僕は素人探偵①
ブラインドの隙間から見下ろす巨漢の相棒カルロスと、煙草を吹かしながら依頼を待つニヒルな俺ハイロン。
ここは探偵事務所、僕はその一番偉い奴。
従業員は僕と助手の二人だけ。
「もーインターホン押してるんだから出てよ!!」
今の話はほとんどが妄想。
本当は事務的なテーブルや黒皮のイス、広いビルの窓などひとっつもない。
普通のマンションの子供部屋である。
「リスニングの為に借りたこのCD、英語版だと思ったら日本語版だったの!」
「あ、ジャケットが好みじゃなくて邦楽と洋楽で入れ換えたんだ」
「なんで両方買ったのよ…」
「聞いて驚け僕は英語が苦手なんだ」
カッコつけて言う台詞じゃないな。
「へー意外ねーいかにも西洋かぶれって雰囲気なのに」
そこにはあえて触れないでくれる。
「キミ、幼馴染みなのに知らなかったのかね?」
髭眼鏡をつけ嫌みたっぷりに幼馴染み(互いをよく知る存在)を強調する。
「だって五年も会ってないんだからわかるわけないじゃない」
僕は臣論翠利、素人探偵だ。
彼女は助手で幼馴染みの京斉叶杖
気は強いがラノベの暴力ヒロインのように僕を殴ったりはしない。
「ブラインド?カルロスってなに」
ハズノート(見られると恥ずかしくて持ち主が死ぬ)をめくりながら聞いてきた。
「やめろ!いますぐそれを閉じるんだ!!」
玩具の銃を構えながら海外映画のワンシーンを演じる。
「ブラインドにハマキじゃ探偵じゃなくて刑事よね」
なんだか違和感があると思っていたらそれか、たしかに葉巻やブラインドは刑事モノの定番だ。
なら探偵はどんなものを持つんだ?
「はい」
叶杖に虫眼鏡を手渡され、そうか虫眼鏡かと納得した。