春の味覚
毎年ゴールデンウィークになると、岐阜県は飛騨高山周辺の山菜をいただく。
居住地で入手できる時期よりも半月からひと月ほど遅いのだが、その辺りの気候的にはなにもおかしくなく。こういう機会でもなければなかなか口にすることもないので、とてもありがたいことである。
今年はタラの芽、コンテツ、こごみ、そして行者にんにくが入っていた。
年によってここにモミジガサがあったり、根曲がり竹(姫竹)の水煮があったり。
蕨や山蕗が来るときは、義母が既に下処理どころか調理をしてくれている。彼女が蕨や蕗好きさんだからなのか、わたしが蕗を苦手としているからか。彼女の作る山蕗の煮物は、蕗が苦手なのにおいしくいただける不思議。
大きな普通の(?)蕗は、義母の調理品であっても変わらず苦手なのだが。野生か栽培品かの違いではないのか。何が違うのか、未だによくわからないでいる。
コンテツは、本名(?)をモミジガサという。コンテツというのは、地域での呼び方のようだ。初めて見たときからコンテツと言われていたから、調べることもなくずっとコンテツだと思っていた。
こういう、地域特有の名前を持つご当地ものって、多いと思う。
いつも天ぷらにしていただいていたけれど、たまには違うものをと思ってどんな料理があるか調べていたら、混ぜご飯を見つけて興味を引かれたのだが、それをするにはコンテツの量が足りなかった。残念。いつかやってみたい。
ただ(夫が)受け取ってきただけで気づいていなかったが、こごみは茹でたものだった。それなら、これはこのままいただこう。全部天ぷらにするのもなんだし。
というわけで、タラの芽とコンテツを天ぷらにすることにした。
近所のスーパーの一軒が改装閉店するため売り尽くすために色々なものをセールで売っているのにのっかって、久しぶりに天ぷら粉を購入。
ここしばらくごはん作りをサボっていた(作っていないわけではない)せいで、天ぷらで力尽きる。
山菜の天ぷらと、茹でられた山菜。せめてと思ってごはんのお供を添えたのだが、これが大葉の醤油漬けだったせいで謎の食卓が出来上がった。
文句が出ない謎。
翌日、豚ひき肉を買いに出かけた。行者にんにくをいただくために。我が家では初めましての食材である。なんとなくわくわく。
行者にんにくも天ぷらにしてよかったのだけれど、以前庭に蔓延っていた(現在も大変なことになっている)ドクダミの葉を(義母の要望により)摘んで天ぷらにしたところ、もともと消化器の弱い夫が敗北していたのでなんとなく避けた。
餃子にしてみよう。レシピを見たことはなかったが、たまに行者にんにく入り餃子という単語は目にするし。
そう思ってレシピを探してみたところ。
「これ……、行者にんにく多くね?」
このまま突き進んだら、ドクダミの二の舞である。出張を控えているはずの夫に余計なダメージを与えてはいけない。
謎の使命感に燃えて、参照するのを諦める。
豚ひき肉に、キャベツ、玉ねぎ、だいぶ少な目の行者にんにく、下味調味料を混ぜる。少し迷った結果、生姜も省略することに。刻むのが面倒だったとは言わない。
行者にんにくを刻みながら思ったのは、香りがニラに似ているということ。
いつものように野菜を用意するとせっかくの行者にんにくがどこかへいってしまいそうだから、材料をかなりしぼってみた。普段の餃子よりも少なく、五〇個分を見込んで。
珍しく、具が余った。
いつもは肉の三倍量の野菜を入れるところに、今回は一.三倍ほど。だいぶ肉にくしくあるはずなのに、なんだかさっぱり系な気がする?
行者にんにくの風味なのか、玉ねぎなのか、ちょっとわからない。
夫へのダメージはなかったようで安心はしたが、行者にんにく本体はよくわからなかった。
わたしの手についたニオイがなかなか取れないこと以外は。
どれくらい入れたら適正量かは、わからないままである。
取り分けておいた残りの行者にんにくは、さっと茹でて醤油漬けに。ごはんのお供にもいいらしいし、冷奴に乗せてもおいしそうである。もう少し漬けておこうと思う。
余った餃子の具は、これまた残っていた豚キムチ(食べられるキムチを見つけて飛び付いた)と一緒に炒めて炒飯にした。これもなんだかあっさり系になった。
……こってりは求めていなかったけれど、行者にんにく効果なのだろうか。
文中に「ご飯」と「ごはん」が混在していますが、「ごはん」は「食事」の意で使用しているため誤字ではありません。