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氷剣のメンテナンス

「お家、出てきて〜」


 鞄の口を前方に向けた状態で、ブンブン上下に振る。

その刹那、鞄から小さめの一軒家が出てきてレクスのテントの横に並んだ。


「よし、設置完了」


『『『設置かんりょー』』』


 プリシラの言葉を繰り返して、精霊達は明るく笑った。

レクスも同様にニコニコしている。

『ウチの妹、相変わらずスゴ可愛い』と。

ただ、他の騎士達は唖然としていた。


「(はっ?はっ?はっ?建物、出てきたんだけど?)」


「(どういう性能しているんだ、あの鞄……)」


「(てか、普通建物を持ち歩くか?天才の発想って、エゲつないな……)」


「(団長の妹自慢……あれ、誇張でもなんでもなく事実だったんだな)」


 まじまじとプリシラのことを見つめ、他の騎士達は感心とも畏怖とも捉えられる感情を抱く。

が、レクスにギロリと睨まれ、慌ててそっぽを向いた。


「じゃあ、早速氷剣のメンテナンスするね」


 プリシラは鞄を装着し直し、家の扉に手を掛ける。


「何かあったら、呼んで。お兄様は家の中に入れるようになっているから」


 この家も例に漏れず魔道具の一種で、結界機能が付いている。

そのため、プリシラの許可した者しか入れない。

他にも色々と優れた機能を持っているが、この場では割愛する。


「ああ、プリシラの方こそ何かあれば呼んでくれ。俺は基本、さっきの大きなテントか隣のテントに居るから」


「うん」


 大きく頷いて、プリシラは扉を開けた。

その途端、天井の明かりがつく。

言うまでもなく、この魔道具()の機能の一つだ。


「さてと、鍛治部屋に直行だー!」


『『『ちょっこーだー!』』』


 拳を上げて意気込み、精霊達は鍛治部屋に行く。

プリシラは玄関の扉を閉めてから、そのあとに続いた。


『炉に火つけるー?』


 鍛治部屋に着くなり、精霊の一人がプリシラの方を振り返る。


「お願い出来る?」


『もっちろんだー!』


 プリシラに頼られて嬉しそうなその精霊は、炉に『ふぅー』と息を吹き込んだ。

その瞬間、フワッと火の粉が上がり、高温の炎と成る。


「うん、温度もバッチリ。ありがとう」


『これくらい、お安い御用さー!』


 エッヘン!と胸を逸らし、その精霊は得意げになった。

すると、他の精霊達が頬を膨らませる。


『ずるーい!僕も僕もー!』


『私も頼ってほしいー!』


『俺達だって、ちゃんと役に立つぞ!』


「ふふっ。それじゃあ、こっちを手伝ってもらえる?」


 張り合っている精霊達を微笑ましく思いつつ、プリシラは鞄から氷剣を取り出した。

ついでに、手袋とゴーグルも。

さすがに素手や裸眼で、鍛治仕事を行うのは危険なので。


「私が術式を一時的に停止したら、持ち手部分から剣身を引っこ抜いてほしいの」


『『『分かったー!』』』


「よろしくね」


 大きなテーブルの上に氷剣を置き、プリシラは剣身に指を滑らせる。

模様とも捉えられるような文字の羅列に、魔力────マナと呼ばれる自然エネルギーを体内に取り込み、窒素と掛け合わせたものを流した。


「ほい、っと」


 不意に空気中へ浮かび上がった文字を、プリシラは指先で操作する。

その途端、氷剣は生ぬるくなった。先程まで、氷のように冷たかったというのに。


『『『ほいさー!』』』


 術式の一時停止を確認し、精霊達は右から左へ薙ぎ払うような動作をした。

それに合わせて、剣身がスポンッと抜ける。


「ありがとう。じゃあ、次は剣身を炉に入れて温めてもらえる?」


『『『いいよー!』』』


 軽い調子で請け負い、精霊達は手のひらを天井に向けて持ち上げるような仕草をした。

と同時に、剣身が宙を舞う。

そして、精霊達の『あっちに行け!』みたいなアクションと共に炉の中へ。


「叩ける状態になったら、テーブルの上に出してね」


『『『はーい!』』』


 プリシラの鍛治仕事はもう何度も手伝っているため、精霊達は“炉から出すタイミング”というものを理解していた。

じっと剣身の様子を見守る彼らの前で、プリシラは先程出した手袋とゴーグルを装着する。


『『『どーぞー!』』』


 早くも“炉から出すタイミング”になったのか、精霊達は背負い投げのような動きをして剣身をテーブルの上に運んだ。

その途端、煙が上がったり火の粉が舞ったりするものの、テーブルは無傷。

なんせ、これはプリシラの特別製で強度をかなり上げている(魔道具では、ない)。


「ありがとう、精霊さん達」


 きちんと礼を言い、プリシラは僅かに身を乗り出す。

普通これだけ至近距離で炉から出したばかりのものを見れば色々支障を来すのだが、使用者の体温を一定に保つゴーグル(これは魔道具)をつけているため問題なし。


(さて、まずはここね)


 いつになく真剣な面持ちで、プリシラは剣身の表面を撫でた。

たったそれだけの接触で、僅かに形が変わる。

いくら柔らかく(熱して)しているとはいえ、これほどあっさり金属を加工するのは不可能。

────プリシラ特製の手袋が、なければ。


 実はこれも魔道具の一種で、耐熱と威力を強化してある。

そのため、プリシラのように非力な……非力な(?)少女でも、剣を打てるのだ。

ちなみに今回、大槌や小槌といった道具を使っていないのは細かい調整なら手作業の方が楽だからである。


「もう一度、炉に入れてくれる?」


『『『お任せあれー!』』』


 両手を上げて返事する精霊達。

その刹那、またもや剣身が浮いて炉の中へ。

────この熱して・叩いて(?)の作業を、プリシラ達は二週間ほど繰り返すのだが……長いので、省略。

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