第二話 別れ道
1992年春
彩子は中学二年になりますます非行への道を進み始めていた。
そして梅雨になる頃、彩子はある一人の男に出会う。信吾だ。信吾は彩子より5才上の同じ中学の卒業生で年下の女の子の処女を奪う処女ハンター。
見た目は可愛らしい顔で背も低く小柄な男で、母性本能をくすぐるタイプだ。
彩子はが友達の家に向かう途中の公園でカンッと舌を鳴らす音がした。当時ヤンキーといえばこの音が聞こえれば振り向かないやつはいないといえるほど、ヤンキーにとっての特別な音だった。もちろん彩子は振り向いた。
そして信吾は彩子に問い掛けた。「この辺の子?」
彩子は信吾をじっとみながら
「うん…」
っと答えた。信吾は笑みを浮かべながら地元の話しやヤンキーグループ達の名前を次々に話しだした。
その中には彩子も知っている名前等があり、気がつくと信吾と彩子はさっきあったばかりとは思えないほど仲良くなっていた。そして信吾と数分間話しをし帰ろうとすると信吾は彩子に
「電話番号言うから覚えて〜」
っといい
「〇〇〇‐××××覚えたぁ?」
というと彩子は適当に返事をし去っていった。そしてまた友達の家に着き何事もなかったように振る舞い、少し早めに遊びを引きあげさっき信吾と出会った道に向かい歩いた。(なぜだろう?さっき初めて会ったばかりなのに、もう信吾と会いたくなってる)
彩子は自分自身の気持ちに不思議に思いながらも少し浮かれながら信吾を探した。だがもうそこに信吾は居なく彩子は公園の電話BOXから信吾に電話をした。
すごく積極的な行動に内心わけがわからずにいた。トゥルルルル〜トゥルルルル。コールが鳴るが信吾は電話にでなかった。彩子は電話を切り我にかえった。
それから数日が経ち信吾に会うことはなかった。
そしていつの間にか学校が終わると咲智と会い、他中のヤンキーグループ達と遊ぶ日が続いていた。
だが、彩子は咲智に対して日々不満が増していった。
「おはよう!」
咲智の声だ。また学校に行く途中で呼び止められた。
「おはよう。」
彩子は少しうかない声でいった。
「何だよ、その声後輩のくせに生意気なんだよ。今からこのままアワジにパクリツアーに行くからみんなの分もパクれよ」
咲智はやや強めに彩子に言った。
(アワジとはデパートでパクりツアーとは万引きにいくこと仲間内にしかわからない言葉だ)
「えっ、でも今日は学校にいくよ」
と彩子も強めに言い返すと咲智は強引に彩子の鞄を引っ張り学校とは反対の方向へ歩き出した。
彩子は最近、咲智の上から口調や本当はヘタレなのに強ぶる性格、一人じゃ何もできないところが嫌いになっていた。
そして渋々、彩子は咲智とアワジに向かった。
駅のトイレで二人は咲智が用意した私服に着替えはじめた。そして開店と同時に店に入り明らかに妖しい大きな鞄に刺繍入りのブランドのスエットやジーパン等を万引きしはじめた。
だけど万引きするのは彩子の役目で監視するのはいつも咲智 だった。
大きく膨らんだ鞄を持ち二人は他中のヤンキーグループのたまり場にもなっている浩二の家に行き、咲智は万引きした鞄の中身を出しいかにも自分が一人でやったかのようにまわりにいた数人の子達にあげていた。
正直、彩子は物で人を釣っている咲智に呆れていた。しかも後輩に押し付けいいとこどりをする咲智に対してコイツの後輩でいたくない。とこの頃から思いはじめていた。
もちろん周りのヤンキーグループも咲智のその性格に気付いていた。
だが金や物をくれるから、誰一人咲智をグループから追い出す事はしなかった。
そんな日々が続き、彩子は咲智から距離を置き、元の生活に戻りはじめた。
そしてまたあの公園を通ると「カンッ」
っと舌を鳴らす音が聞こえた。
振り返るとそこに信吾いた。