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錬金術師の事件簿  作者: えみゅ
9/9

第八話「常識と例外」

「クルツ、オススメのメニューはなんだ?」

「私の、オススメはこちらです!」

と言いつつ、デザートに指を指す。

「甘いものには目がないな。クルツに聞くのが悪かったな。」

「まあ、スージ、クルツは効率の良いエネルギー摂取を進めただけだ。」

「ゲヴェーア、とにかく今は、会議までの時間を潰す事が優先だろ。」

「そうですよ!私はこの、《いちごマシュマロホイップ》がオススメです!」

「聞いてねぇよ!」

俺らは一体何しに此処に来たんだ?

唯一の男が焦ってどうする。

落ち着け俺。

「そうだ、スージ、ラーメンなんてどうだ。」

「ゲヴェーアさん!ナイスアイディア!」

「まあ、それなら腹にたまるしいいか。」

ここにいる三人、もちろん俺を含めて。

側から見たら、異常能力者とは思わない。

まあ、今日は会議以外は、仕事がないし、

そう思われてもいいかもしれない。

まあ、昼間っから、ラーメンなんて重いけどな。

とりあえず、頼んどくか。

「クルツ頼んどいてくれ。」

「もう頼みましたよ?」

「早くね!?」

「だって店の人、わかってたみたいなんだもん。」

「何がもんだ、28歳三十路手前のおばさんが。」

「スージ?言っていいことと悪いことは紙一重だよ?」

「スンマセン、クルツサマワタシガワルウゴザッタ。」

「次はないからねぇ?切り刻むからねぇ?」

「クルツそこまでだ、ラーメンが来たぞ。」

「あ!きたー!ゲヴェーアさん!スージ!

写真撮りましょー!」

と言って半強制に写真を撮られた。

そして、『らーめんうめぇ!』とクルツが

グループに送信した。

すると、ブリッツから、『蕎麦を食え』

ときた、あいつらも暇なんだな。

すると、すぐに、『やっぱりうどん食え』ときた。

訳わからん!あいつの頭は小麦粉で出来てんのか!

そう考えてると、ラーメンを食べ終わったクルツが。

「そういえば、エル・ドラードが、何やら動き始めてるらしいですよ?」

「クルツ、その話は歩きながらしよう、今の時間なら、ミッドポイントまで歩いてちょうどいい具合だ。」

「うん!」

そうやって、俺たちは、ミッドポイントに向けて歩き出した。

「で、さっきの続きね。

エル・ドラードの、幹部と下っ端が、地下道に入る姿をよく見かけるらしいですよ。しかも、第一荷物運搬通路あたりに。」

「なんだ、そんなことか。」

「《地下研究所》って都市伝説があるんです。」

「気になるなそれ───。」


その時、歩く三人のポッケから、バイブレーションの振動音。

「エル・ドラードの暴動。」

クルツがそう呟く。

「最近は大人しかったが、やけに急だな。」

エル・ドラードは、アートムケルン、

つまりこの国の最強のマフィアと言われてる。

実際は幹部と頭の戦闘能力がずば抜けてるからだ。

現状確認されている、幹部の人数は、8人。

その中で、異常能力者四人、錬金術師三人。


そして、異常能力錬金術師と言う、

最も危険な人物と呼ばれるのが一人。


名前が明らかになっているのは、

《lost alchemy─失われた錬金術─》

時の錬金術師 ツァイト・オディウム


絶対零度の錬金術師

フロイント・グラキエース


この二人だけだ。

二人とも、元々は軍の施設で育った錬金術師だ。

オディウムと、トイフェルは、同じクラスだったらしい。

そして私達は市民会館へと向かった。

その日の空は、なんとも言えない曇り空。

雲が青い空を隠そうと言わんばかりに、覆い尽くしてる。

もうすぐ夏だというのにこの天気。

そしてもうすぐ市民会館へとつく。

私は顔にある、三本の横筋の傷を撫でた。

そして、癖っ毛の目立つ髪の毛をワシャワシャと掻いた。

市民会館前には規制線が張られていた。

ある意味エル・ドラードの暴動とか、戦争みたいなものだしな。

「ゲヴェーアさん!お久しぶりです!」

と威勢の良い声が聞こえた。

「スズラン、久々だな。」

「はい!今現在の状況を説明します。

中にいるエル・ドラードのメンバーは、

幹部が二人。下っ端が、十数人。

幹部の一人は時の錬金術師

ツァイト・オディウムがいるとのことです。」

「おいおい、あのイレギュラーもいんのかよ。」

原理不明の時の錬金術。

わかっているのは、

『触れられたら死ぬ。』ってことだ。

「ゲヴェーアさん、中に急ぎましょう。」

「そうだな、何が目的かは定かではないが、とにかくあいつらを潰しに行こう。」

ゲヴェーアは、エル・ドラードのことになると、

言葉遣いが、荒くなる。

何か知っているのかもしれない。

まあ、今は味方を疑ってる暇はない。

行くか、戦場に。

ここから先は、常識は通用しない、

例外だらけの世界だ。

一つ言うとしたら、俺たちは、

例外的存在になる。

そう、異常能力とは、

世の中全体から見たら、凄いなどと尊敬され。

崇められたり、慕われたりするものだ。

ただ、個人的なものの嫉妬。

その能力との対価。

そして、一定のラインを超えると、化物と呼ばれる。

こんな理不尽は当たり前だ。

それでも、守りたいものは各自あるらしい。

だからこそ、国を護る為のこの部隊に入ったのだから。

俺にもある、守りたいもの。

だからここでは死なない。

「ここか。」

そうゲヴェーアが呟く。

気付いたら、もう着いてたらしい。

ここまで何もなかった。

「正面から入ります?」

「堂々と行こうぜ。」

「そうだな、裏とかには誰かがいるかもしれない。」

そして両開きの扉を俺は蹴り開けた。

「ちょ、スージ!いきなり!?」

「時間が惜しい、さっさと終わらせようぜ。」

そして開いた両扉。

その刹那、辛うじて目で追える速さのものが横切る。

「ゲヴェーア!」

俺は叫んだ。

「大丈夫、掠っただけだ。」

多少横に動いてたらしい、傷は浅いが血が出ている。


「流石だな!ゲヴェーア!」

そう高らかに言っている、一人の少女。

「それでこそ、グルナの敵討ちのしがいがある!」

「グルナ・・・、誰のことだ。」

そのゲヴェーアの言葉は裏表のない、

水面下の底まで透き通った言葉だった。

「忘れたのか・・・?

ふさげんじゃねえ!

てめえが、したことを忘れたのか!?」

怒りの感情、戸惑いの感情。

二つが混ざって作り誰されている、

その声は、憎しみに満ちていた。

「忘れたなら、思い出させてやるよ。

私の思い、私の憎しみ、私の辛さ。

所詮逃げただけのお前にわかるはずがない。

グルナはいった。

『世界を変えて。』と。

その言葉に嘘偽りのないように過ごす。

そう誓ったことも。思い出させてやる。」

周りにいる下っ端は、基本的に拳銃を持っている。

蜂の巣にされるのか。

そして、少女は右手を上げて。

その腕を俺たちの心臓狙うようにして、振り下ろした。

「二人とも私の後ろに隠れて!」

クルツがそういった。

その一寸、クルツは、腰の鞘に収まっていた、

相棒を取り出した。

そして、爆竹を爆発させた以上の音が響く。

その音一つ一つ、的確に俺たちを《殺す》という意思に包まれていた。

しかし、鉄を鉄で叩く音。

その速さは音、クルツは二つの《鬼神刀》を、

《防御の体勢》にして、玉を弾いた。


数秒たったか、打たれた弾は数百。

そして、カチカチとトリガーを弾く音が聞こえた。

「二人とも無事ですか?」

そう聞く、クルツ。

数発の擦り傷。そりゃそうだな。

これだけで済んだんだすごい。

「もちろんだ。」

そして、堂々とした姿でホール内に入った。

「スージ、ドア閉めてね。」

「はいはい。」

弾切れを起こした、下っ端共は、素手で俺たちに向かってきた。

中には刀やメリケンを持ってる奴もいた。

「トイフェルが来るのを考えたら、殺せないから、気絶の状態にしよう。」

「ですね。」

「そうするか。」

一人一人にその10倍以上の人が襲いにかかる。

しかし、俺は的確に急所を突き、

次々と気絶させる。

ゲヴェーアは、弾がもったいないと、

得意のナイフ術で一人一人を峰打ちで倒す。

クルツは先程の行為によって誰も寄せ付けなかった。

数分後にあらかたの下っ端は、片付けた。


そして沈黙に落ちていた、少女が口を開く。


「オディウム、私もそろそろ動いていい?」

「フロイント、私は見張りをしておく。

その間に片付けろ。」

「言われなくてもやってやる。」


そう、少女の名はフロイント・グラキエース。

絶対零度の錬金術師。


「さあ、誰でもかかっておいで。」


その笑顔は、一瞬でその場の空気を凍らせる。



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