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MIMIC(ミミック)  作者: 福島崇史
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プロローグ

20XX年 ドイツ バイエルン州ミュンヘン

世界的にも暮らしやすいと言われるこの都市で、とある不思議な事件が起きた。

与党である社会民主党の大物政治家、フランツ・ライザー氏の自宅書斎にて、人間の右手首が発見される。

捜査の結果、それはフランツ・ライザー氏本人の物と判明。


それは切断されたというよりは、何かで圧迫されたかの様な断面であり、現場には凶器は勿論血痕すら殆ど残っていなかった。

この事から、他の場所で切断され後から手首だけをこの場所に放置したのかとも思われたが、前日深夜に在宅していたという家族の証言によりその線は薄くなった。もっとも家族が嘘を言っている可能性も否定出来ないのだが、、、


そしてその現場には1枚のカードが遺されていた。

白地で名刺より少し大きいだけの珍しくも無いカード。

そこに記された言葉

「新たなる指導者出現の時は近い。その者によって大いなる帝国が築かれるであろう」


ドイツの警察は大きく3つの組織に分かれており、犯罪レベルによって動く機関が変わる。

今回の件は被害者が大物政治家という事もあり重大犯罪と判断され、州刑事局と連動して連邦刑事局までが動く事となった。


「で、例のカードの方はどうだ?」


「今、採取された指紋を照合中ですので、間もなく結果は出るかと」

丁度そのタイミングでけたたましくドアが開き、1人の刑事が駆け込んで来るなり大声で叫んだ。


「出、、、出ましたっ!!」


「出たかっ!、、、で?」


「出るには出たんですが、、、その、、、」


「歯切れが悪いな、いいから言ってみろっ!」

弱冠の苛立ちを見せながら刑事長が問う。


「保管されているデータと照合した所ヒットしなかったので、念の為と思い既に死亡している者にまで検索範囲を広げ、、、」


「経過はいいっ!!早く結果を言わんかっ!!」

苛立ちのピークが刑事の言葉を遮り爆発した。


「はっ!、、、該当者の名は、、、アドルフ・ヒトラー、、、」

重い沈黙が時を止める。

ようやく口を開いた刑事長だったが

「バ、、、バカな、、、」

その一言を吐き出すのがやっとであった。


これを皮切りに世界中で、要人の身体の一部だけが発見される事件が多発する。

それは時に手首であったり足首であったり、中には指1本だけという事もあったが、何故か頭部や胴体が遺されている事は無かった。

そしてどの現場にも、ドイツの事件と同様に必ずあのカードが落ちており、そこにはやはりドイツと同様、歴史上の人物達の指紋や筆跡が遺されていた。


フランスではショパンの筆跡で

「これは新世界創世の序曲である」

アメリカでは

「我が頭脳は新たなる世界の為に」

の言葉が記されており、これはエジソンによって書かれている事が判明した。

この他にもイタリア、中国、日本等々、あらゆる場所で同様の事件が発生していたが、どれだけ捜査を続けても遺されていた部位以外が発見させる事は無く、被害者が死んでいるのかすら判らない。その上、手がかりはカードのみで容疑者は遥か昔に死亡している人物ばかり、、、


当然の如く捜査は難航し、各国の機関は歯噛みするばかりで時だけが虚しく過ぎて行った。




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