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MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
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ハッカー

高々と名乗りを終え、皆の元へと一気に駆け寄ったダニエル。

そして有働の前で足を止めると、万感胸に迫るといった表情で右手を差し出した。

ニコライのそれとは違い、か細さすら感じさせる機械の腕、、、有働は一度そこへ視線を走らせてからそれを握り返した。

勿論再会の喜びはある、、、

しかしあの時の事を思い出すと、自分達のせいでマシンナーズにしてしまったのでは、、、と少なからず責任を感じてしまう。

だがそれを表に出すのは、ダニエルの見せた漢気に対する冒涜の様な気がして、努めて陽気を装おいながら声を掛けた。


「ダンッ!よくここが判ったなっ!!」

あの日と同じく愛称に変えて呼ぶ。


「ミスター室田の持つ端末、、、それが発する電波を追って来たんです」

そう言って皆へと視線を巡らせたダニエルだが、何かに気付いたらしく顔を曇らせた。


「、、、ヤコブさんは?」

その一言が再会に沸いていた場の空気を一転させる。

室田とニコライは地に視線を落とし、楓などは今にも泣き出しそうな顔となっている。

その雰囲気から最悪の想像をしてしまったのだろう、ダニエルの顔からみるみる色が消えてゆく。

「ま、まさか、、、」

絞り出された言葉に有働が横に首を振る。


「いやいや!実はな、、、」

有働はショパンに課されたゲームの内容からヤコブが消えた経緯まで、現状についてを大まかに説明して聞かせた。

するとダニエルの登場により手を止められていたショパンが、ここでようやく口を開く。


「えっと、、、彼が誰で、何の為に現れたかは知らないけど、、、そろそろ最後の演奏始めちゃって良いかな?」


「歴史に名を残す貴方のピアノだ、ぜひ聴きたいのは山々だけど、状況的にそうも言ってられないらしい、、、、残念ながらミスターショパン、ピアノを奏でるのは貴方では無く、、、、この僕だっ!!」


皆を庇う様に一歩踏み出しダニエルが力強く答えると、その光景で皆の顔が希望に輝く。

唯一のピアノ経験者ヤコブが消え、爆弾解除の手立てを失っていた一行にとって、力強い言葉を吐いたダニエルはまさに突然現れた救世主。


「へぇ、、、ずいぶん自信ありげだけど、ピアノ歴はどれ程なんだい?」

値踏みする目でショパンが問うが、ダニエルの返答は意外過ぎる物だった、、、


「ピアノ歴?、、、弾いた事は1度も無いよ」


先まで希望に輝いていた皆の顔は、一瞬にして絶望の深淵を覗くかの様に変わり果てた。

そして有働が青白くなった顔のまま、呪わんばかりの勢いでダニエルに迫る。


「ダンッ!てめぇ弾いた事も無ぇのに、どのツラ提げて大見栄を切りやがった!あぁ!?」


「まったくじゃ!気を持たせおってからに!」


「、、、最悪」


「、、、、」


有働に乗っかった室田までもが悪態をつき、楓とニコライに至っては最早敵意にも等しい目を向けている。

しかしそれらを余裕の表情で受け流しダニエルが言う。


「まぁまぁ、そう言わずに僕を信じて下さいよ、、、僕は楓さんやニコライさんの様な戦闘力は無いけれど、その分 僕にしか出来ない闘い方ってのもある、、、」

言い終えたダニエルは、背負っていたリュックから携帯型端末を取り出し動画サイトへとアクセスをすると、機械の指先で検索バーに文字を打ち込んだ。


(ショパン 別れの曲 演奏)


条件にヒットした動画が数多く表示される。

その中から有名なピアニストがUPしていた動画をセレクトすると、今入力に使ったばかりの指先を端末の入力端子に接続した。

同時にダニエルの目が青く光り始める。


「僕の10本の指はそれぞれ違う役割を持っていて、ある指は乗り物のキーになったり、ある指は扉のロックを解除したり、、、今の様にコンピューターに繋ぐ事も出来るんです。

楓さんがアサシンタイプ、ニコライさんがスナイパータイプなら、僕はハッカータイプのマシンナーズって所かな、、、そして今、この動画の中の動きを記憶していますから、もう少しだけ待って下さいね、、、」


言い終えるとほぼ同時に、青く光っていたダニエルの目が黒へと戻る。

そして皆の方へ向き直ったダニエルは、自信に充ちた微笑みだけを残し、何も言わずにピアノへ向けて歩みを進めて行った。




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