第四話「古の力」
「誰だお前は」
私は仮面を被ってる奴に向かって言った
「さぁ、声で性別ぐらい判別できるだろ?」
このか細く少し高い声は女性だ、同姓でもこれだけ声帯に違いがあるのか
ちなみに声だけを聞くと私はおとこよりだ
「それで、何のようだ」
「そう、怖い顔をするなよ、ただ今日は話に来ただけさ」
「なんの話だ?」
「気になるでしょ?錬金術師連続殺害事件の情報」
錬金術師連続殺害事件は、私たち軍人でも、あまり内容を知らされていない
わかっているのは同一人物の犯行ということ
狙われているのは、格上の錬金術師
錬金術師にもランクがある
sss+(トリプルエスプラス)が最高ランク、s-(シングルエスマイナス)が最低ランクだ
今回の場合、殺された三人
道化の錬金術師 ss+(ダブルエスプラス)
豪腕の錬金術師 sss-(トリプルエスマイナス)
古の錬金術師 sss
と、高いランクの方々が狙われているわけだ
「確かに気になるが、その情報はもちろんただではないのだろう?」
「よくわかってるね、さすがは考古学者錬金術師、又の名を「虐殺の血を継承する者」だね」
「その呼び方はよせ、二度とするな」
「アルタムさん、時間が」
「そうだアルタトゥーム、君には時間がない」
「主に貴様のせいだがな」
「等価交換、私が知っている錬金術師連続殺害事件の情報と
あなたが知っている、「シュテルン族の最期」を」
「シュテルン族の最期だと?」
「アルタトゥーム・シュテルン・エアースト、シュテルン族最期の生き残り、
軍の錬龍統一部隊によって虐殺された、シュテルン・リヒト・ドゥンケル
伝説の三部族のすべての血を引くもの」
風が吹く
こいつは何者だ
私の情報をどこまで把握している
「それを知ってどうなる」
「それは、言えないな、ただ錬金術師連続殺害事件の情報と等価の価値はあると思うけど」
「とにかく、私は先を急いでいる」
「そうか、連れないね、君は自分の種族を殺した軍の犬になり下がったのかい」
「・・・違う、私は私のやるべきことがある」
「アルタムさん・・・」
「仕方ない、今回は諦めるよ」
「そうしてもらえるとありがたい」
案外話がわかる奴で助かった
しかし、疑問だ
先程の錬力反応・・・
錬金術師ならば、最低、陣を描くか、陣を埋め込んだ道具が必要だ
仮面の女は、道具すら持っていない、ましてや地面に陣を描いたあともない
ならば、誰の錬力反応なのだ
「そうだ、アルタトゥーム、ひとついっておこう」
「なんだ、手短に頼む」
「君が配属されている、ケルン隊、
トイフェル・アルタトゥーム・ケルン
この三人の命が今現在狙われている可能性がある」
・・・なんだと
しかし、いやまさか
「さっき錬力反応を見たんだろ?ブリッツ君の技によって」
「え、あ、はい、そうです」
ブリッツが驚いたように答える
「そのとき見えた錬力反応、レベルは何だった?」
「レベル1だ、真新しい反応だった」
「やっぱりね」
仮面の女はそう呟くと、袖縁にしまっていたと思われるナイフを取り出した
すると、そのナイフを私の髪を掠めるように後ろの草むらに向かって投げた
「そこにいるんだろう?」
仮面の女が誰かに問いかける
「は、はい」
・・・!?
嘘だろ?
「君は錬金術師だよね?」
「そ、そうです、新人ですが」
「いやひどいもんだ、新人に依頼をしたのか、そっちのオーナーは」
「おい、仮面、こいつは」
「アルタムさん、この人」
「そうだよ、アルタトゥーム、こいつは国直属の国家錬金術師、つまり君の仲間だ」
なるほど・・・暗殺か
「しかし気配すら殺せない、いきなり森の中に入るからどうすればいいかわからなくて
ついていった結果、道に迷って、あげくの果てに暗殺用の道具をおとして
錬金術で作り直したはいいが、アルタトゥーム達がこの場所に来たからこっそり隠れてたって
さっすが新人、判断力鈍いねぇ」
仮面の女に全部お見通しにされている新人は少し苛立ちを見せているようだ
「誰に依頼された?」
私は聞いた
「それは言えません」
やはりこうなる
「アルタムさん、残り20分です」
時間がない
「それじゃあ、私は失礼する」
「アルタトゥーム、こいつはどうするんだい」
「ほおっておけばいい」
「それじゃあ、アルタトゥーム私も失礼する
君たちの命は狙われている、以後気を付けるように」
そういうと仮面の女は姿を消した
「暗殺の異常能力者ですかね」
ブリッツが問いかけてくる
「さぁな」
「それにしてもアルタムさん、あの人大丈夫ですかね」
新人は膝から崩れ落ちて、その状態のまま動かない
「大丈夫だろう」
「だといいんですけど、何かを呟いてるみたいなんですよ」
たかにさっきから念仏のようにぶつぶつと聞こえる
「おい、新人、大丈夫か」
私は声をかけた
すると、そいつは矛をこちらに向けた
「あなたを殺サナいと、イケない」
理性がない
新人の錬金術師は別名「炎の錬金術師」
新人にありがちの、攻撃系錬金術
「うわああああああああああああ!!!」
新人は叫んだ、すべてにけりをつけるように
そして手にはめていたリングと手のひらの錬成陣を合わせた
「すべてを一瞬にして奪う炎「炎の錬金術」」
空気中の温度が一気に上昇する
熱いな
「ブリッツ下がっていろ」
「はい」
あまり戦闘はやりたくない
理由としては、私の存在がイレギュラーであるから
私を包み込むように炎柱が錬成された
「はぁ・・・ぐぁ・・・」
新人にしては中々いい錬金術だ
できれば、それは人に向ける矛ではなく
人を守る、盾として民を守ってほしかった
しかし、それは願わない
相手がこちらを殺すならば
私は手加減などしない
私は両手を合わせた、そして向かってくる炎柱に手を当てた
「古に伝わりし、原初の錬金術「古の錬金術<起>」」
すると炎柱は、形が消えた
その代わり、燃やしていたものの炭素の塊が新人に降り注ぐ
すべてを無にし、始まりを告げる原初の錬金術
それこそが私の錬金術
「古の力」