俺と『妹先生』 1
「・・・・・・謎の、システム。これは、後ほど説明」
朝。午前八時二十八分。
往生際の悪い眠気はいつものことだが、今日はさらに粘着質だ。睡魔なんぞにモテても仕方ないのだが。
欠伸と同時に教室のドアを開ける。
「お、アニキ来た」「おはよーアニキ」「アニキ遅刻寸前じゃん」
クラスの奴らが口々に挨拶してくる。正直気色悪い光景ではあるのだが、それ以前に俺は我慢ならないことがある。
「誰がアニキだ誰がっ!」
「アニキはアニキだろjk」「うんうん」
「俺にはちゃんと名前g」
「さっさと席に着けお兄ちゃん、チャイムは鳴ったぞ」
「誰がお兄ちゃんかっ!あ、いや、俺だった」
後ろにある入り口から声がし、俺は反射的にそいつに言い返す。
だが前言を撤回。こいつに限っては勝手が違う。
「ではホームルームを始める。委員長もといお兄ちゃん、号令を」
「起立、礼」
「「おはようございまーす」」
「うむ。悪くない挨拶だ。この間校長先生から、あなたのクラスはみんな挨拶ができるいい子達ですね、と褒められた。引き続きがんばるように」
「「はーい」」
「ではお兄ちゃん。昨日のクラス会議の報告を」
「修学旅行行き先の希望候補は出揃った。後は他のクラスと会議して生徒会に提出。そして俺の任期満了はいつだ」
「うむ。さすが私のお兄ちゃんである。仕事が早い。これからも励むように」
「ああ。で、俺の任期は?」
「では、これで朝のホームルームは終了する。お兄ちゃん、号令を」
「起立、礼」
「「ありがとうございましたー」」
「では、また授業で」
奴がすたすたと教室を出て行くのを見送り、クラスはまたざわつき、俺は机に突っ伏した。
「・・・・・・理不尽だ」
奴は通称妹先生。俺の義妹にして天才の16歳。留学から帰ってきてすぐ何故かこの学校の教師として俺の前に現れた。俺のことをお兄ちゃんと呼んでいることから妹先生、先生からお兄ちゃんと呼ばれているので本名をもじってアニキ、と呼ばれている。
奴は天才だけあって教師の業務も率なくこなしている。それはいい。だが俺は不満だ。
だが俺は不満だ。大事なことだから二度言った。
「・・・・・・残念、詳細は、次の次へ」