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魔法の石  作者: 櫻木サヱ


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嵐の日の光

春が過ぎ、村は初夏の香りに包まれていました。森や草原は緑にあふれ、川の水は澄み渡っています。リリは毎日、魔法の石と一緒に森を歩き、村の人々や子どもたちの笑顔を見守っていました。


ところが、ある日、空に厚い雲が立ち込め、村に強い風が吹き始めました。木々はざわめき、川の水もいつもより激しく流れています。村の人々は不安そうに空を見上げ、子どもたちは家の中に隠れました。嵐が村に近づいているのです。


リリは胸を締めつけられる思いで、魔法の石を手に取りました。「どうしよう…石の力で何かできるのかな…?」

森の奥で石がかすかに光り、昨日学んだことを思い出させてくれます。「恐れず、心を澄ませて…」


リリは広場に向かい、村の人々に声をかけました。「みんな、落ち着いて!石の力で少しでも助けられるかもしれない!」

村人たちは半信半疑ながらも、リリの言葉に勇気をもらい、避難の準備を始めました。リリは石を握りしめ、嵐を少しでも和らげることを願いました。


石は淡い光を放ち、空に向かって小さな光の波を送りました。すると不思議なことに、風は少しやわらぎ、雨雲の一部が遠くに押し流されていきます。村人たちは驚きと安堵の声を上げました。リリは胸をなでおろし、さらに光を強めようとしましたが、石は微かに揺れ、光が不安定になります。


リリは思い出しました。石は強い力を持つが、使う者の心が揺れると力も不安定になる――。そこでリリは深呼吸をし、村の人々の顔、子どもたちの笑顔を思い浮かべました。「みんなを守りたい」その気持ちだけを心に抱き、石をそっと掲げました。


すると、光は静かに広がり、嵐の中に小さな静けさを作りました。木々は揺れながらも倒れず、川の水も少し穏やかになり、村の建物や人々は守られました。村人たちは石の光に感謝しながら、リリに笑いかけました。「リリ、あなたのおかげで助かったよ」


夜、嵐が去った後、リリは森の丘に座り、魔法の石を見つめました。石は穏やかな光を放ち、まるで「よくやったね」と語りかけているようでした。リリは心の中でそっと誓いました。「どんなに大きな困難が来ても、心を強くして石と一緒に乗り越えよう」


夢の中で、リリは光の川を駆け抜けました。嵐の中で震えていた森や村が、光によって守られ、再び笑顔に包まれていく光景が広がります。リリは魔法の石と共にいることで、ただの子どもではなく、村を守る小さな守り手になったことを感じました。


こうして、リリと魔法の石の絆はさらに深まり、力を使う責任と喜びを学ぶ冒険は、新たな段階へと進んでいくのでした。


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