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召使いの私  作者: 村上泉
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02

 その後、私は尚人くんの鞄を持ち、駅まで一緒に帰りました。

 一緒に帰ったというより、尚人くんを送ったという感じだ。




 それからことある事に、尚人くんは私の教室に来ては、宿題を手伝ってだの、髪をとかしてだの、と言ってくる。

 お昼ご飯も私と食べると言い出した。


 片割れの隼人くんの方も戸惑っているようだし、ファンクラブなんて大混乱だ。


 勿論友人にも問い詰められた。


「召使いになった」と報告すると、「うらやましい」と言われた。


 それは羨ましいのか?と曖昧に笑っておいた。

 しかし、ファンクラブの方のフォローをしておいてくれるらしいので、ラッキーということにしておく。


 一週間もしないうちに、尚人くんの召使いとして公認された。




 ある日の放課後、昇降口に向かう途中で、


「まーやちゃん」


 Yシャツのボタンを三つ目まで開き、でかいピアスをつけた先輩が私の名前を呼びながら近付いてきた。

 そして、当たり前のように腰に手を回した。


「祐先輩…」

「尚人の召使いになったんだって?」


 祐先輩こと、白石祐平先輩。

 三年生の先輩で、学級委員の仕事で文化祭での生徒会の受付などの仕事の担当だったのが祐先輩で、その時に知り合った。

 見た目に寄らず親切で、やはり優しかったので、次第に仲良くなった。

 私が学級委員で、祐先輩が生徒会の副会長さんだ。


 見た目では分からないものだ。

 ちなみに、尚人くんと隼人くんも生徒会役員で、隼人くんが書記で、尚人くんは会計だ。 


「ええ、成り行きでなりました」

「何それー。俺なら召使いじゃなくて、お姫様にしてあげるよ。ねっ?」


 麗しい顔を近づけながら祐先輩は言う。


「結構です。祐先輩のお姫様は他にもたくさんいるでしょ?」


 祐先輩にとって女の人を口説くのは息をすることと同じようなものなのだ、気にしていたら心臓がもたない。


 そう、祐先輩はモテる。

 外見は勿論だが、身のこなしもなんとなく優雅で、女性に対しても優しい。

 勿論、双子にファンクラブがあるのだから当たり前のように、この先輩のファンクラブもある。


「まーやちゃんは手厳しいなー。お姫様は君だけなのに」


 と信用ならない声。

 そんな祐先輩の声をスルーしていたら、雨音がしてきて、窓の外を見る。


 案の定、雨が降ってきていた。

 一緒に帰るために、昇降口で待ち合わせをしていた尚人くんの顔が頭に浮かび、


「すいません、教室に戻らないと。失礼します」


 と言って教室に向かって走り出した。


「あっ。うん、ばいばいー」


 と、祐先輩が軽く手を振って見送ってくれる。





「本当に君しか見てないのにな」


 その場に残された祐平の声は麻耶に聞こえることはなかった。

 

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