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MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
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ムロティー

「クルま・ヲ・マワシして・クル」

そう言って姿を消して3分後、ニコライがゴツい車と共に戻って来た。

軍用に用いられる事の多い車種である「ハマー」をベースに色々な改造が施されたこの車、室田が代表取締役を務め、楓とニコライの所属するPMC(民間軍事会社)「スケアクロウ」が所有しており、いわば社用車である。


楓が周囲に気を配る中、室田が先に乗り込んだ。それを確認した楓も警戒を解き、後に続く。

「で、これからどうするつもり?」


「フム、取り敢えずは新田の足取りを追いたいのじゃが、、、情報が全く無いでな、先ずはダメ元でワシの古巣である研究所へ行ってみるか、、、」


それを聞いてニコライが車を発進させた。

室田の邸宅から研究所までは車で40分程の距離である。

「そんな近場に行くなら、こんな大それた旅の支度は必要無かったんじゃ無いかしら?」


「タシかに、、、」


楓とニコライが呆れ顔を室田に向ける。

するとそれを遥かに上回る呆れ顔で室田が答えた。

「あさはかじゃのぅ、、、あの中継を観ていた者達には各国の諜報員も含まれとる。そしてそいつらはピンと来るはずじゃ、あの時のあの細胞が関係しているのでは、、、とな。

そうなると当時の責任者だったワシを探すじゃろ。奴等からすれば住所を割り出すなんざぁ朝飯前、、、あそこに留まる訳にはいかんじゃろうが。これから暫くはホテルやらあちこちを転々とする事になるでな、お主らもそのつもりで覚悟をしとけい」


「マッテくれ・Dはイってイた・かくコクの・チュウすうは・しゅチュウに・おさメタ・と・ならバ・ちょうホウ・きかンは・うごカンのデハ・ナイのか?」


「確かにCIAやGRU、MI6等の主たる諜報機関は奴の支配下なのだろうよ。しかしそれは上層部をあの化物共が抑えただけで、実動する者達には人間も多く残っているはずじゃ。

そしてその中には当然Dに反感を持つ者も少なくないじゃろうよ、、、そういう連中が情報を得る為に先ず目指すのが、、、ワシという事じゃ」

その事実を煩わしいと言わんばかりに、室田が言葉を吐き出した。


「でもさぁ、そういった連中はいわば味方じゃん。逃げる必要は無いんじゃないの?むしろそういう人間を多く集めて手を組めば、、、」


楓の言葉を室田の怒声が遮った。

「アホゥッ!!現時点でDは少なくともワシに対しての敵意は持っとらん!むしろ友好的ですらある!そんな中で奴に対する反乱分子と接触してみろ、奴を失望させる事にもなりかねんわっ!!」


「失望させるのが問題あるの?てかさ、、、教授の口振り、D側の立場の言葉とも取れるんだけど?」

楓が容赦なく冷やかな視線を浴びせる。


「ワシが言うとるのは、今の時点で奴を刺激する事の危険性じゃ。忘れたのか?奴は目的の邪魔になるという理由だけで、配下に降らんかった国々に何発もの核を撃ち込んだ事を、、、

いつ奴の気が変わり、ボタンを押されるのか判らんのだぞ、ましてやワシは奴に託された端末を受け取っておる、、、行動はほぼ筒抜けと言って良いじゃろう。そんな緊張下、要らぬトラブルは避けたい。先ずは奴に会う為の手掛かりを探す事が最優先じゃ、、、それにG8でない国々の動きも気になる、、、」


「モサど・か、、、」


「なるほど、一理あるわね。Dの手がG8以外の国々のどこにまで伸びているのか判らない、、、特に中国やイスラエルの動きは要注意と言えるわね、、、変な言い方して悪かったわ教授」

珍しく素直に非を認め、ペコリと頭を下げた楓。その頭をペチンとはたきながら室田が馴染みの台詞を叫んだ。


「教授で無いと言うとるにっ!もうええ加減、別の呼び方を考えんかっ!思い付かんなら社長とでも呼んどれっバカチンッ!」


「痛っ!何も叩かなくてもいいでしょっ!!何が社長よ!よしっ決めたっ!じゃあ今からムロティーって呼んだげるわよっ!文句は言わせないからねっ!!」

鼻腔を膨らませながら楓が吼えた。


「ム、、ムロ、、、」

言葉を失う室田が、どんな顔をしているのか見てやろうと、ニコライはバックミラーを覗いた。

しかしその時、ニコライは気付いた。

出発して間もなくから、ずっと同じ車が付近を走って来ている事に。


「オイ・どうヤラ・おきゃクさンの・ヨウだぞ・ムロてぃー、、、」

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