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バーラン王国の生き残る道

(一体、何がっ……!何が起きているんだ……!?)


 あまりにも異様な現象に、ヒュドールはただ目を白黒させることしか出来ない。

そんなとき────ノックもなしに、エンドレがやってくる。


「陛下!プリシラ嬢のところに裏の人間を送るとは、どういう了見ですか!?(最近、やけに静かだと思ったら……!限られた人数で、密かにことを進めていたとは!おかげで、気づくのが遅くなってしまった!)」


 言動の端々に焦りを滲ませ、エンドレはヒュドールに詰め寄った。

かと思えば、大きく瞳を揺らす。


「な、なんですか、これは……」


 とんでもない姿に成り果てたヒュドールを前に、エンドレは後ずさった。

すると、ヒュドールが縋るように手を伸ばしてくる。


「エン、ドレ……助け……」


「っ……」


 一種のホラーと言える光景に耐え切れなかったのか、エンドレはヒュドールの手を避けた。

が、踵を返すのは何とか思い止まる。


「陛下……念のためお聞きしますが、こうなった原因に心当たりは?」


 何か知っているのか問うエンドレに対し、ヒュドールは小さく首を横に振った。


「そうですか……(真っ先に考えられるのは魔法、病、毒あたりだが……さすがにこんな効果・症状は聞いたことが、ない。となると、残る可能性は────)」


 エンドレは難しい顔でヒュドールのことを見つめ、額に手を当てる。


「────プリシラ嬢からの報復、もしくは最終警告……」


「!」


 ピクッと僅かに反応を示すヒュドールに、エンドレは小さく息を吐く。


「恐らく、陛下の差し向けた者達が失敗したのでしょう。それで諸々露見し、あちらも行動を起こしたのだと思います。少々展開が早すぎる気もしますが、相手はかの有名な錬金術師……何が起きても、不思議じゃありません」


 メラハ王国の悪夢やらなんやら思い出し、エンドレは小さく(かぶり)を振った。


「最悪、このまま国が滅ぶかもしれない……だから────陛下のお命、頂戴します」


 ゆっくりと顔を上げ、エンドレはヒュドールのことを見据える。

もう後がないと分かっているので、意思は固く、覚悟は重かった。


「衛兵!」


 その言葉を合図に、扉は開き複数の人間が流れ込んでくる。

中には、なんとバーラン王国の大貴族や第一王子の姿もあった。

どうやら、エンドレは元々ヒュドールを片付ける気だったらしい。


「(本当は生前退位と幽閉程度で済ませるつもりだったが、状況が変わった。グレイテール帝国やプリシラ嬢の怒りを鎮めるには、陛下の首を差し出す他ない。生贄を捧げるようで忍びないが、これもバーラン王国を守るためだ)衛兵、首を刎ねなさい!」


「「「はっ」」」


 衛兵達は疑問を呈することも反抗することもなく、素直に従った。

恐らく、ヒュドールの姿を見てある程度事情を察したのだろう。

大貴族や第一王子も、エンドレのことを止めなかった。

ただ一人────


「ま、待て……!」


 ────ヒュドール本人を除いては。


(確かに余は下手を打ったかもしれん……!だが、いくらなんでもこれはおかしいだろう……!臣下であれば、王を生かすため尽力すべきだ……!)


 まだ自分の立場が、分かっていないヒュドール。

これまで何かやらかしても、国王の強権でどうにかなっていたため『今回だって、大丈夫』という驕りがあるらしい。


「かげ、むしゃ……を……立てる、なり……すれ、ば……!」


 自分で自分の責任を取ることも出来ない・考えられないヒュドールに、エンドレ達は何とも言えない表情を浮かべた。


「バレれば大問題ですし、相手に隠し通せるとは思えません(プリシラ嬢の腕前なら、個人を識別する魔道具くらい簡単に作ってしまいそうだし。危ない橋は渡りたくない)」


「いや、だが……!」


「とにかく、もう陛下の生き残る道はありません────続けてください」


 後半は衛兵に向けて、言うエンドレ。

すると、彼らは心得たように頷き、ヒュドールをしっかり取り押さえる。

その際、ヒュドールの体が少し崩れたり焼け爛れた皮膚がズレたりした。


「ぐっ……ぅ……!」


 苦悶の表情を浮かべ、ヒュドールは衛兵の一人が剣を振り上げるところを眺める。


(嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ!死にたくない!死なないために動いたのに、こんな結果になるなど聞いてない!一体、どうすれば良かったと言うのだ……!)


 焦りと不安、それから今までと比べ物にならないほどの死の恐怖。

自然と体が震えるヒュドールは、一筋の涙を流した。

その刹那────衛兵が、彼の首をたった一太刀で刎ねる。

鈍い音を立てて床に落ちるヒュドールの頭部を前に、エンドレ達は沈痛し────精霊達はキャハキャハと笑う。

どこまでも無邪気に、満足そうに。


『自分の手下に裏切られるなんて、人望なさすぎー!ウケるー!』


『こいつに相応しい末路だねー!僕達が直接手を下すより、味方に見限られる方がダメージ大きそうだしー!』


『ただ、眠りと悪夢(闇のやつ)発動しなかったのがちょっとざんねーん!』


『あっ、それなら発動条件をちょっと変えて走馬灯が悪夢になるようにしたよー!』


『『『ないすー!』』』


 パチパチと手を叩いて、精霊達は喜んだ。

かと思えば、


『じゃあ、次は共犯者達のお仕置きにゴー!』


『『『ゴー!』』』


 さっさとこの場を立ち去る。

そして、全ての共犯者に五感関係の罰を与え、精霊達は引き上げた。

────共犯者達がプリシラの報復だと悟って、怯えたのは言うまでもない。

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