第五話「暗殺者」
死ぬことに恐れはない
ただ死ぬものを見るのには恐れを抱く
・・・新人を自分の錬金術で殺したくはなかった
「アルタムさん、大丈夫ですか」
「ブリッツ、帰ろう」
「はい、後でミッドポイント警察本部に私が連絡を入れておきます」
去らば新人、来世はきっといい錬金術師になっていると信じる
「しかし、暗殺・・・か」
「ケルン隊が狙われているんですよね」
「そうみたいだ、トイフェルとケルンはうまく生き延びてくれていると思う」
「大丈夫です、あの人たちはそう簡単に殺されるような人ではありませんから」
「そうだな・・・そういえば」
「どうしました?」
「ケルン隊異常能力兵の三人も、狙われているのかな」
「わかりません、ですけど、銃剣格の最高能力とも言われているんですから、信じましょう」
「私は急いでミッドポイントに戻らなければ」
「そうです」
ミッドポイントならば・・・信頼できる奴がいる
ケルン、君は私達の隊長
そして、ケルンの話になる
「ケルン、おい、ケルン!」
うるさいな、誰だ僕の睡眠時間を邪魔するのは
「起きろってんだ!」
「はいはい、でここはどこ?君は誰」
「俺はフレント・リーべ、喫茶店だ」
「言うの逆じゃない?」
「細かいとこは気にしない」
「んでフレント、僕達は今、昼飯を食べているのだな」
「そうだ、ケルンはその中で寝ていた」
「まぁ、食べ終わったあとだし、いいじゃん」
「そうだな、会議まであと1時間だぞ」
「会議かぁ、めんどいなぁ」
「そういうことを言うな」
「はいはい」
僕の名前はケルン・グリュック
そしてさっきからうるさいのが僕の部下のフレント・リーべ
一応僕は錬金術師、フレンは、異常能力者だ
異常能力者ってちょっと言い方が気に入らない
まぁ、別にどうでもいいことだけど
僕は今ミッドポイントから1kmぐらい離れたとこにある
「喫茶店シックザール」というおきにいりのとこで飯を食べていた
だけど、昨日徹夜で仕事をしていたからすごく眠い
だから寝てしまったんだ
それにしても、今カウンターの席にいる成人前ぐらいの男
挙動不審だな
うまっ棒片手にキョロキョロしてる
それに右足の靴紐相当きつく縛ってあるな
まるで、走ったときに脱げないように
そう考えながら、冷めきったブラックに砂糖袋を10袋ぐらい入れたコーヒーを飲んでいた
すると、フレンが
「ケルン、今日の会議はいったい何についてなんだ?」
「んー、多分、錬金術師連続殺害事件についてかな」
「なるほど、しかしなぜケルン隊だけ召集を?」
「錬金術師だけならまだしも、異常能力者も参加するってとこに疑問を抱いてるのかな?」
「そういうことだ」
「それでは、ここで簡単な考察をひとつ」
「毎度毎度、よく考えますな」
と言ってシックザールのマスター
セルタニア・メルダミスさんが話しかけてきた
「マスター、ブラック砂糖ましましひとつ」「もうカフェモカとか飲めよ」
フレンが高速の突っ込みをした
「わかりました、お代はつけときます」
「そろそろ、つけを払わなければ」
「いいんだよフレン、まだもう少し出世したらで」
「さて、まず何でフレン隊というとこにスポットライトを当てよう」
「ふむ」
「僕、トイフェル、アルタムのランクを覚えているか?」
「ケルンがAA、トイフェルがA、アルタムがまだ決まってない」
「正解、アルタムだけ決まってない理由がわかるかい?」
「え、それは、アルタムはシュテルン族だからとか?」
「10%ぐらい当たってるけど、恐らく本当の理由は」
「理由は?」
「○○○・・・」
と僕がいいかけているときに事件は起きた
「食い逃げだ!捕まえてくれ~!」
やはりさっきの男、逃げたか
「フレン話はあとで」
「おう、ケルンあいつを追いかけるぞ」
そういって僕はマスターにアイコンタクトをとって
店の外に出た
男は店を出て歩道を右に走っていった
とりあえず追いかけるか
男は路地を曲がりに曲がって
地下通路の中に逃げた
「ここにいるのはわかってるぞーでてこーい」
僕がそうやって叫ぶと
反響する僕の声の他に
金属音が響いた
「まさかぁ」
「フレンそのまさかだ」
錬金術発動音
あの男が錬金術師?いや違う
もう一人誰かいる、とりあえず進むか
僕とフレンは地下通路を進んだ
恐らくここは荷物運搬用地下通路
人はあまり通らないとこだ
そして、一つだけ壊れていない蛍光灯の下
さっきの男が座っていた
気絶しているのか動かない
「フレン、とりあえずやつに手錠をかけてきてくれ」
「了解」
しかし、さっきの音
この場所で誰かが錬金術を使った?
使う必要のある場所なのか?
創作系の錬金術だった錬金術跡が残っているはず
だけど、暗いからよーくみえない
錬力反応もレベル1に満たないからまだ見ることもできない
これはお手上げか
まぁ、いいや、とっととこいつ警察につれてって会議にいこう
フレンにはあとでケーキでも買ってやるか
とそのときだった
「・・・ケルン、しくじった」
銃声と共にフレンは倒れた
右脇腹に一発だった
「う、うごくなよ?次はこいつの頭をぶち抜くからな?」
「あ?」
「動くなよ、こいつが死ぬことになるからな?」
「俺の部下に何鉛玉ぶちこんでんだ」
「お、お前らが悪いんだ」
「例えここから動かずとも貴様ごとき一瞬で灰にすることだってできるぞ」
「そ、そんなはったりつうじるか」
「ならば証明して見せよう」
「俺は、雷を操る」
右手を左手で擦った
「錬金術師だ」
そして手を合わせ
蛍光灯に向けて
「雷鳴の錬金術 -鳴鳥-」
一羽の雷鳥を放った
その早さは、光
男は気づかぬうちに倒れているだろう