青騎士団
「これ貸しますから、ちゃんと解体して持って帰りましょう!」
『なんなら、運搬も手伝いますし!』と言い、プリシラは地面の上にシートを広げた。
「ここに魔物を乗せてください!」
「えっ?あっ、はい(このシートは一体、何なんだ?)」
疑問に思いつつも、セドリックは他の騎士達と協力して狼の死骸を一つシートの上に乗せた。
と同時に、プリシラは少し屈んでシートへ触れる。
「じゃあ、少し離れてください!────
解体!」
その言葉を合図に、狼が光の粒子に包まれて毛皮・牙・肉になる。
その様子はダンジョンでのドロップと似ていた。
というか、それを参考にして作った解体用魔道具である。
(やっぱり、ダンジョン産の方が質は良さそう。でも、量はこっちの方が採れる)
ダンジョンでは、基本その魔物から採れる素材のうち一種類しかドロップされない。
今回で言うと、毛皮・牙・肉のいずれか一つ。
なので、場合によっては野生の魔物を倒した方がお得なこともある。
「この質なら、使い道は色々ありますね。さあ、この調子でどんどん解体してしまいましょう!」
「「「は、はい!」」」
プリシラの解体用魔道具に圧倒されていた騎士達は、どうにか動き出す。
シートの上に狼の死骸を乗せるという簡単な作業だから、大きなミスなく事は進むが……全員、口に出さないだけで混乱していた。
「(このシート、魔道具だったのか……!?こんなにペラペラなのに!?しかも、一瞬で解体が終わるなんて……夢のような魔道具じゃないか!)」
「(これさえあれば、魔物狩りの効率を上げられるし、無駄に血の匂いをさせて他の魔物を呼び寄せる心配もない……!欲しい!切実に欲しい!)」
「(プリシラ様の実力は聞き及んでいたが、予想以上だ!歴代最高峰と呼ばれているのも、納得!)」
チラチラとプリシラに視線を向けながら、騎士達はあっという間に解体作業を終える。
そして、山のように積み上がった狼の素材はプリシラの鞄に一旦収納された。
もちろん、解体用魔道具であるシートも。
「(おお!あれは確か、団長の言っていた鞄!ほぼ無限にものが入り、軽量化機能もついていると聞く!)」
「(間近で見ると、本当に不思議だな!何より、これほどの魔道具を気軽に使っているプリシラ様が凄い!)」
「(間違いなく、国宝級の魔道具だろうに……!プリシラ様は惜しみなく、使ってくれる……!きっと、狩った者の義務として命を粗末にしないよう気を使ったのだろう!)」
「(なんて、出来たお方だ!普通これだけの才能を持っていれば驕り高ぶり、他人の……ましてや、獣の命など眼中にないのに!プリシラ様は己の力に溺れることなく、高潔な精神を保っている!)」
プリシラの知らないところで、どんどん彼女の評価が上がっていく。
一種のハイ状態になっている騎士達を、止める者はどこにも居ない。
「プリシラ様、ご助力ありがとうございました!では、拠点に参りましょう!」
『しっかり、護衛いたします!』と意気込み、セドリックは先陣を切って歩き出した。
なので、プリシラは大人しくついていく。
すると、他の騎士達が彼女を中心にする形で隊列を整え、あとに続いた。
────その後、何度か魔物に遭遇したものの、特に問題なく魔の森を抜ける。
「こちらです、プリシラ様!」
セドリックはすぐそこにあるたくさんのテントや焚き火を手で示し、拠点に到着したことを告げた。
その瞬間、一際大きなテントから人が飛び出してくる。
それはもう弾丸のようなスピードで。
「プリシラ……!?」
困惑と歓喜の入り交じった声で名を呼び、その人物はセドリック達の方を見た。
かと思えば、これまた物凄い速さで迫ってくる。
「プリシラー!!!」
酷く弾んだ声でもう一度名を呼び、その人物はプリシラのことを抱き締めた。
いや、覆い被さると言った方が正確か。
プリシラとは、体格が違いすぎるため。
「お兄様、重い」
「おっと、悪い!」
プリシラに『お兄様』と呼ばれたその人物────レクス・ステルク・レーヴェン公爵令息、またの名を青騎士団団長 氷結の魔剣士は素早く身を起こす。
だが、背中や腰に回した手はそのままだ。
「それにしても、一体どうしたんだ?こんなところまで。また素材採取か?」
時折ここまで足を運んでいるのは知っているため、レクスは『母上に内緒でお出掛けか』と思案した。
その傍で、プリシラは手に持っていた手紙を差し出す。
「違うよ、今回はちょっと訳あり」
「ん?」
キョトンとしつつも手紙を受け取り、レクスは内容を確認した。
「……ほう?」
地を這うような低い声と凍えるような冷たいオーラを出し、レクスは金の瞳に確かな怒りを宿す。
その途端、セドリック達は竦み上がった。
「「「(お、恐ろしすぎる……!あの手紙に一体、何が書かれていたんだ……!?いや、知らない方が身のためか……!)」」」




