表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

00-06 0753標準時

挿絵(By みてみん)


[こちら空中警戒管制機《AWACS》サンドストーム。第916航空遊撃隊の各機へ通達。今作戦では、当機が指揮・統制を行う]

〈ヴァルチ(禿鷹)ャー1、了解ウィルコ


 クランプ隊長に倣い、俺らも応答した。


 作戦空域到着の十分じっぷん前に管制機と合流するという事前確認ブリーフィング……より、三分遅れていた。


〈砂嵐にでも遭ってたのかねェ、ったく〉


 リックが無線を開いたまま愚痴を叩いた。


〈ヴァルチャー3、聞こえてんぞ。俺たちの無線は砂塵程度じゃ遅延しねぇからなぁ〉


 いさめるのかと思いきや、隊長も乗ってきた。危うくメットの内で噴き出しそうになる。


〈ちょっとクランプ隊長! 言って良い事と悪い事がありますよ!〉


 さすがはグレア、無自覚でトドメを刺してきた。堪え切れず、無線を切って存分に声を上げた。通信を聞いてるであろう管制官が無言を貫いてるのが、一層面白かった。


〈ヴァルチャー4、作戦中に本名を出すんじゃねぇ。呼ぶならせめてトゥーム(TOMB)にしろ〉

〈あッ! 隊長だけTACネーム(あだ名)使うなんて、ズリぃぞォ!〉

〈喚くなヒヨコ。この作戦が終わったら、テメェらも好きに名乗らせてやる〉


〈やりィ!〉とはしゃいだリックに[ヴァルチャー隊、私語を慎め]とAWACS(サンドストーム)がようやく突っ込みを入れてきた。ひとしきり笑い終えた所で、俺はスイッチをオンに切り替える。


 基地での訓練時と何も変わらない空気感に、少しホッとしていた。


 海上と比較すると、下が荒野な影響もあるのか、幸い雲量は少なく見晴らしが良い。風も穏やかで、爆撃日和と言っていいだろう。


[第916航空遊撃隊の任務は、事前確認ブリーフィング通りだ]

了解ウィルコ。ちゃんと記憶してっか、テメェら〉

「はい。地上軍の脅威になる無人兵器の優先排除、および航空優勢の確保」


 航行中、脳内で何度もスクロールしていた文面をそのまま読み上げた。


〈上出来だ、海坊主。ヒヨコと尻尾、分かったな〉

了解らじゃー〉〈了解コピー……〉


 尻尾というのは赤銅色のポニーテールを指しての事だろう。みんなクランプ編隊長から変な呼び名を付けられてるからこそ、早くTACネームを欲しがるわけだ。


〈……各機、傾聴〉


 不意の張り詰めた声に、背筋を正した。


〈俺たちは禿鷹ヴァルチャー——〝腐肉喰らい〞だ。まぁ生身の人間を相手にしてねぇんだから、当然だわな〉


 そもそも腐肉すら入ってない空っぽだけども……なんて思ったが、口をつぐんだ。


 演説の合間、進路下方に友軍の装甲車やタンク等が見えてきた。心拍数が上がるのを感じる。首筋を伝う汗がいつもより冷たい。一度深く呼吸する。


 変わらぬ口調で、隊長は続ける。


〈まぁ、なんだ。殺しの罪悪感なんて背負わなくて済む、楽な仕事だ。そういうわけで——〉


 一番機のコクピット内で、彼はサムズアップ——


[——0800標準時、作戦開始]


 反転し、親指を下へ(サムズダウン)


〈テメェら、喰い荒らして来い〉

了解ラジャ!」〈了解らじゃッ!〉〈了解コピー!〉


 返答し、散開する。俺は正面の地上敵に向けて、機体を加速させた。

 ★=——  ★=——  ★=——

【用語解説コーナー】

AWACS(エイワックス)

:早期警戒管制機、または空中警戒管制機。

 ジェット機の上部に大型レーダーを搭載し、

 遠距離・広域の敵機を探知する。

 情報の伝達、さらに指揮・統制を行う。

 最新鋭の電子機器を満載している為、

 一機当たりの価格は戦闘機の10倍以上。

 自衛用のチャフ・フレアを装備している。

 ——=☆  ——=☆  ——=☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ