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MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
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氷属性

(首、、、動く、、、)

(足、、、動く、、、)

しかし腕だけが動かない。

いや、そもそも感覚すら無かった。


(、、、先の電流で、、、回路が、、、焼かれた、、、か)

微睡(まどろ)みにも似た物に襲われる中で必死に意識を保っていると、前方でコツコツと床が鳴り始めた。そしてそれは少しずつ大きくなる。

力無く項垂れていた首をようやく持ち上げると、ゆっくりと近付き来るヒムラーの姿が目に入った。


「おや、、、朝だというのにお子さまはオネムかな?」

床にだらしなく投げ出された足元で立ち止まると、勝ち誇った顔で見下したヒムラー。

これに楓は唾を吐いて応える。


「フン!最後まで勝ち気な事よ。まぁ良い、最後は君自身の武器で止めを刺し幕を降ろそう。私なりの情けだよ、有り難く思うんだな」

楓の足先に転がる孫六ブレードを拾い上げようと腰を折ったヒムラーだが、右手を差し伸ばした瞬間その動きを止めてしまった。

そして腰を再び伸ばすと、忌々しそうに自らの右手を睨む。


「そう言えば忘れていたよ、、、こちらの指は誰かさんが全て切り落としてくれたのだったな、、、これでは拾えん、、、か」

値踏みする様に楓を見ながら、暫し考える素振りを見せる。

迷っているのだ。

ブレードを拾うには楓を解放し、元に戻した左手で拾うしか方法は無い。

だが、、、解放してしまって大丈夫だろうか?と。

だからこそ慎重に、残ったダメージの度合いを計っているのである。


「どした、、、?殺らねぇのかよ、、、変態野郎、、、」

精一杯の強がりを口にする楓。

そして(かすみ)が縁取る視界の中で、彼女が見たのは愛しいヤコブの姿だった。


(ハハッ、、、ついにアイツの幻覚まで見えちゃったか、、、こうなると私もお終いだね、、、)


幻覚のヤコブは黒いアーマー姿のまま。

(やっぱりスーツ姿の方が好きだなぁ、、、)


そしてその姿で身を屈めながら、忍び足でゆっくり近付いて来る。

(ん?妙にリアルだわね、、、幻覚なら最後くらい抱き締めてくれても良いのに、、、)


そしてついに目が合うと、幻覚のヤコブが口の前に人差し指を立てて見せたでは無いか、、、

さすがの楓もこれでようやく気付く。

(これ、、、幻覚ちゃいますやんっ!!)


同時に意識までもがクリアとなった楓、ヒムラーに気付かれぬようにと慌てて視線をヤコブから外す。

幸いヒムラーは未だ考え中で、この状況に気付いてはいないらしい。

思考が廻り始めた楓は、更にもう1つ大事な事を思い出す。

(そう言えば、あの傷はっ!?)


上目使いに確認すると、やはり左頬には傷が残っていた。これで楓は確信する。

(やはりこの男、、、ミミックじゃ無いっ!!)



一方、神経を磨り減らしながら、物音を発てぬ様1歩1歩近付くヤコブ。

ただ不覚だったのは、武器を所持せぬままでこの場所へ来てしまった事である。

通路の途中、楓の捨てたハンドガンが床に落ちているのを目にしたが、相手は全身に武器を仕込んだマシンナーズ、、、

つまりは全身が火薬だらけという事。

下手に撃って大爆発なんてオチは洒落にならない。

そうなると狙うは背後からのスリーパー。

今のところ、これが一番確実に動きを封じられる手段であろう。


(焦るなよ、、、ゆっくり、、、そうだ、ゆっくりと、、、1歩ずつ、、、)

自分に言い聞かせながら慎重に足を運ぶ。

そしてようやく残り7m程まで近付いた時、ついにヒムラーが動きを見せた。


「フム、良かろう、、、どうせその(ざま)ではろくに動けまい」

そう言って楓の拘束を解くと、元に戻した左手で孫六ブレードを拾おうと腰を屈める。


(マズイッ!!ええいっ、、、ままよっ!)

もうチンタラと進んでいる場合では無い。

何の策も無く一気に距離を縮めようとしたその時、楓が座したままで足先の孫六ブレードを思いきり蹴った。

ブレードはヒムラーの股下を潜り、そのまま床を滑り行く。


「なっ!?」

ヒムラーがブレードの行方を目で追い振り返ると、ヤコブが走りながらそれを拾い上げる所だった。


「き、貴様ぁ~っ!!」


ヒムラーの叫びに楓の叫びが重なる。

「ヤコブ!奴の左頬を見てっ!!」


ヤコブが言われた箇所をチラリと見やる。

確かに赤く一筋の刃物傷が入っている。


「それ、私がつけた傷!再生してないのっ!こいつ、、、ミミックじゃないっ!!」


(やはり、、、な)

ヤコブにも想像はついていたが、そうなるともう1つの謎が残る。

1945年に死んだはずの男が、何故に今も生きながらえているのか?

だが、、、

(ええいっ!考えてもしょうがない!今はただ速くっ!!)


一気に加速したヤコブが、擦れ違い様に孫六ブレードを振り下ろすっ!

不意を突かれた形のヒムラーは、ろくに反応も出来ずにそれを受けてしまう。

そして直後の彼は、左肩から先がゴッソリ消え落ちていた。


「グ、ググ、、、ギエァ~~ッ!う、腕、腕、私の腕ぇ~~っ!!き、貴様ぁ~よくも、よくもぉぉ~~っ!!!」

床に転がる自分のモノを見て、狂ったように喚き散らす。


「クフゥ~~、、、ゆる、さん、、、ゆるさん、、、ゆるさんぞぉぉ~~っ!!」

ヒステリックに叫ぶと右腕をヤコブへと向け、肘部のランチャーを開こうとする、、、が、、、

「ア、アレ?開かない、、、開けない、、、開けないぃぃ~~っ!!」

無意識に左腕で砲門を開こうとしたのだろうが、当の左腕がもう無いのだ、、、開かなくて当然である。

泣きそうな顔を、かつて左腕だった場所とヤコブの間で往復させるヒムラー。

そこへ近付いたヤコブが、冷気の如き一言を放つ。


「悪いが、もう1本もイカせて貰うよ」


「イ、イヤ、、、ヤメテ、、、イヤ、、、ヤメテ、、、」

半狂乱で駄々っ子の様にブンブンと首を振るヒムラーだが、ヤコブは気にも留めず無慈悲に、そして無造作にソレを振った。


ブンッ…


ドガシャ!


風切り音と衝撃音の後にはヒムラーの悲鳴、、、

そして一頻(ひとしき)り叫ぶと、転がる2本の腕を愛おしむ様にその場でへたり込んでしまった。

失われた肩部分は嘆く様に弔いの火花を咲かせている。

茫然自失で床へと視線を落としたままのヒムラー、、、死んだのかと思う程、ピクリとも動かない。

と、そこへ複数の足音が賑やかに響くのが聞こえ、有働を筆頭に生き残った者達が地下へと駆け付けた。


「インカムが通じねぇからよ、心配になって見に来たぜ」


「あぁ、すまない。そっちも片付いたようだな、無事で何よりだ」


「無事、、、とは言えない程に人数は減っちまったが、、、な」

辛そうに顔を歪ませる有働にヤコブの心も痛む、、、

返す言葉の見付からないヤコブはヒムラーへと向き直り、痛みの矛先をぶつける様に、そして絶対零度の冷たさで言い放った。


「全て話して貰うぞ、、、どんな手段を用いてでも、、、な!」

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