表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
103/177

ヤコブらしき者の死体らしき物

本当に唐突な事が目前で起こったならば、咄嗟に人は身動きが取れない物だ。

脳が状況を理解し、正しい行動を起こせる様になる迄にどうしてもタイムラグが出来てしまう。

この時の室田達もそうだった。

血溜まりに横たわるヤコブを一行が茫然と見つめるしか出来なかった僅かな間に、有働だけがそそくさと動き「死体」であるはずの ヤコブの手足を手際良く縛り始める。

それは見事な早縄の技術であった、、、

あっという間に手足が背後で縛られ、ヤコブは逆海老の形で固められてしまった。


「ふぅ、、、これで良しっと、、、」

有働の呟きを合図に室田達の時も動き出す。

ようやく脳が状況に追い付き、各々が本来とるべきリアクションを見せ始めた。


「な、何のつもりじゃ!?」

至極当然の疑問を口に狼狽える室田。

その横ではひざまづき、回数の増えた呼吸を抑え込む様に胸へ手を当てる楓の姿がある。

そしてそれを気遣う様に寄り添うニコライが、有働へと険しい表情を向けた。

しかし当の有働はそれらの反応など何処吹く風、、、乱れた髪に櫛を通しながら衝撃の言葉を口にする。


「こいつ、、、ヤコブじゃねえぜ」


「え、、、?」


「なっ!?」


「、、、、」


「だって考えてもみろよ。じゃなけりゃ撃った相手を俺がわざわざ縛ったりするかよ!」


有働の台詞は確かに一理あるが、面々は未だ事態を飲み込めてはいない。

しかしそれを横目に有働は、ヤコブの「死体」へと話し掛ける。


「なぁ、、、そろそろ起きろや」


「、、、、、」

ヤコブの「死体」は答えない、、、そりゃ死体ならば答える訳は無い。


「オイッてばよっ!!」

死体らしき物の横っ腹に蹴りをくれる。


「ゴフッ!!」

死体らしき物が呻いた。


「ほら、、、なっ!?」

言っただろとばかりに皆へドヤ顔を向ける有働。


「ど、どういう事なの?、、、」


「わかんね。わかんねぇからコイツに直接訊いてみるわ」

そう言うと有働は、うつ伏せだったヤコブらしき者の死体らしき物を(ややこしや、、、)

一気に裏返す。

するとその顔は間違い無くヤコブであった。

だが、撃たれたはずの頭部に傷は一切見当たらない。


「か、回復してる!ま、まさかヤコブが人間を取り込んだ、、、とか?」

楓が有働に耳打ちするが、その口調はとても不安そうである。無理も無い、、、

ヤコブはミミックとは言え「コア」を持っていない、、、それは即ち人間を喰っていない事の証である。

ヤコブの意志により、人を喰って不死になるよりも、人を喰わずに死ねるミミックとしての生を選んだ、そして楓もその選択を尊重し尊敬していたのだから。

それなのに今、目の前に居るヤコブは頭を撃ち抜かれながらも生きている。

それはヤコブが人間を取り込んだからなのか、それとも、、、

愛する男が変わってしまった事への不安が楓に重くのし掛かる。

そんな心情を見透かしたのか、ヤコブの顔をしたソイツは悲痛な表情を作りながら話し掛けた。


「これは一体どういう事なんだ?この縄をほどいてくれ、、、楓っ!自由にしてくれっ!!」


「その前に、頭を撃たれた貴方が何故喋っていられるのか、、、そこを説明してくれる?」


「え、、何故って、、、あっ!ああそうっ!そうだよっ!!さっき危うく殺されそうになったんで、観客の1人を急いで取り込んだんだよっ!!」

強張った笑顔で楓を見つめるが、その視線は間に入って来た有働の身体で遮られた。


「おいおい、、、つまんねぇ嘘ついてんじゃねぇよ!安心しな楓ちゃん、こいつぁ断じてヤコブの大将なんかじゃねぇから」


「うん、わかってる、、、でも流石っち、なんで判ったの?」


問われた有働がヤコブらしき者の懐をまさぐった。そして、、、

「これが決め手だ、、、こいつが俺に勘づかせたのさ」

そう言った有働の手には、ヤコブの愛銃S&W M686コンバットマグナムが握られている。


「その銃が?どういう事?」


「日本を発つ前、スケアクロウの基地で装備を整えただろ?あの時に大将は銃を替えたのさ、、、今後の事を考えて俺と弾を共有出来る様に、俺と同じくこのデザートイーグルに、、、なっ!!」

言い終えた有働がヤコブの姿をした者の顔色を窺う。


「、、、フフ、、、フフフフ、、、クハハハハッ!!」

突然嗤い出したその男、、、

一頻り嗤うと観念した様に静かな口調で語り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ