘を開始出来るよう右腕は既に銃形態へと変形していた。
ここで有働が申し訳無さそうな顔を作りながらニコライに問う。
「えっと、、、盛り上がってるとこ悪いんだけどよ、、、誰?この爺さん?」
その問いに答えるべくニコライが口を開こうとした時、それを遮る様にジョン・スミスが前に出た。
「お~~♪アンタがオイラァの行動を読んでたっちゅう有働君かいな?
ニコちゃんから話を聞いて、1度会いたいと思ってたんよ!
オイラァ、ジョン・スミスってしがないスナイパーだぁよ。よろしゅうよろしゅう♪
あ~、、、それともう1つ、、、」
そこまで言うとジョン・スミスは、突然真顔を有働へと突き付け、左手の人差し指をブンブンと振りながら唾を跳ばす。
「オイラァ爺さんや無くて、婆さんっ!!」
「、、、、、」
時が止まったかの様に動くのを止めた有働が、数瞬の後に悲鳴にも似た叫びをあげた。
それに呼応した様に楓とダニエルも一緒に叫ぶ。
あの時の自分と同じリアクションに、ニコライが口に手を当て肩を揺らした。
だがそれすらもジョン・スミスの目は見逃さない。
「そこっ!笑ってんじゃないよっ!!
ったく、、、どいつもこいつも同じ間違いと同じリアクションしおってからに、、、」
プンスカ絶賛激オコ中のジョン・スミスにニコライは言う。
「しかし、、、ヨカッたのか?カオ・や・セイベツ・まで・さらシテ・しまっテ?」
途端に冷静となったジョン・スミスは、少し寂しそうに笑うと静かに答えた。
「あぁ、、、もうええんよ。もう決めたんでな」
「キメた?」
「アンタのツケを回収したら、この稼業から足を洗うつもりさぁね。
まっ!普通の女の子に戻るってやつだぁよ♪
ヒャヒャヒャッ!」
「オンナ・の・こ、、、」
思わず呆れ口調で呟いてしまったニコライを、ジョン・スミスの恐い視線が射抜く。
それに気付いたニコライが、咳を払って口調を改めた。
「なぁ、、、1つ・タノマれて・くれナイか?」
「頼みっ!?人をディスっといてよぅ言えたなっ!、、、まぁええわいな、受けるかどうかは内容次第、とりあえず言うてみぃ」
「ツケ・の・しはらい・ホウホウ・に・ついて・ノ・そうダン・さ」
これにジョン・スミスの目が鋭く光る。
「ホウ、、、なら聞かん訳にゃあいかんわな」
ニコライとジョン・スミスが、皆から少し離れて何やら言葉を交わしている。
有働は胸騒ぎを覚えながら、それを不安げに見つめていた。
「、、、と・イウわけ・だが、、、ヒキウケて・くれる・カ?」
「お前さん、、、本気か?本気でそれをこのオイラァに?」
上目使いで凄むジョン・スミスにニコライが無言で頷く。
その真剣な表情を見て、負けたとばかりに深い息を吐いたジョン・スミス。
「そんな顔を見せられちゃあ受けん訳にゃあいかんわな、、、わかった、ツケの支払い方法はそれでええよ。そのタイミングが来たらオイラァが動くとするわいな、、、」
そう言って頭をボリボリ掻いた。
「れい・ヲ・イウ」
会話を終え、皆の輪へと戻った2人を見ながらダ・ヴィンチが問う。
「あの者は?」
答えたのはヒトラーであった。
「ジョン・スミス、、、ヒムラーが雇ったフリーのスナイパーでして、アウシュヴィッツにおける先の闘いでは我が軍に所属していたのですが、、、」
言葉終わりに近付くにつれ弱々しくなるその口調、、、
「どうした?」
「それが、、、戦闘を放棄して途中で姿を消したのです、、、」
「ほう?敵前逃亡を重罪とする貴様がそれを許したとはな」
意外そうに言ったダ・ヴィンチだが、その表情は咎めた物では無く、むしろその理由に興味を示していた。
それに安心したのか、ヒトラーもリラックスした様子で本音を語る。
「それが、、、お恥ずかしい話、何故か奴を憎めませんでな、、、
むしろ雲の様に自由な生き様は、面白くも羨ましくもある。死なすには惜しい、そう感じてしまいまして、、、
まぁヒムラーの奴は烈火の如く怒っておりましたが、、、」
「貴様にそこまで言わせるとは。ジョン・スミス、確かに面白そうな男ではあるな」
(フンッ!何を2人して甘い事を、、、)
JJが不服そうに鼻を鳴らした。が、もう1人不満を感じた者がダ・ヴィンチへと牙を剥く。
「やいっ!聴こえたぞDちゃんやっ!!
面白そうってのはええとして、男っちゅうのは聞き捨てならんっ!!オイラァ女だぁよっ!
オ!ン!ナッ!!」
「!!」とダ・ヴィンチ
「!!!」とヒトラー
「!!!!」とJJ
「!!!!!」と室田
目を点にして動きを止めたミミック陣営。
それを見てニコライは思った。
もしかするとジョン・スミスは、自分が女である事を敵に告げ、その衝撃で動きの止まったターゲットを仕留めて名を上げて来たのではないか?と。
止まった時を動かすべく、有働が手を打ち鳴らす。
「ハイハイッ!そろそろ話を戻そうぜっ!!
さぁ、ムロティー答えてくんな、、、さっき質問した新田と猿の件について!」
これで一応は正気に戻ったミミック陣営。
ジョン・スミスが女という事実に未だ狼狽を隠せない中、流石は長というべきかダ・ヴィンチがようやく言葉を発した。
「ムウ、、、不死であるはずの我が、死ぬかと思う程に驚かされたわ、、、だが賢しき者の言う通りだ。その話、ゆっくりと聞かせて貰おうか?ミスター室田」
「ぬぅ、、、」
唸った室田が助けを求める様にヒトラーを見る。
だがヒトラーとて同じ様な視線をJJへと向けただけ。
これを受けたJJは不愉快そうにしながらも自ら1歩前に出る。
「やむを得んな、、、いいだろう、ここからは私が話そうではないか、有働 流石よっ!」
そう叫んだJJが、やはりミミックには出来ぬはずの瞬きをしていた事、有働は見逃していなかった。




