第4話 友情と裏切り
1993年 冬
彩子の同級生達はいよいよ来年の高校受験に備え、制服のスカートの丈を標準に戻しはじめたり、勉強に少しずつ力を入れ始める者がちらほら増えだした。
そんな中、彩子はますます見た目も派手になっていったが、学校の友達達とも今まで変わらずうまくいっていた。
日曜日に友達の葵と遊ぶ事になった。葵も日常のストレスからか彩子にパクリツアーに行きたいと告げた。彩子はあまり乗り気ではなかったが葵につきあった。
そして二人はある店へとパクリツアーに出掛けた。
いつもの大きな鞄を彩子は肩にかけ、店につくと葵がパクリをし彩子が持つ鞄の中にたくさんの下着や服を詰めた。
そして店を出ようとした時背後から彩子の腕を掴むある一人の女性が立っていた。
「わかっているでしょう」
と声をかけた。
彩子と葵は振り返ると、保安員の女性だった。
葵の顔を見ると半泣きになっていた。
「二人共つい来て下さい」
を保安員は事務的に話した。その時彩子は頭の中で、いろんな事を考えた。葵は高校受験前だ。今ここで捕まってしまうと内申にひびいてしまう。もちろん彩子も葵と同様受験前だが彩子は顔を引き攣らせ、びびっている葵を見て、ある一つの決心をした。
「この子関係ないんで…あたしだけ行きます」
彩子は葵を庇い一人で捕まる事にした。そして葵に
「大丈夫だから」
と言い、その場を後にした。
そして警察に連れて行かれ、2時間後、そこに葵の姿はなかった。
次の日、学校へ行くと学年中の人達、が彩子が万引きで捕まった事を知っていた。
葵に
「おはよう」
と、昨日何もなかったように声をかけると顔をそらし足早にかけていった。
彩子はまだ何も気付かなかった。2時間目が終わろうとする時、彩子は由利子から呼ばれた。
「彩子、最近何なの?葵に万引きとかさせてどういうつもり?」由利子はきつめに彩子に言った。続けて
「あんたがヤンキーなろうがどうでもいいけど周りを巻き込まないでくれる?葵、可哀相じゃん!」
っと言うと彩子は
「何で昨日事、由利子が知ってるの?」
と聞いた。
「あんた知らないの?学年中、噂だよ。葵が彩子と買い物に出掛けたら彩子が万引きして葵も道連れになりそうになったって葵があんたが捕まって怖くなって、町田に偶然会ったから話したんだよ。」
(町田とは学年一のお喋り魔だ。こいつに言うと学年いや学校中に知れ渡るくらいのお喋りだ。)
そこで彩子は葵に裏切られたと確信しショックを隠しながらこう言った。
「あっそう。それは迷惑かけたね。ごめん…。葵にも言っといて」
と彩子は由利子に本当の話しをしなかった。今、本当話しをしたとこでたぶん信じてもらえないだろうってわかっていたからだ。その日から由利子とも目を合わす事すらなくなった。
何とか中学二年は終わり、春を向かえ、三年になった。もう誰も彩子の側には近寄らなくなっていた。あの日から無視が始まり気が付くと彩子は一人になっていた。そして彩子は徐々に登校拒否をするようになっていた。