巫女舞
日曜日。恭一は、いつものように早起きである。今朝も6時に起き、境内の周りを箒で掃除した。休日は、時間があるので普段以上に掃除しよう心掛けている。こんな早朝でも、まれに参拝者がいる。今日も1人の女性が来ていた。
「おはようございます」
女性から挨拶をされ、恭一も挨拶を返した。
「あの、お守りとかは何時からですか?」
と聞かれた。恭一は、9時から社務所で購入できることを説明した。恭一は、何か特別にお願いしたいことがあるのだろうかと思いながら、女性が去って行く方を見送った。
境内から鳥居の方に向かって掃除していると、ビハクが足元に近づいてきた。
「早起きだな、ビハク。お腹がすいたのか?」
「ニャー」とビハクが恭一を見上げて鳴いた。恭一は、すっかり我が家の一員になったものだと改めて感した。
今日は、恭一の従妹である時田奈穂が境内で巫女舞を披露する。奈穂は5歳の頃からクラシックバレエを習っている。そのせいか、姿勢が良く指先まで抜け目がない美しい舞をする。恭一は、奈穂にお願いされバレエの発表会を何度か見に行ったが、バレエより巫女舞を踊っている時の奈穂の方が神聖で綺麗だなと感じている。もうすぐ、奈穂が両親と一緒に神社に来るだろう。恭一は、麻人と悠も今日の祭事に誘っている。
恭一は、自宅に戻り朝食をとっていると奈穂が顔を出した。
「恭くん。今日は私の巫女舞、ちゃんと見てね」
「あぁ。今日は麻人や悠も見学に来るはずだ。楽しみにしていたぞ」
奈穂は、最後の練習をしてくると言い部屋を出ていった。悠の名前を出したことで、機嫌を損ねてしまったかもなと恭一は思ったが、あまり気にしなかった。
麻人と悠が、恭一の自宅に手土産を持ってやってきた。
「恭一君。これは、うちのお母さんから」
とイチゴが入った箱を渡された。
「気を遣わせて悪いな」
「恭一君って、たまにオジサンみたいだね」
と麻人は笑っている。
「悠。今日はおとなしいな。どうした?」
恭一は気になり悠に尋ねると、奈穂に気兼ねしているようだった。女同士は色々と大変なのだなと思った。
そろそろ巫女舞が披露される時間なので、恭一と麻人と悠は拝殿に向かった。辺りは数十人の人達が集まっている。その中には、もちろん奈穂の両親もいる。
和楽器の演奏が始まり、いよいよ奈穂の巫女舞だ。巫女の衣装に千早と言われる絹の上着を羽織り、手に鈴を持った奈穂が静かに、そして優雅に舞っている。音楽に合わせ流れるように舞っている姿に参拝者達は惹きつけられている。巫女舞を踊っている時の奈穂は、いつもの可愛らしい感じと違い、とても大人っぽく見える。
『やはり、奈穂の舞は美しいな』と恭一は心の中で深く感じた。
「奈穂ちゃんの踊り、すごく綺麗だったね。もっと見たかったな」
麻人が感動を伝えてきた。
「そうだな。奈穂は練習をよくしているしな」
ふと、悠を見ると少し涙目だった。恭一と麻人はお互い微笑み、2人で悠の頭に軽く手を置いた。




