#0 「俺、ブルマ姿の騎士のいる世界に行くから」
「あ、そうそう。俺、明日から異世界行くから」
高校の卒業式が終わりクラスでダベっていると、俺、円城寺浪漫は、無二の親友である鍵那谷鋭利から突拍子もない事を言われた。
「研究してた魔法陣がついに完成したんだ」
「はぁ!?あんたバカァ!?」
某アニメの有名な台詞を引用した俺。
だってそうだろ?異世界?魔法陣?
完全にぶっ飛んでる。
ヤバいとしか言えない。
確かに俺らはどちらかといえばオタクで、どちらかと言えば女子から好かれない部類だった。
しかし話す話題は
「昨日のアニメ見た?」だとか
「今期ショボくね?」だとか
そんな内容だったはずだ。
いたって普通のヌルオタのコンビ。
なのに、え?魔法陣なんて研究してたの?
初耳中の初耳だぞ。
俺がそんな目で見ていると鋭利は目をキラキラさせながら魔法陣の凄さを説き始めた。
小一時間続いたその話は正直全然興味が無かった。
だってそうだろ?
魔法陣の円周の長さや一筆書きで書かないといけない理由など意味が分からない。
こいつはそんなものに夢中だったのか。
そして良いかげん飽き始めたその時、あるフレーズがまたしても俺を驚愕させた。
「その世界では女騎士は、ブルマ姿なんだ!」
いよいよもって訳が分からない。
「大丈夫か、お前?病院行くか?」
「うるせえよ!本当だって。証拠みせてやる」
そう言うと一枚の紙切れを俺に差し出した。
そこには円の中に複雑に描かれた模様が書いてあった。
「お前も来い!いつでも待ってるぞ」
またしても目を輝かせながら鋭利は俺に俺に言った。
もうこいつダメ。でも友達だし。
「分かったよ、気が向いたらな」
俺はそう言って紙を受け取った。
しかしヤツの言った事が本当であると、次の日の朝俺は知る事になる。
○●○●
次の日の朝。
俺はケータイを見ると、鋭利のアドレスが消えていた。
アドレスだけじゃない。
やりとりしたラインも、撮った画像も、アルバムからも鍵那谷鋭利の名前と一切の写真が消えていた。
親や友達に聞いても彼の存在は知るものはなく、鋭利の親すらも「自分たちに子供はいないが、君は誰だ?」と言って、俺との関係性すらも無くなっていた。
魔法陣の存在を知り、その異世界に飛んだ事を知る俺以外。
鋭利の事を覚えてい無かったのだ。
「マジだったんだ」
そして俺は改めて魔法陣の書かれた紙を手にして、決意する。
別にこの世界には未練はない。
俺はもらった魔法陣の手本どおりにノートの切れ端に書くとあたりが光に包まれた。
うわっ!!マジにマジじゃん!!
そして俺は改めて声に出した。
「行くか、聖騎士がブルマ姿の異世界に」