怪盗 有働
「ホームセンター?あの、すいませんが、、、ホームセンターって何ですか?」
マッキンリーが申し訳無さそうに訊き返した。
「え?あ、そっか!ホームセンターは和製英語だったな、、、えっと、確か英語では、、、ホームインプルーブメントセンターだっけか?」
「Oh!ホームインプルーブメントセンター!、、、しかし何故そんな所に?」
「俺が最も得意な戦法で敵さんを迎え撃つ為さ。それともう1つ、アンタの部下に手伝って欲しい事があってね」
「部下に、、、ねぇ、、、」
「ま、いいじゃねぇか、とりあえず行こうぜっ!」
「はぁ、、、」
気の抜けた返事をしたマッキンリーだが、有働の指示通り待機中の兵へと無線を入れると、その店で落ち合う手筈を整えた。
先に着いたのは有働達だった。
店員や客が連れ去られたのが営業中だったらしく、店は無人のままで開いている。
「全く不用心だよな、、、まぁ無人の街じゃあ盗人も入らねぇだろけどよ、、、俺以外は」
兵士達の到着を待たずして中へと入る有働。
ショッピングカートを引くと、鼻唄混じりに店内を物色して回る。
日本のホームセンター程の規模では無いが、一般的な学校の校庭並みの広さはあり、個人商店とは比べ物にならない店舗面積である。
「お!これいいねぇ♪ん、これも使える♪」
御機嫌な様子で次々とカートに放り込む有働。
ボルト・ナット・ワイヤー・工具類から、何に使うのかハンガー等の日用品まで、多種多様なラインナップがカート内に山を作る。
入り口付近に立つマッキンリーは、ただただ呆れ顔で有働の動きを目で追っていた。
そうこうしてる内にM113装甲兵員輸送車が、定員いっぱいの11人を積んで到着した。
「有働さん!兵が到着しましたよっ!!」
マッキンリーが、相変わらずご陽気で盗みを働く有働へと大声を飛ばすと、子供の様に勢いをつけたカートに飛び乗った有働が戻って来た。
「いやぁ、こうも堂々と盗みを働けると愉しいもんだな!ルパンⅢ世の気持ちが解ったわ♪」
開口一番お気楽な事を宣うが
「ルパンⅢ世?」
日本の古いアニメの事など知らないマッキンリーは、当然ながらポカン顔である。
それを見て、頭を掻いた有働が続ける。
「あ、いや、こっちの事だ。それより全員こっちに来てくれ、運んで欲しい物があるんだ」
「運ぶって、、、まさかそれだけの為に兵を?」
マッキンリーをはじめ、ガッツリ武装した兵士達は肩透かしを喰った様な顔をしている。
「そうだよ、不服か?ほら!そんな顔してねぇで早く来いよ、こっちこっち!」
軽い足取りの有働の後を、肩を竦め、両手を拡げた兵士達がついて行く、、、
すると辿り着いたのは塗料売り場だった。
全員が説明を求める視線を容赦無く浴びせるが、何喰わぬ顔でそれを受け流した有働が得意満面に口を開く。
「ここにあるペンキと、バックヤードにあるペンキ、、、全部M113に積み込んでくれ♪」




