第一話「女神と暁」
この世界は錬金術によって守られた
この世界は錬金術によって壊された
この世界は錬金術によって創られた
この世界は誰が創ったのだろうか
そんなことを書いてある本を読みながら私は歩いていた
今私は、仕事の依頼でとある家に向かっている
依頼といっても内容は全く聞かされていないのだが
しかし医者である限り病人は放っておけない
だから基本私は、すべての依頼を受けることにしている
しかし私にも限界がある、体力ではなくこの力の限界が
そう私は錬金術師なのだ、医療系錬金術を使う錬金術師だ
自己紹介は後程しよう
何故なら、もう目的地が見えてきたからだ
すごく大きい門がある
和風の豪邸に住んでいるのが今回の患者らしい
玄関の表札には、モルゲンロートと書いてある
なにかを思い出しそうだったが、門が開く音で忘れてしまった
門が開くとそこには使用人らしき人物が現れた
「本日はお越しいただきありがとうございます、旦那様がなかで待っておりますのでご案内させていただきます」
と堅苦しい挨拶をしてきた
「ありがとうね、ずいぶん豪華な屋敷だけど旦那様って言う人は何をしてた人なの?」
私は小学生が思い付きそうな素朴な疑問をぶつけてみた
「旦那様はミッドポイントで高い地位を築き上げ、その時の給与で建てたそうです」
ミッドポイントについても後で説明をしよう
ここで簡単に説明してしまえば、この国の中心だ
ちなみに私もミッドポイントの医者である
それにしても、モルゲンロート・・・ミッドポイント・・・
なにか思い出せそうでなかなかでてこない、人間が一番イライラする時間だ
とりあえず本人にあってみればなにかわかるだろう
「それじゃあ、案内よろしくね・・・えっと何て呼べばいいかな?」
「私は、メーア・ヴィアベルといいます、以後お見知りおきを」
「そんじゃ、改めてメーアさん案内よろしくね」
「わかりました、こちらでございます」
堅苦しいのは苦手な私だが、何故かすんなり話せてしまった
メーアさんはそういう能力でも持っているのか
大きな門をくぐり玄関まで少し距離がある
その間には美しい和風の庭園が広がっていた
そんな和風の雰囲気を楽しんでいたが、もう玄関についたようだ
こんなときに私はトイレにいきたくなる
よくある、初めて入る他人の家は緊張してトイレにいきたくなる現象だ
「メーアさん、トイレってどこにあります?」
私は恥じらいなく言った
「玄関から右に行きますと途中で左に曲がるところがあります、そこの奥にトイレがあります」
「ありがとう~ちょっといってくるね」
「あ、ひとつだけいいですか?」
「ん?なに?」
「絶 対 に ト イ レ の 近 く に あ る 部 屋 に は 入 ら な い で く だ さ い」
寒気がした、怖いと言う感覚で
「わかったわ」
といって私はトイレに向かった
案外すんなりトイレを見つけることができた
しかし絶対に入らないでくださいって言われると気になる
少しぐらいなら大丈夫だろう
私はトイレを出ると目の前にある部屋に目を向けた
そこだけ異様な雰囲気を放っている
回りに誰もいないことを確認して襖に手を触れた
その瞬間
「テァ・・・ ツゥ・・・ ゲェ・・・ フェ・・・ オ・・・」
鳥肌がたった、この世のものではない声がした
そのとき、ふと我に帰った
冷や汗をかいていた
戻ろう、そう思った
「またせてごめんね~」
と何もなかったかのようにメーアに話しかけた
「・・・それでは、ご案内いたします」
なにかを考えていたのか、少し返事が遅れた
しかしあの部屋には、何があったのか
とても気になる、しかし私の中にある本音は
「もうあの場所にはあまりいきたくない」だ
まぁ、勝手に入っちゃいけない場所だ
いけないことをしようとした
「つきました」
メーアの声でやっとついたことに気がついた
最近物事を考えすぎている気がする
「この部屋に旦那様はいらっしゃいます」
「わかったわ、それであなたは同席するのかしら?」
「いえ、ここで待っております」
「そうなの」
「はい、ちなみにここは防音になっております」
「へぇ~そうなんだ、それじゃなかに入りますね」
「わかりました」
そういうとメーアは襖を2回ノックしてから少し開いてこう言った
「旦那様、女神の錬金術師様がいらっしゃいました」
メーアがそういって、私に目で
「お入りください」
と伝えてきた
それを合図に私は部屋の中に入った
メーアは私が入ったのを確認すると襖を閉めた
部屋の中には、布団があって
そこには横たわっている人がいた
「よくいらっしゃったね、疲れただろう?そこに座って座って」
そうやって私を布団の横に座らせた
私は、その人の顔を見た瞬間ひとつの悩みごとが消えた
モルゲンロート・・・ミッドポイント・・・
私はこの人を知っていた
それは当たり前のことだった
「やあ、久しぶりだね、今は女神の錬金術師って呼ばれてるらしいね」
この人は、リン・モルゲンロート
元国家錬金術師 二つ名は「暁の目」
大総統から直接命令が下り、その任務を完璧にこなす
「極秘部隊セクレート・カマーンダス」
軍人の中でもその実態をすべて把握してるのは二人しかいない
それは大総統とセクレートの隊長だけだ
なぜこんな説明をしているか
それは、
リン・モルゲンロートという人物は最年少で
セクレート・カマーンダスの隊長になった人物だからだ